はじめに
ご無沙汰しております。中村研究室M2の中川です。
2024年5月13, 14日に沖縄産業支援センターで開催されたヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS5月研究会)にて発表してきましたので、その報告をさせていただきます。この研究はHCI201で発表した研究、HCS研究会で発表した研究、HCI204で発表した研究、HCI205で発表した研究の続きとなりますので、よろしければそちらもあわせてご覧ください。
研究概要
これまでの研究ではペンギンの個体への観察を促し、より深い観察を支援する手法として、ペンギンの腹部模様を描画し個体を検索するシステムを開発してきました。また、システム利用実験を通じて、描画データから高精度で個体の検索が可能であることや、システムを使用した観察がペンギンの記憶につながる可能性を示しました。
なお、検索精度については、実験室でペンギンの画像を見ながら描画した場合は前述した通り高い精度であったものの、水族館で動きまわるペンギンを見ながら描画した場合は検索精度が低下することが確認されました。そこで、今回の研究ではペンギンの腹部模様を人がどのように描くのかを分析し、その描画傾向を実験室と水族館とで描いた場合について比較しました。
分析の結果、実験室および水族館いずれにおいても、多くの実験参加者が上部から下部の順に斑点を描画する傾向があることがわかりました。一方で水族館での描画では、人によって同じ点であっても描画する位置が上下左右に大きくずれている例が複数見受けられました。このずれは、ペンギンの動きや観察する角度の影響によるものであり、描画位置が個人ごとにばらつきやすくなる原因と考えられます。この描画のばらつきが検索精度の低下に寄与していると考えられるため、今後は描画のばらつきを考慮した検索アルゴリズムの改善や、描画インターフェースの工夫を進める予定です。
さらに、今回の研究ではペンギンを展示している国内外の動物園・水族館17施設を訪問調査し、展示の工夫や提案システムの利用可能性を検討しました。調査の結果、17施設中10施設がペンギンの一覧表や相関図を作るなどして個体に着目させるような掲示の工夫をしていることがわかりました。ただし、こういった既存の掲示の中から目当てのペンギン情報を探し出すのは容易ではありません。模様を描画するとペンギンを検索できる本システムは、ユーザの識別負荷が少なく能動的な観察に有効であると考えています。また、既存の展示と組み合わせて使用することでより良い観察体験につながることを期待しています。
今後はシステムを改善するとともに、より詳細な実験を実施する予定です。
詳細については下のスライドや論文情報をご参照ください。
発表スライド
論文情報
おわりに
2024年度最初の発表は、HCS研究会でした。昨年も同じく沖縄で開催されたHCS研究会に参加しており、今回が2回目の研究会参加となりました。
今年は HCS, HIP, HI-SIG-COASTERの3つの研究会が合同開催ということで、さまざまな分野の研究発表を聞くことができ、いい刺激になりました。
沖縄は相変わらずいい気候で過ごしやすく、ごはんもおいしかったです。空き時間には、DMMかりゆし水族館に行ってペンギンを観察したり、アイスやパフェを食べたりと満喫できました!
最後になりますが、多くのサポートをしていただいた中村先生、研究室のみなさんに心から感謝いたします。ありがとうございました。