第200回HCI研究会で「Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査」というタイトルで発表してきました(髙野沙也香)

投稿者: | 2022年11月17日

はじめに

こんにちは,中村研究室B4の髙野沙也香です.

もう11月と言えど日中は比較的暖かく,冬服への移行を不完全にしたままの日々です.皆様いかがお過ごしでしょうか.

さて,2022年11月8日・9日に開催された,第200回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査」というタイトルで発表しましたので,そちらについて発表報告をさせて頂きます.

研究内容

化粧をされる皆さん,化粧をする時にやろうと思った工程をうっかり忘れてしまったり,化粧のバリエーションが増やせなくて困ったことはありませんか?

化粧は多くの女性にとって身だしなみの一環となっており,コロナ禍において外出頻度が減少した現在においても頻度高く行われています.近年はメンズメイクの需要も高まっており,皆さんがニュースで化粧に関する特集を目にする頻度も増えているのではないでしょうか?

そのように日常的に行われている化粧は,ひとえに化粧と言っても,多くの女性は生活場面に合わせて化粧をするため,その工程は様々であり複雑に分岐しています.そして化粧には,その工程の複雑さ故に,一部の工程を忘れて飛ばしてしまうといった問題や,化粧のバリエーションが増やせずに固定化してしまうといった問題が存在します.以降では,それぞれの問題の一体何がいけないのか?について説明していきます.

まず,一部の工程を忘れて飛ばしてしまう問題についてお話します.そもそも,化粧には一度飛ばすと戻ってやり直せない工程が存在します.例えば,ファンデーションなどのベースメイクは,顔全体に均一に塗り広げる必要がありますが,塗り忘れた状態で眉などのポイントメイクを行なってしまうと,その後ベースメイクをムラなく施すことは難しくなってしまいます.このような化粧の工程忘れは化粧崩れの原因となり,日中の化粧直しの手間の増加に繋がってしまいます.

次に,化粧のバリエーションが増やせずに固定化してしまう問題についてお話します.化粧は髪型や服と同様に,自身に似合うものの判別が難しくなっています.そのため,自身に似合う化粧や自身が満足する化粧が分かっていない時点での化粧の固定化は,その後自身の魅力を発揮できない化粧を施し続ける恐れがあることから望ましくありません.反対に,化粧のバリエーションは増加すればするほどその時に自身が望む姿に近づけることができたり日々の化粧を新鮮に楽しむことができたりすることから,化粧の種類の増加にはたくさんのメリットが存在します.

ここで,こうした化粧における問題の原因として,以下の3つが考えられます.

  1. 自身の化粧工程の把握および俯瞰が困難であること
  2. 化粧を教えてもらう機会が少なく,化粧を我流で行なっている人が多いこと
  3. 他者の化粧は完成系を見る機会が多く,その化粧方法を知るのが困難であること

そこで我々は化粧工程をフローチャート化すれば,これらの問題の原因を以下のようにカバーすることができ,問題の解決に繋がるのではないか?と考えました.

  1. 自身の化粧工程の把握および俯瞰が困難であること →把握および俯瞰可能
  2. 化粧を教えてもらう機会が少なく,化粧を我流で行なっている人が多いこと →共有可能になり,化粧方法の学習が可能
  3. 他者の化粧は完成系を見る機会が多く,その化粧方法を知るのが困難であること →共有可能になり,他者との共通点・相違点を計算可能

しかし,実際に化粧工程のフローチャート化を想定すると,以下のような化粧工程の特性と,初心者におけるフローチャート作成の難易度の高さから,既存のフローチャートの形式を用いて化粧工程のフローチャート(=化粧フローチャート)を作成することは現状困難であると考えられます.

  • 同じアイテムを使用していても,施す部位が異なれば別の工程となること 例:チークを頬と鼻に使う
  • 同じアイテムで形状の異なるものを重ねることがあること 例:アイブロウ(ペンシル・パウダー・マスカラ)
  • 工程の分岐条件が個人によって様々であること 例:夏・デート・遊園地

そこで本研究では,化粧フローチャート作成に特化したシステムMake-up FLOWを実装し,その利便性を検証することにしました.そのため,まずは化粧工程の特徴を把握するために化粧工程に関する基礎調査を行い,その結果を元にMake-up FLOWを実装,実装したシステムの利用実験を行いました.

基礎調査については下に記載された発表スライドや,論文を参照して頂けますと幸いです.結果についてざっくりとお話しますと,日によって1度の化粧における工程数が大きく変わる人が存在し,また忘れやすい化粧工程としてベースメイクや立体感を出す工程が多く挙げられていました.

以上のような基礎調査の結果や実験参加者の意見をもとに,Make-up FLOWを実装しました.実際のシステム画面は以下のようになっています.

複数ある機能のうち化粧工程の登録方法についてのみ説明しますと,左真ん中にある3つのセレクトボックスを用いて,登録したい化粧工程の施す部位・使用するアイテム・アイテムの形状を選択すると,その化粧工程を表す化粧ノードが左下の緑のエリアに作成され,そのノードを右側の白いフィールドにドラッグ&ドロップすることで簡単に追加できるようにしました.その他システムの詳細な機能については,論文を参照して頂けますと幸いです.

↓登録したい化粧工程の要素の選択     ↓作成された化粧ノードのフローチャート作成フィールドへの追加

 

 

 

 

 

 

 

以上のように実装したMake-up FLOWを用いて,システムの利便性を検証するための実験を行いました.その結果,システム操作の分かりやすさについて実験参加者全員が分かりやすかったと回答しました.しかし,システムを利用した化粧フローチャート作成の難易度については,過半数が簡単だったと回答した一方で,難しかったという回答も得られました.

また,システムを利用した化粧フローチャート作成のポジティブな感想として以下のようなものが得られ,化粧工程の構造化には自身の化粧の把握・俯瞰を可能とするだけでなく,自身の化粧工程の改善点や以前の化粧工程との変化の発見を促すような効果が見られました.

  • 前回作った時とは工程が変わっているのをこのシステムを使ったことによって気づいた」
  • 「フローチャートを作ることで自分の化粧方法はもっと良い方法があるのではないか?と思った」
  • 自分の化粧を見直すことができるいい機会だった」

一方で,システムで改善してほしいところとして「フローチャート作成の難易度低下」,「フローチャート作成時の操作の自由度向上」が挙げられていました.

そのため今後は,システムをユーザがより操作しやすいような方式に改善し,改善したシステムを用いて化粧フローチャートを収集することを考えています.

そして将来的には,収集したフローチャートを用いて化粧の工程忘れを支援するスマートフォンアプリケーションの開発,また収集したフローチャートを分析して,ユーザの望む化粧に最適な化粧工程を提案するシステムの開発などに応用したいと考えています.

発表スライド

Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査 by @nkmr-lab

論文情報

髙野 沙也香, 梶田 美帆, 濱野 花莉, 中村 聡史. Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-200, No.18, pp.1-8, 2022.

感想

初めての学会対面参加を果たすことができました.実際の会場に行ってみて,色んな大学の教授方を拝見して,これが学会か…!ととても緊張してしまいました.初の対面発表もそれはそれは緊張してしまい,練習の時のように聞いている方が聞きやすく,分かりやすくを意識して喋ることができなかったのがとても心残りです….

来年は院生にもなりますし,このようなことが無いようにもっともっと努力しないとなと思います!今回自身で満足はできませんでしたが,HCI200で発表できるまで支えてくださった,中村先生および中村研究室の皆様には大変感謝しております.本当にありがとうございました.

余談にはなりますが,去年の私は学会に対面参加できず,「美味しいもの食べに,見たことないもの見に行くぞー!」と言っていました.この場をお借りしてその返事をさせて頂きます.

今年は美味しいものもいっぱい食べれたし,見たこと無かったものもいっぱい見れました!個人的に,京都で茶葉を1万円分購入できたので大満足です!!(一保堂茶舗様,伊藤久右衛門様,三星園上林三入様,中村藤吉様,大変美味しいお茶をありがとうございます.)

第200回HCI研究会で「Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査」というタイトルで発表してきました(髙野沙也香)」への3件のフィードバック

  1. ピンバック: 2022年度 修了生: 梶田 美帆【修士(工学)】 #29 | 中村聡史研究室

  2. ピンバック: 2022年度 修了生:濱野 花莉 【修士(工学)】 #30 | 中村聡史研究室

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