第204回HCI研究会で「化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定」というタイトルで発表してきました(髙野沙也香)

      2024/02/02

はじめに

こんにちは,中村研究室M1の髙野沙也香です.

コロナ禍を経て4年ぶりに開催された地元のお祭りのかき氷が200円に値上がりしてて,時の流れを感じました.皆様いかがお過ごしでしょうか.

さて,2023年8月8日・9日に開催された,第204回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定」というタイトルで発表しましたので,そちらについて発表報告をさせて頂きます.

 

研究内容

化粧をされる皆様,InstagramやYouTubeなどのSNSで新しいコスメや化粧法について検索したことはありませんか?

近年,美容系Instagramer・YouTuberなどの人気を始めとして,SNSにおいて美容情報や化粧のチュートリアル動画の人気が上昇しています.そのため,美容情報について検索をすると膨大な数の情報が表示されます(実際にInstagramにおいて「#美容」と検索すると1,613万件の検索結果が表示されます).

ここで,SNS上の化粧情報を参考にして新しい化粧法を取り入れることを考えます.すると,化粧はほぼ毎朝行うルーティーンのようなものであることから,自身と似た化粧工程の人が示す化粧情報の方が取り入れやすいと考えられます(使用する化粧品や化粧品を塗布する順番が全く違う人より,ある程度似ている人の化粧工程の方が自分にも馴染みがありますよね.料理のレシピなども同じことが言えるかと思います).

ですが現状,他者間の化粧工程がどれくらい似ているか?を算出する基準は無く,SNS上の膨大な情報の中から自身と似た化粧工程をもつ人の示す情報を絞り込むことはできません.

そこで私は,化粧フローチャートを使って他者間の化粧工程の類似度を算出できないか?と考えました.

 

いや,化粧フローチャートって何ぞや?とお思いだと思いますので簡単にご説明させて頂きますと,ご自身の化粧工程を気合いや季節などの分岐条件を含んでフローチャート化したものになります.より詳細な説明は第200回HCI研究会における発表報告記事論文レポジトリに載っていますので,お手数おかけしますがご参照頂けますと幸いです.

下の図は,私が製作した化粧工程をフローチャート化するWebシステム,Make-up FLOWのシステム画面になります.このように1つの化粧工程を表す長方形の化粧ノードと,分岐条件を表す菱形の分岐ノードを組み合わせて化粧工程をフローチャートで表すことができます.

Make-up FLOWのシステム画面

 

私はこのシステムを使って同じ形式で色んな人の化粧工程をフローチャート化することができれば,他者間の化粧工程の類似度を算出可能になるのではないかと考え,今回34人の女子大学生・大学院生の化粧フローチャートを収集しました.

そして,データが集まったということで他者間の化粧工程の類似度分析を行うのですが…,今回私は化粧工程を文字列で表現し,文字列の類似度=化粧工程の類似度として扱うことにしました.

どういうこと?と自分でも研究をしながら思っていましたので説明をさせて頂きます.

化粧ノード例

私はMake-up FLOWにおいて,1つの化粧工程を表す化粧ノードに3つの情報(部位・アイテム・テクスチャ)を含ませていました.上の図で言うと,部位 = 目,アイテム = アイシャドウ,テクスチャ = パウダーになります.

そのため,この各情報を文字で表し,それを組み合わせた文字列で1つの化粧ノードを表し,その文字列を繋ぎ合わせれば1つの化粧工程の順番(ルート)を文字列で表すことができるはずです.

…文字だけでは意味分からないですよね?私も分からないですね??という訳で,下に図をご用意しました.
図のような感じで,各ノードを文字列で表して,それを繋ぎ合わせて1つの化粧ルートを文字列で表すことができます.

 

化粧ルートの文字列化

 

このようにして化粧工程を文字列で表すことができたので,いよいよ類似度の算出を行います.
今回は文字列の類似度を算出するため,文字列の類似度算出手法として有名なレーベンシュタイン距離と,N-gram頻度にもとづいたコサイン類似度を使用することにしました.

各手法についての説明を省きまして(説明力の限界を感じました),一気に飛んで結果を説明致します.
2つの手法のうち片方の手法の類似度の値が上位3位以内の化粧フローチャートのペアを分析した結果を下の表に示します.

片方の手法において類似度が高いペアの特徴分析

 

表より,レーベンシュタイン距離のみ類似度が高い化粧フローチャートのペアからは,過半数の化粧ノードが一致しており,部位の流れや各部位にかける工程の分量がおおむね一致していることが分かりました.
一方,N-gram頻度にもとづいたコサイン類似度のみが高い化粧フローチャートのペアからは,6工程連続で一致している箇所があることが分かりました.

そして,考察に飛びます.上記の結果をもとに,各手法において類似度が高いペアの化粧フローチャートから化粧法を参考にする状況を考えます.

すると,レーベンシュタイン距離において類似度が高い化粧フローチャートのペアからは,化粧時間をほぼ変えずに自身がすぐに取り入れられる化粧工程を学べる可能性が示唆されました.

実際に類似度が高い&アイメイクの工程数が同じペアA・Bでは,

  • Aさんはアイシャドウ・ビューラー・マスカラの3工程を行い,ビューラーとマスカラを使ってまつ毛をしっかりと上げて目の縦幅を拡張していた
  • Bさんはアイシャドウアイライナー・マスカラの3工程を行い,アイライナーを使って目の横幅を拡張し,マスカラでまつ毛を上げることで目の縦幅を拡張していた

ことが分かりました.このように同じ工程数でもその組み合わせ次第で,自身の顔に異なる演出を施せることを学べます.

一方,N-gram頻度にもとづいたコサイン類似度が高い化粧フローチャートのペアからは,より効果的・効率的な工程順の入れ替え方を学べる可能性が示唆されました.

実際に類似度が高い&立体感を出す工程を内容が一致しているペアC・Dでは,

  • Cさんは化粧の序盤に立体感を出す工程を行っていた(=自身の素顔を見ながら立体感を演出したい部分に化粧品を塗布していた)
  • Dさんは化粧の終盤に立体感を出す工程を行っていた(=ポイントメイクなどあらかたのメイクを終えてから,全体のバランスを見て立体感を演出したい部分に化粧品を塗布していた)

ことが分かりました.このように同じ工程を行っていても,それを行う順番によって化粧の施し方を変えられることを学べます.

今回,このように類似度の算出法によって似ている部分が異なる化粧フローチャートのペアを得られることが分かりました.

しかし,2手法共に全体的に類似度が低いという課題があり,この原因として今回用いた34名の化粧フローチャートデータセットでは化粧工程の多様性をカバーできていないことが考えられます.そのため,今後はより幅広い年齢層から多数の化粧フローチャートを収集,また近年人気である美容系YouTuberの方の動画から化粧フローチャートを書き出すことで,この課題を克服したいと考えています.

そして,将来的には類似度にもとづいて他者の化粧フローチャートを推薦・検索できるシステムを実装し,化粧のバリエーション増加を支援したいと考えています.

 

発表スライド

化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定 by @nkmr-lab

 

論文情報

髙野 沙也香, 中村 聡史. 化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2023-HCI-204, No.8, pp.1-8, 2023.

 

感想

いつも何を書いていただろうか…と毎度前回の記事を振り返りながら書くのが恒例になっています,髙野です.

今回の北海道旅は初日に小樽に行ったのですが,そこでお昼に北海道の海の幸がつまった海鮮丼を頂き,おやつにルタオ様の美味しいケーキを味わい,ガラス細工のお店で素敵なイヤリングと出会い,六花亭様で季節のお菓子を頂き,初日から身も心も大満足してしまいました.

 

ルタオ様の美味しいケーキ

 

そこからは北海道情報大学の皆さんと合同研究会,HCI学会への参加×2…とあっという間に日々が過ぎて行った気がします.
多様な研究テーマに触れる3日間はとても貴重な時間でした.研究の背景や手法についてお聞きしていると,そんな視点・方法があったのか…!と驚かされることが多かったです.
学会発表は…,今までで一番落ち着いて発表できたのではないかと思います.ですが,質疑はまだまだだなぁと他の登壇者の方々の発表をお聞きして強く思いましたので,これからも努力しないとなと思います.瞬発力を大事にしていきたいですね.

また,この5日間で海鮮・スープカレー・ジンギスカン・味噌ラーメンと北海道グルメの多くを堪能できたのが嬉しかったです!🎉🎉
美味しい思い出ばかり浮かんでくるので今回はグルメ旅だったのかもしれないなぁと思います.

最後に,HCI204で発表できるまで支えてくださった,中村先生および中村研究室の皆様本当にありがとうございました.

次回も美味しいが味わえる旅だといいなぁと思いながら,これからも日々研究に取り組んでいきます.

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