第198回HCI研究会で「見本のダンス動画に対する手の軌跡の付与が動きの習得に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました(中村瞭汰)

   

はじめに

こんにちは.中村研M1の中村瞭汰です.
6/16~6/17にオンラインにて開催されたHCI198で発表させていただきましたので,その報告をさせていただきます.

研究概要

動画共有サービスの普及により,アイドルや有名人などのダンス動画を目にする機会が増えました.それに伴い,動画の人のように自分も踊ってみたいと思う人,真似て踊った動画を投稿する人も増えています.しかし,ダンス初心者がダンス動画を真似した際に,真似した動きと見本の動きで違いが生じてしまうことが多いです.

その原因として,見本の動きを正しく理解できていないことが考えられます.下の図を見本と動きとすると,「手を体に沿って肩の位置まで上げて横に伸ばす」というのが正しい動きの理解となります.ですが,例えばこの動きを「手を肩の横に出す」と理解すると,手がどこを通るかの情報が欠如してしまいます.

この理解を元に動きを再現しようとすると,下の図のような間違った動きとなってしまうことがあります.

そこで,見本のダンス動画に対して手の軌跡を付与することによって腕の動きが見えやすくなり,動きの理解につながるのではないかと考えました.軌跡は動画から姿勢推定を行い,直前15フレーム分の手の座標を結ぶことによって作成しました.その軌跡を見本のダンス動画に重ねることで軌跡を付与した動画としました.

軌跡付与を行なった動画

この軌跡付与の効果があるのかを検証するために,実験協力者を軌跡を付与した動画を用いて練習したグループと,軌跡を付与していない動画を用いて練習したグループに分け,練習後の動画の撮影を行いました.その動画をダンス上級者に評価してもらいました.

実験の結果,腕の評価値について動画1,2では差が見られませんでしたが,動画3,4では軌跡提示ありグループの方が評価値が高くなりました.

客観評価アンケート(腕の動きが似ているか)

動画によって手法の効果に差があったのは,動画1,2は足の動きが印象的な振り付け,動画3,4は腕の動きが印象的な振り付けであったことが原因だと考えています.そのため,動画1,2では腕に軌跡提示を行なった場合でも足の動きに注目してしまったのではないかと思います.実験後の感想においても,動画1,2については手に対する軌跡提示が邪魔だったという意見もありました.

動画1,2のような足が印象的な振り付けにおいて,腕の動きが踊り全体の評価にどの程度影響しているのかが大事だと考えています.もし,あまり影響していないようなら軌跡提示は必要ないですが,逆に大きく影響している場合は軌跡提示の印象を強くして腕の動きに注目してもらう方が良いと考えています.これについては今後,より調査と提示方法の検討を行いたいと考えています.

詳しくは以下のスライドと原稿をご覧ください.

スライドと原稿

中村 瞭汰, 藤原 優花, 古市 冴佳, 中村 聡史. 見本のダンス動画に対する手の軌跡の付与が動きの習得に及ぼす影響の調査, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-198, No.11, pp.1-8, 2022.

感想

今回が2回目のオンライン発表なのと,授業などでオンラインで発表する機会も多かったことからスムーズに発表することができました.発表前に研究室のみんなに見守られていることを知って少し緊張していましたが,それはそれで楽しかったです.自分はオンラインでしか学会発表をしたことがないので,ぜひ今度は現地で発表してみたいと思っています!

今回の発表に至るにあたって,原稿のチェックや,発表練習を見てくださったゼミの仲間たちと先生,実験に協力してくださったサークルのメンバーに感謝いたします.

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