第115回GN研究会にて「能動性を引き出すことで推し語り効果を最大化する手法の再検証」という研究を発表してきました(船﨑友稀奈)

   

お久しぶりです,中村研究室M2の船﨑友稀奈です.GN研究会で発表した時はM1でしたが,現在はM2に進級しました.

かなり遅くなりましたが,2022年1月20~21日にオンラインで開催された第115回グループウェアとネットワークサービス研究発表会に参加して参りましたので,発表の報告を致します.
今回発表した内容は、DEIM2021で発表した研究の続きとなります。よろしければそちらもご覧ください。

 

研究内容

自身の熱中・没頭するものの中で情熱を捧げて応援する対象を「推し」と表現する文化が広がりつつあります.テレビ番組でもコーナータイトルに〇〇推し!などとついているものも多く見かけるようになりました.このような推しは自分のみで楽しむだけでなく,同じ気持ちを共有したい・良さを知って欲しいなどの理由から他者に自分の推し作品や人,ものなどを推薦する推し語りも増えています.テレビ番組のコーナーは芸能人の方のこれが好き!というのを発信しているものですから推し語りのひとつだなと個人的には感じています.
しかし,多くの人が自身の好きな推しを詳しく知らない他者に推薦しても,なかなか興味をもってもらえない問題があります.インフルエンサーなどの影響力の強い方ならファンがファンが興味をもってくれるのかも知れませんが,実際自分の友人や家族などにこれおすすめだから見てみてよ!などと推薦してもうまくいかないことが多いです.過去の研究でわたしと同じような経験をした人がどのくらいいるのかというアンケート調査を行ったところ,約800人のアンケート回答者のうち,80%近くの方が推し語りがうまくいかなかった経験があると回答しました.

このような問題を解決するために,我々はこれまでの研究で「推し語りの聞き手に検索クエリを考えさせる」ことで受け身になっている聞き手に興味を持たせる方法を提案してきました.過去の実験で提案手法の有用性を検証したところ,通常通り話を聞く群と比べ,検索クエリを考えながら聞く群は推薦コンテンツへの興味が増加した傾向がありました.しかし,以前の実験では実験人数が 12 名と少なく,提案手法が効果的であったとは言い切れませんでした.

そこで今回の研究では,過去の実験と同様の実験の人数を 4 倍以上に増やし,提案手法の有用性を再調査しました.さらに,再調査で得られた結果をもとに条件を変更して実験を行いました.今回はこの2つの実験についてお話しします.

過去の実験の再調査

過去の実験人数は12名と少なかったのですが,今回の研究では実験人数を4倍以上に増やした56名の実験協力者で実験を行いました.
実験の結果,

    • 動画視聴後の興味は上がっていたが,提案手法群・非提案手法群のどちらの条件においても興味増加の平均値は変わらなかった
    • 個別の回答を見てみたところ,推薦された題材のゲームにほとんど触れたことがなく興味が湧かなかったという実験協力者2名が片方の群に偏っており,比較した条件が平等でなかったことが明らかとなった

→ 推薦コンテンツへの馴染み度合いを平等にして調査を行う必要がある.

ことが明らかになりました.
この問題点を踏まえて実験設計を見直し,再度調査を行いました.

実験設計を見直して再実験

前回の実験で馴染みやすさが異なったこともあり,条件を統一するために「漫画」ジャンルを推薦コンテンツとしました.また,実験協力者には実験を行う前に「漫画にどのくらい親しみがあるか(よく読むか)」という質問を7段階のリッカーと尺度で回答してもらいました.
実験の結果,

  • 提案手法群の方が,推薦を受けた後のコンテンツへの興味増加値が高い傾向があった
  • 提案手法は推薦する題材に依存せず相手に興味を持たせるのに効果的な可能性が示唆された
  • 実験後に調べてみたいと感じた実験協力者の数は提案手法群の方が多かったが,1週間後に実際に調べた実験協力者は多くなかった

ことが明らかとなりました.

この結果を踏まえて,今後は推薦を受けて興味が増加した後もその興味が持続する方法を模索していきたいと考えています.また,実験では実験協力者に「検索クエリを考えながら推薦を聞いてください」と伝えていましたが,通常の推し語りの場面で相手にこのように伝えるのは自然ではありません.そのため,今後は自然に検索クエリを想起できるような方法についても考えていく予定です.

スライド・文献

こちらが本研究のスライドと論文の情報となります.

船﨑 友稀奈, 中村 聡史. 能動性を引き出すことで推し語り効果を最大化する手法の再検証, 情報処理学会 研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN), Vol.2022-GN-115, No.54, pp.1-8, 2022.

最後に

当初GN研究会は対面で実施するということで久々に淡路島に行けることを大変楽しみにしておりましたが,残念ながらオンラインでの開催となってしまいました.GN研究会ではコミュニケーションに関する研究も多くあり,オンラインならではの凝ったプレゼンや発表といった色もあり楽しく参加することができました.
M2こそは現地で国内発表ができたらいいなと思っています.

最後になりますが,新型コロナウイルスにより制限が多かった中,今回の研究活動・論文執筆・発表練習にお力添えいただきました中村先生や同期,中村研究室の皆さまに心より感謝申し上げます.
また,いつも元気の源になっている推し!ありがとう!!

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