はじめに
中村研究室B3の山﨑郁未です。2020年12月8〜9日に淡路夢舞台国際会議場、およびオンライン(ZOOM)にて開催された第190回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で発表してきましたので、報告させていただきます。
今回は「記憶対象の文字の太さの違いが記憶容易性に及ぼす影響」というタイトルで、現地で発表させていただきました。
研究内容
私たちはどのようなものに目を通して学習を開始するでしょうか?
配布された教科書やノート、大学などではPowerPointなどにより作成された資料を見て始めることが一般的だと思います。そのようなものでは、文章中で重要項目(記憶するべきもの)が太字表記になっているものが多くあります。この太字表記は記憶に良い影響を与えているのかどうかについて興味を持ち、研究を行いました。
というのも、我々が取り組んでいた過去の研究で、男性的な手書き文字、読みにくい文字が記憶に残りやすいということが明らかになりました。また、文字の太さの研究から、細字のフォントは読みにくいということがわかっています。これらのことから、記憶対象を読みにくい細字で表示した方が記憶に残りやすいという仮説を立て、これを我々の過去の研究で実施した特徴記憶実験で検証を行いました。
特徴記憶実験とは、3種類の架空の物事の特徴それぞれ7つを記憶してもらう実験です。本研究では架空の物事を宇宙人としました。2回実験を行いましたが、本報告では、2回目の実験について紹介させていただきます。実際に使用した文字の太さの条件は以下の図です。
どの太さの条件が覚えやすいでしょうか? 実際に実験で使用した記憶タスクは以下の図です。
宇宙人ごとに太さの条件が異なるタスクを用意し、実験協力者内比較を行いました。なお、比較として全ての宇宙人を記憶対象も文章も同じ太さ(細字)で記憶していただいた方もいました。
この実験をYahoo!クラウドソーシングで、大規模に実験を行いました。Yahoo!クラウドソーシングには、膨大なユーザが登録されており、簡単な作業を報酬を支払うことで依頼することが可能となっているサービスです。しかし、このようなサービスで集まったデータには信頼性が重要となるため、自動で次に行く、クロスワードを解いてもらう、トラップ質問を設けるなど、様々な工夫を行いました。
実験の結果、アンケートではほとんどの人が太字の方が記憶に残ると回答しているにも関わらず、正解率は下図のようにどの太さの条件でも記憶容易性に差はありませんでした。記憶しやすいと思っている太字条件でも、実際の記憶効果は変わらないという面白い結果になりました。
ここで記憶タスクは横並び表示でしたが、分析を進めた結果表示位置によって記憶容易性に差が見られました。特に面白かったのが性別と位置による関係で、女性は右側表示になるほど正解率が上がる傾向、一方男性はそのような傾向は見られませんでした。これは、男性と女性で視線の移動や見る位置が異なっていたのではないか、と本研究では考えています。
今後は、
- 他のフォント、手書き文字を用いて記憶対象の太さを変更した記憶タスクでの実験
- 人による得意不得意を見つけるために、クラウドソーシングでの追加実験
- 試験前に記憶容易性を高める、個人の得意不得意に合わせたノートの作成
などを行っていきたいと思っています。
参照
論文および発表スライドは以下から参照できますので、よろしければご覧ください。
山﨑 郁未, 伊藤 理紗, 濱野 花莉, 中村 聡史, 掛 晃幸, 石丸 築. 記憶対象の文字の太さの違いが記憶容易性に及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2020-HCI-190, No.22, pp.1-8, 2020.
感想
新型コロナウイルスの影響で懇親会等は開催されませんでしたが、一緒に淡路島へ行った植木さん、青木さんと部屋でたくさんお話をして仲を深めることができました!2人がいてくれたおかげで旅を楽しむことができ、助け合いながら発表も上手くできたと思います!2人には感謝しかないです!また、夜ご飯はとても美味しい海鮮料理をいただきました!下の写真はそのお料理の写真です!
学会発表は2回目で、また現地での発表は初めてであったため至らない点がまだまだたくさんありましたが、次回の発表で生かしていきたいと思っています。
最後になりましたが、ご指導いただいた伊藤先輩、濱野先輩をはじめとする先輩方、中村先生にこの場をお借りして感謝いたします。ありがとうございました!
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