HCS研究会で「選択肢の時間差表示が選択行動に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(木下裕一朗)

投稿者: | 2023年5月27日

はじめに

中村研究室B4の木下裕一朗です.

2023年5月15日~16日に沖縄産業支援センターで開催されたヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)にて研究発表を行いましたので,ご報告させていただきます.

今回は「選択肢の時間差表示が選択行動に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました.

研究概要

この研究は2022年11月にHCI200で発表した研究の続きとなりますので,よろしければそちらも併せてご覧ください.

近年,Webやアプリケーションにおいてダークパターンが多く見られます.ダークパターンとは,ユーザを騙して意図していない行動を実行させるUIデザインのことで,ショッピングサイトや予約サイトでよく見られます.このダークパターンについて,わかりやすいものは指摘が容易なのですが,わかりにくいものも沢山存在しているのではと我々は考えています.

そこで我々は,一見すると選択を誘導していないように見える選択インタフェースによって無意識に選択行動が誘導されてしまう場合があると考え,ダークパターンの一つである誘導型の視覚的干渉に着目しました.過去の研究では,Webにおいて画像が遅れて表示されることから着想を得て,複数選択肢のうち1つをわずかに遅らせて表示(遅延表示)したときの選択行動への影響を調査しました.実験の結果,遅れて表示されたものの選択率は期待値と同程度で,予想とは異なり誘導効果はないことがわかりました.逆に,1つの選択肢を他よりもわずかに早く表示(先行表示)したとき,早く表示した選択肢が選ばれやすくなるのではないかというコメントをHCI200でいただき,今回先行表示の誘導効果を検証するとともに,遅延表示の誘導効果も再検証しました.

実験は,選択誘導を検証する質問(好きな野菜,行ってみたい国など)15問と,不真面目な実験参加者の除去のためのダミー質問(現在の西暦を選ぶもの,世界で一番高い山を選ぶものなど)15問の計30問をシャッフルして提示し,それぞれ6つの選択肢から1つ回答を選んでもらいました.遅延表示を行った場合,6つの選択肢のうち5つが最初に同時に表示され,わずかに遅れて残り1つが表示されます.反対に先行表示を行った場合は,1つの選択肢が他よりもわずかに早く表示されます.時間差には0.1,0.2,0.3秒の3つを用意し,時間差の違いによる影響を分析しました.

実験はYahoo!クラウドソーシングを利用して行い,先行・遅延表示の実験ともに男女各1000名の回答を得ました.

実験の結果,先行表示したものは選ばれやすく,遅延表示したものは期待値程度の選択率であることがわかりました(6択のため,各選択肢が選ばれる期待値は16.67%).

また,平均選択時間について分析を行った結果,遅延表示ではどの条件においても選択時間に差はありませんでした.一方で,先行表示では,先行表示した対象が選ばれたときに他の条件よりも選択時間がやや短いことがわかりました.

過去の研究において,遅延させる位置や時間差によって選択率が変化することがわかりました.そのため本研究においても,各位置・各時間差での選択率について分析を行いました.各棒グラフの位置は実際の選択肢の表示位置に対応しており,点線は期待値を示しています.ここでは,各位置で時間差表示した全データを100としたときの百分率で示しています.

図の結果より,遅延表示では,0.1秒で左上,0.2秒で中央を遅延表示したときに選ばれやすいことがわかりました.一方で,0.1秒や0.2秒で右上,0.3秒で右下を遅延表示したときは選ばれづらいことがわかりました.

次に,先行表示の結果を示します.

図の結果より,先行表示では,0.2秒の間左や中央上,右下を先に表示したときや,0.3秒の間中央下や右下を先に表示したときに特に選ばれやすいことがわかりました.また,全体的に期待値を上回っていることがわかりました.

今後は,アイトラッカーを用いた対面実験を行うことで,時間差や位置によって選択率が変化する理由について明らかにする予定です.また,今回は時間差を0.1~0.3と設定しましたが,異なる時間差における誘導効果についても検証する予定です.

 

発表スライドと論文情報

発表スライド

論文情報

木下 裕一朗, 関口 祐豊, 植木 里帆, 横山 幸大, 中村 聡史. 選択肢の時間差表示が選択行動に及ぼす影響, 信学技報 ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS), 2023.

おわりに

HCS研究会では,自分と違う分野の発表も多く聞くことができてとても面白かったです.また研究会の懇親会では,他大学の学生や先生方,企業研究者の方と色々なお話をすることができ,とても楽しかったです.

自分にとっては初めての沖縄で,目に映るものすべてが新鮮でした.美ら海水族館や首里城に行ったり,現地の美味しい料理を食べたりと,充実した時間を過ごすことができました.

瀬長島ウミカジテラス

もずくの天ぷら

 

最後になりますが,ご指導いただいた中村先生,共著の先輩方,研究室のみなさんに感謝申し上げます.ありがとうございました.

HCS研究会で「選択肢の時間差表示が選択行動に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(木下裕一朗)」への3件のフィードバック

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  2. ピンバック: 2023年度 修了生:植木 里帆【修士(理学)】 #35 | 中村聡史研究室

  3. ピンバック: HCS研究会にて「画像選択肢の段階的表示速度の違いが選択に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(金谷一輝) – 中村聡史研究室

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