はじめに
こんにちは!中村研究室M2の山﨑郁未です。
2023年5月31日, 6月1日に東京大学山上会館にて開催された第203回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で発表してきましたので、報告させていただきます。
今回は、「Webアンケートにおける自由記述設問の順番が回答時間と離脱に及ぼす影響のスマートフォン・PC間比較」というタイトルで発表してきました。
研究内容
Webアンケートは手軽に多くの回答を集めることができるメリットがあり、研究の基礎データ収集や社会調査で利用されています。
ここで、Webアンケートにおける自由記述の設問においては、不真面目回答が見られるという問題があります。例えば、回答者全員が回答できる設問において「特になし」「わからない」と自分の意見を書かない回答者、「werqefaewr」のような適当な文字列を書く回答者もいます。私はこのような不真面目回答を削減することを目的として研究を行っています。
これまで、「Webアンケートにおける不真面目回答予防システム実現に向けた自由記述配置の基礎検討」というタイトルで、自由記述の位置による不真面目回答率や文字数、離脱率の調査を行いました。その結果、自由記述を最初に配置することで、不真面目回答率が低くなるものの、文字数が少なくなる傾向、また自由記述設問の段階で離脱する人が多いことを明らかにしました。
また、「Webアンケートにおける不真面目回答削減に向けた回答分類とその検証」では、自由記述設問の回答分類および回答者分類を行い、回答者分類の特徴について調査を行いました。結果として、4つの回答分類、5つの回答者分類となり、真面目回答者の自由記述設問での回答時間が最も長いことも明らかにしました。
ここで、WebアンケートはPCでもスマートフォンでも回答できますが、そのデバイスによって文字の入力のしやすさ、回答の気軽さなどは異なり、結果としてその回答傾向の違いも生じると考えられます。しかし、これまでの研究においては、デバイスごとの違いについて検証を行ってきませんでした。
また、「Webアンケートにおける不真面目回答予防システム実現に向けた自由記述配置の基礎検討」では、アンケートの前に説明ページが存在しており、その説明ページではチェックボックスに全てチェックを入れないとアンケートが開始できないものでありました。そのため、アンケートをその段階で離脱している人がいた恐れがあります。
これらを踏まえ本研究では、デバイスによる離脱率や回答特徴の調査、および自由記述が最初にあることによる離脱率の正確な調査を目的に研究を行いました。
実験は、「漫画好きな人向けアンケート」とし、Yahoo!クラウドソーシングで依頼をしました。実験は、自由記述を最初に回答してもらう最初群、自由記述を最後に回答してもらう最後群で行い、これらはランダムに分けられました。
結果ですが、まず不真面目回答率については、最初群が全ての設問で低くなるということがわかりました。
次に、離脱率についてですが、以下のグラフのような結果になりました。
衝撃だったのですが、このグラフから、アンケートにアクセスするものの、1問目にすら回答しない人が25~30%存在することが明らかになりました。このことから、通常のアンケートでも、約4分の1がアンケートに回答しないことが考えられます。
また、最初群は最後群と比較して、5%ほど1問目での離脱率が高いことがわかりました。これは、自由記述設問が最初にあることによる影響が考えられます。
次にデバイスごとの比較について、本研究ではスマートフォンとPCで比較を行いました。
まず、不真面目回答率について、最初群、最後群に関わらずPCの方が不真面目回答率が低くなることがわかりました。これは、PCの回答者は、アンケートのみに集中できる環境であったこと、一方でスマートフォンでの回答者は、気軽にアンケートに参加した可能性が考えられます。
デバイスごとの離脱率は以下のグラフの通りです。上が最初群、下が最後群です。なお、ディスプレイサイズの取得を1問目にアクセスするだけでは取れていなかったため、離脱率は2問目からの結果になります。
どちらの群でも、スマートフォンの方が離脱率が高いことがわかります。これはスマートフォンでの回答者が気軽にアンケートに参加し、すぐにやめてしまった可能性が考えられます。
今回の結果を整理すると下記のようになります。
今後は
- 1問目でデバイスサイズを取得し、離脱率の再調査
- 不真面目回答者をリアルタイムで判定し、分岐するシステムの実装
を行いたいと考えております。
発表スライド
論文情報
感想
初めて淡路島以外の会場に行って発表をしました。中村研からは私しか発表をしていないので、会場でどのような感じで発表したのかを写真で収めてはいませんが、東大ということもあり、広い会場で座り心地の良い椅子で発表を聞くことができ、とても貴重な経験となりました。
7月には初めての海外発表も控えているので、ここから英語の練習も頑張りたいと思います…!
最後になりますが、この発表まで丁寧にご指導いただいた中村先生、同期、先輩、後輩の皆さん、ありがとうございます。また、会場運営、研究会にご尽力いただいた運営委員の方々に感謝申し上げます。
ピンバック: 中村研究室 2023年度の成果 | 中村聡史研究室