KES2024にて「A Study on Anxiety Reduction of Reader-dependent “Jirai” Expressions in Comics」というタイトルで発表してきました(中川由貴)

投稿者: | 2025年12月22日

はじめに

こんにちは。中村研究室D1の中川です。

少し?前ですが、2024年9月11日〜13日にスペインのセビリアで開催されたKES2024にて発表してきましたので、その報告をさせていただきます。

今回発表した内容は、第5回第6回コミック工学研究会、HCI199第9回コミック工学研究会にて発表した内容を再整理し、新たな分析を加えて英語化したものになります。よろしければそちらもあわせてご覧ください。

研究概要

みなさんはコミックを読んでいる際に、苦手な描写に遭遇して辛い思いをしたことはあるでしょうか?

虫やグロテスクな描写や、動物が傷つけられる描写など、読み進めるのに抵抗がある苦手な描写(地雷表現)がある人も多いかと思います。

本研究では、こうした「読者の苦手意識が原因で不快感を覚え、読書を中断してしまう描写」を読者依存性の高い地雷と定義しています。読者依存性の高い地雷は、個人の嗜好や苦手意識によるものであり、作者の意図や表現自体を変更するような手法は適切ではありません。また、全読者に一律の対応をするのではなく、苦手意識を持つ読者のみに支援を行うことが重要だと考えられます。

そこで、コミックを読みながら地雷箇所にフラグを付与し、その情報を集約することで、読者に事前に地雷の存在を知らせる手法を提案しました。実験の結果、地雷フラグには個人差があること、また地雷の事前予告によって次ページ閲覧時の不安が軽減される可能性が示されました。

さらに、Web上でコミックを閲覧しながら地雷フラグの登録と予告表示が可能なGoogle Chromeの拡張機能を実装し、15名を対象とした長期利用実験を行いました。その結果、予告が一定数表示され、「驚かずにページを開けた」「心の準備をして読むことができた」といった肯定的な意見が得られました。一方で、予告回数の多さや画面デザインの違いにより集中力が削がれるという指摘もありました。

また本研究では、人手による地雷フラグでは限界があることから、chatGPTを用いた自動フラグ付与の可能性についても検討しました。虫の地雷表現に限定し、Vision APIを用いて正しくフラグ付与できるかを調査したところ、70%以上の精度で地雷を検出できることがわかりました。今後AIの精度がより上がることで、人間による地雷フラグ付与の代わりとなるかもしれません。

詳細については下のスライドや論文情報をご参照ください。

発表スライド

論文情報

Yuki Nakagawa, Risa Ito, Satoshi Nakamura. A Study on Anxiety Reduction of Reader-dependent “Jirai” Expressions in Comics, 28th International Conference on Knowledge-Based and Intelligent Information & Engineering Systems (KES2024), Vol.246, pp.3918-3927, 2024.

おわりに

今回は、KES2024での発表でしたが同時期に開催されたCollabTech2024にも参加させていただきました。ずっと行きたかった念願のスペインに学会で訪れることができて、本当に嬉しかったです。どちらも初めて参加する学会で、さまざまな研究発表を聴講したり、研究者の方々と交流・議論したりするなどとても貴重な経験でした。

KES2024はセビリア、CollabTech2024はバルセロナでの開催でしたが、スペインはどこもご飯が美味しくて最高でした。街並みや建造物も美しく印象的で、また必ず訪れたいと思います。

 

セビリア大聖堂

 

牛肉のアヒージョ

 

タコのガリシア風

 

グエル公園

 

タパス

 

サグラダファミリア

 

最後になりますが、お忙しい中たくさんのサポートをしていただいた中村先生、研究室のみなさん、そして卒業生の伊藤さんに心から感謝いたします。ありがとうございました。

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