はじめに
中村聡史研究室B4の能宗巧です.1月14, 15日に宮古島で行われた第216回HCI研究会にて,「平均化手法を用いた非利き手筆記練習手法の提案」を発表しましたので,その報告をさせていただきます.
研究概要
背景
みなさんは「両手で同時に文字を書いてみたい」と思ったことはありませんか?私はあります!
もし両手で同時に筆記(以降,両手同時筆記と呼称)ができるようになれば,単純にノートを取るスピードが倍になるかもしれませんし,文字を使ったパフォーマンスとして新しい表現が生まれるかもしれません.夢が広がりますね.
しかし,いざ両手で書こうと思っても,現状では練習手法が定まっていません.そこで私たちは,最終的に両手同時筆記を習得することを目標に掲げ,まずはその第一歩として「そもそも思うように動かせない非利き手で,上手に文字を書けるようにする」という課題に挑みました.
これまでにも非利き手で筆記練習を行う研究は存在しており,手本をなぞる練習が有効であることが明らかになっていました[1].しかし,従来の手本(既成のフォントや,利き手で一度書いただけの文字)は,必ずしも個人に合った理想的な手本とは言えないという問題を抱えていました[1, 2].
提案手法
そこで本研究では,より効果的な新しい練習システムを開発しました.ポイントは以下の3つです.
- 利き手の平均文字を用いたなぞり練習: 利き手で複数回書いた文字を平均化したものを手本に用います.平均文字はユーザが筆記したい理想の文字に近いことが示唆されている[3]ため,効率的に学習できると考えました.
- 利き手・非利き手の交互筆記: 利き手で書いてから非利き手で練習することで,利き手の上手に書く感覚を非利き手に伝えやすくできると考えました.
- アニメーションフィードバック: ペンを離した直後に,書いた線が手本に近づくアニメーションを表示します.ユーザに対して,どの程度手本から離れていたのか,どの方向に直すべきなのかを視覚的にわかりやすく伝えることができると考えました.
実験と結果
以上の提案手法の効果を確かめるため,従来の手法(利き手で一度書いた文字をなぞる方法)と比較する実験を行いました.実験では,6日間の練習の中で文字のブレがどの程度減少したかを示す「改善率」を定義したうえで,これを評価に用いました.
その結果,どちらの手法でも練習を行うことで文字のブレが改善され,全体の改善率においては手法による大きな差は見られませんでした.
しかし,練習の有無について分析をすると違いが見えてきました.従来の手法では,その日に練習した文字は上手くなりましたが,練習していない文字はあまり改善が見られませんでした.一方で提案手法では,その日に練習した文字と同じくらい,練習していない文字も上手くなっていました.つまり,提案手法による練習は特定の文字だけに適応されるのではなく,非利き手で文字を書く能力そのものを向上させることができる可能性が示唆されました.
今後は,提案手法のどの要素が特に効果的だったのかを詳しく調べたり,長期間の練習によって結果がどう変わるのかを検証したりすることで,両手同時筆記の基盤を構築していきたいと考えています.
参考文献
[1]明崎禎輝,川上佳久,平賀康嗣,野村卓生,佐藤厚: 非利き手の書字正確性を向上させる練習方法,理学療法科学,Vol. 24, No. 5, pp. 689–692 (2009).
[2]大保景子,大西祐哉,大矢哲也,川澄正史,小山裕徳: 非利き手のための書字訓練法の検討,情報技術フォーラム講演論文集,pp. 677–678 (2013).
[3]中村聡史,鈴木正明,小松孝徳: ひらがなの平均手書き文字は綺麗,情報処理学会論文誌, Vol. 57, No. 12, pp.2599–2609 (2016).
発表スライドと書誌情報
おわりに
今回で2度目の学会発表でしたが,全体を通して非常に楽しめました.
宮古島には初めて訪れましたが,天気にも恵まれ,昼は青い海と白い砂浜,夜は輝く星空を堪能できました.景色だけでなくご飯も素晴らしいものばかりで,宮古牛を使ったハンバーガーやソーキそばは再訪を決める味でした.
最後になりましたが,原稿執筆や発表練習に多くのご指導を賜りました中村聡史先生と先輩方に深く感謝申し上げます.

