第9回コミック工学研究会にて「コミックにおける読者依存性の高い地雷表現共有システムの長期利用による実用性の検証」というタイトルで発表してきました(伊藤理紗)

   

こんにちは。中村研究室M2の伊藤理紗です。

花粉症の方には厳しい季節になってまいりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。私は絶賛目のかゆみと戦っています。

さて、2023年3月12日、13日に大阪にて開催された第9回コミック工学研究会にて発表を行いましたので、ご報告させていただきます。

研究内容

みなさんは、苦手なものはありますか?私は蜘蛛と集合体が苦手です。

このような苦手意識は現実の世界だけでなくコミックにおいても存在すると考え、コミックの個人的に苦手な描写に着目してきました。
本研究では「読者の苦手意識が原因となり不快に感じてしまい読むのをやめてしまう描写」を読者依存性の高い地雷と定義しています。

読者依存性の高い地雷は読者の個人的な苦手意識が原因となっているものであり、作者が意図して描いていることやそのような表現を望んでいる読者が多いことなどからモザイクなどの直接表現を変える手法は適していないと考えています。また、読者全員に何らかのアプローチを行うのではなく苦手に感じている読者のみにアプローチすることが重要だと考えています。

私はこれまでの研究で、読者依存性の高い地雷の存在を気にすることなくコミックを読めるようにすることを目指し、コミックを読みながら地雷にフラグを付与してもらい、その情報を集約して地雷の存在を事前に教えるという手法を提案してきました。

Gyazo

提案手法のイメージ図です

 

提案手法を実現するために、第5回コミック工学研究会第6回コミック工学研究会でお話した研究では以下のことを明らかにしました。

  • 地雷フラグは判断基準が異なるため個人差がある
  • 任意の地雷フラグを登録してもらった場合、ある程度フラグは重複するが表記ゆれが生じる
  • 地雷箇所の予告によって次のページに進む際の不安度合が減少する可能性がある

しかし、これまでの研究ではフラグ付与機能と予告機能がそれぞれ独立していました。そこで、web上でコミックを読みながら地雷フラグの登録と地雷箇所の予告が可能なシステムをGoogle Chromeの拡張機能として実装しました。そして実用性を検討するために15名の方にシステムを使いながらコミックを読んでいただく長期利用実験を実施しました。

実験の結果、一定数の予告提示が確認され、「予告があることでページを開いた際に驚かなくて済む」という感想や、「予想以上に嫌な描写だったので心の準備をして読むことができて助かった」という感想が得られました。

しかし、予告によって集中力が着れてしまうという感想が得られました。これは、ユーザが予告を希望した地雷フラグが付与されている箇所全てに対し予告を行っていたため予告回数が多くなってしまったことや、予告画面のデザインがコミックと大きく異なったことなどが原因だと考えています。
また、1ページ前に予告を行ったため、次のページを読む際には予告の存在を忘れてしまったという感想も得られたため、該当ページを開いた際など予告の提示タイミングをユーザが選択可能にするといった対処を考えています。

詳細については、後述する原稿とスライドを参照してください。

発表スライド

書誌情報

伊藤 理紗, 中村 聡史. コミックにおける読者依存性の高い地雷表現共有システムの長期利用による実用性の検証, 第9回コミック工学研究会, pp.39-46, 2023.

最後に

過去2回発表させていただいた思い入れのある学会で大学生活最後の学会発表を迎えることができてよかったです。
また、発表に対し多くの質問やコメントを頂くことができ嬉しく思います。

1日目が終わったあと皆でWBCのオーストラリア戦を見ながらホテルまで帰ったのがとても楽しかったです。談笑に夢中になっている間に大谷選手がホームランを打っていてびっくりしました!

 

Gyazo

電車の窓にスマホを置いて野球を見ていた時の写真です。コマーシャルのタイミングだったので心霊写真みたいになりました。

それから、濱野さんと先生と人生で初めてバーに行ったのですがもはやパフェのようなお酒がでてきて困惑しました...とても美味しかったのでまた京都を訪れた際には絶対行きたいです!

Gyazo

カシスのお酒が入っていてとても美味しかったです!

最後になりますが、今回の発表にあたりご指導いただきました中村先生、発表練習や議論などにご協力くださった櫻井君や濱野さんをはじめとする研究室の皆さんに心より感謝申し上げます。
卒業後も研究会などで得たことを活かし仕事に取り組みたいと思います。ありがとうございました。

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