HCS研究会で「色選択インタフェースの枠の色と大きさによる色選択誤差の調査」というタイトルで発表してきました(小林沙利)

投稿者: | 2024年9月4日

はじめに

お世話になっております。M1の小林です。

2024年8月24日・25日に兵庫県立大学商科キャンパスで開催された、ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)で「色選択インタフェースの枠の色と大きさによる色選択誤差の調査色選択インタフェースにおける錯視の影響の調査」というタイトルで発表しましたので、そちらについて発表報告をさせていただきます。

今回発表した内容は、前回の研究の続きとなっておりますので、こちらも合わせてご覧いただけますと幸いです。

 

研究内容

この研究は、色選択インタフェースが原因で起きる色選択の間違いについて検証したものです。

色はデザインにおける重要な要素であり、プレゼン用の資料やイラストなどのデザインを作成する方は、その過程で色を選択する行動を多く行っているかと思います。特に、ソフトウェア上の色選択では、カラーパレットやカラーピッカーなどの色選択インタフェースを用いて色を選択することが多くなっています。ここで、色選択インタフェース上で選んだ色を実際に塗ってみたら思っていた色と違った」という経験はないでしょうか?

色選択インタフェースを観察してみると、白、暗い灰色など様々な背景色があることがわかります、この背景色が色選択に影響を及ぼしていると我々は考えています。

例えば、ある2つのパレットで画像中央にある灰色と同じ色を選びたいと思っ
たとします。それぞれのパレットで,どの色を選ぶのが正しいでしょうか?

 

正解は、どちらのパレットも、左側の列の上から三番目にある色です。

ご覧になっているディスプレイの環境次第ではありますが、パレット1とパレット2で違う位置の色を選んだ人がいるのではないでしょうか。

このように色を見間違えてしまうのは色選択インタフェースの起こす錯視が原因であり、選んだ色と実際に塗りたい色の印象が異なると、デザインが自身のイメージと異なりその修正に手間がかかってしまいます。

これまでの研究では、明るさの対比という周囲の色によって色の明るさの印象が異なって見える錯視現象(参考)について調査しました。

その結果、ひとは暗い色が周囲にあると選択した色が明るく見えることでターゲット色より暗い色を選ぼうとし、明るい色が周囲にあると選択した色が暗く見えることでターゲット色より明るい色を選ぼうとする傾向がある・・・つまり、明るさの対比と同様の現象が確認されました。

それを踏まえて、本研究は選択する色の周囲にカラフルな色がある状態で、選択する色の大きさも変わったらどのような色選択行動がみられるのかを調査したものです。

 

実験では、下のシステムを用いて見本と同じ色を選択するタスクを行いました。

まず、画面上部にターゲット色が表示され、右下にあるカラーピッカー上で色を選んだら、その選択色が左下の枠の中に表示されるので、そちらを見ながら色を調整するというものです。

 

この枠の色(周囲の色)とその大きさを複数条件用意し、選ぶ色に変化はあるか調査を行いました。

 

条件として、以下の10色と灰色のグラデーションを枠の色として提示しました。この10色はマンセル表色系という世界でよく使われている色の分け方を参考に選んだものです。

 

また、表示する色の大きさは以下の5条件としました。

 

こちらに簡単に結果を書かせて頂きます。

まず、枠の色に関して、PB条件という青と紫の間に該当する色の誤差が最も小さくなり、グラデーション条件の誤差が2番目に小さくなりました。一方で、RP条件という赤と紫の間に該当する色の誤差が最も大きくなりました。なお、大まかな色ごとの傾向をみるために3条件ごとにグループ化した結果、黄色~緑の範囲を示すグループの誤差が最も小さいという結果になりました。

 

大きさに関しては、表示面積が小さいほど誤差が大きくなる傾向がみられました。やはり、表示される色の面積が小さいとターゲット色と比較しづらく、その分誤差も大きくなったと考えられます。

 

ここで、現在使用されている色選択インタフェースを見てみますと、「テーマの色」や「最近使用した色」のような色の候補を示す大きさは色選択インタフェースそのものの面積よりもかなり小さくなっています。この小ささが色選択を阻害しているのではないかという可能性が示されました。

 

本実験では、明るさの値のみを調整する実験だったので、今後はカラフルな色を選ぶといった、実際の色選択に近い状況で実験を行う予定です。学会でも、今後の方針や実験条件に関するコメントを多く頂いたので、より一層深めていけたらなと思います!

 

発表スライドと書誌情報

スライド

 

小林 沙利, 中村 聡史. 色選択インタフェースの枠の色と大きさによる色選択誤差の調査, 信学技報, Vol.124, No.161, HCS2024-51, pp.96-101, 2024.

 

おわりに

HCS研究会には初めて参加したのですが、懇親会含め暖かい雰囲気で進行してくださり、充実した2日間を過ごすことができました。運営の皆様にはこの場を借りて感謝を申し上げます。

さて、会場である神戸も初めて観光することができました。同じ港町である横浜には何回か訪れたことがあるのですが、神戸のほうが建物や看板の雰囲気からセピア感を強く感じました。日の沈みが近くなり、人もまばらの港を見ると多少ひっそりとした印象がありましたね。ひっそりとはいっても、BE KOBEのモニュメントはそれなりに賑わってますし、落ち着きを感じるくらいのニュアンスではあるのでリラックスして散策できました。

ところで、海は山や星空と比べて人がまばらだった際の寂しさと隣り合わせ気がします。山や星空は景色によく着目されていますが、海はギラギラの太陽と賑わうビーチ、といった人の側面にもフォーカスされており、それと港の間にギャップがあるからでしょうか。

 

そんなレトロさが味わえる神戸ですが、神戸アトアという令和オーラ漂う施設もありまして、そちらも行ってきました。

 

アクアリウムとアートが融合した水族館だそうです。実際、海の生き物たちが光に包まれており、幻想的な空間に仕上がってました。不思議な色合いをしている魚も多く、まさに生命の神秘でした。 

 

最後になりますが、発表に至るまで多くの助言やご協力をしてくださった中村先生および中村研究室の皆様には感謝の念でいっぱいです。ありがとうございました。

また、個人的な話になりますがB3時には当時M1の先輩方と学会に行き、M1となった今回は奇しくもB3の後輩たちと学会に行くことになりました。

後輩たちはB3時の自分より大分しっかりしてるのでどっしりと構えていましたが、少しでも楽しんでもらえたなら何よりです。盛り上げてくれた同期にも感謝しています。

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