HCS研究会で「タスク作業中の周辺視野への視覚刺激提示が集中に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました(髙橋拓)

投稿者: | 2018年7月27日

はじめに

こんにちは。中村研B4の高橋拓です。
暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。どうか熱中症にお気を付けください。水、飲んでくださいね。

さて、ずいぶん時間が経ってしまいましたが、今年の5/21~22に沖縄産業支援センターで行われたHCS研究会において、「タスク作業中の周辺視野への視覚刺激提示が集中に及ぼす影響の調査」といったタイトルで登壇発表をさせていただきましたので、その報告をさせていただきます。

発表の様子

 

研究概要

我々は以前より、周辺視野+視覚刺激で人の集中力を操作することができないか、といった研究を行ってきました。

「何か物事に集中をすると周囲の状況が気にならなくなる」といった感覚を抱いた事はないでしょうか。これは人間の視野特性が関係していると言われているのですが、この感覚をシステムによって再現することができれば実際に人を集中させることが出来るのではないか?と考えました。

具体的な再現手法ですが、ディスプレイ上の周辺視野範囲に、時間経過と共に減衰していく視覚刺激を提示しました。これによって、集中時の視界から受け取る情報量が段々と減っていく状況を作り出します。

これらの視野特性や視覚刺激に関する内容は、昨年11月に行われたHCI175の発表記事内にて、前回の実験結果と共に詳しく解説しています。こちらも参照していただければ幸いです。また、今回の発表は前回の実験の視覚刺激とタスクを変更して再実験を行った、といった内容です。

さて、前回の実験は

  • 主観的な集中度は向上した
  • タスクの達成度に変化はない

といった結果になりました。主観集中度の向上が見られたこと自体は「感覚を再現する」といった観点においては良い結果ではあるのですが、「実際に集中させる」という点ではタスク達成度の向上が見られなかったのは想定していた結果ではありませんでした。

我々は、個人差の出やすいタスクであったこと、そして減衰刺激提示による感覚変化が少なかったことが原因なのではないかと考えました。

そこで、タスクの内容を比較的個人差が出にくいと考えられる計算タスクに変更しました。また、提示する視覚刺激を、アンケートの結果からより集中妨害効果の認められた刺激に変更し、それを減衰させていくことでより大きな感覚変化を起こそうと考えました。

再実験の結果、今回の減衰刺激を提示した場合において

  • 主観的な集中度は低下した
  • タスクの達成度に変化はない
  • 主観集中度とJINS MEMEの集中度は一致しなかった

といった結果になりました。これは、視覚刺激による妨害を強く設定しすぎたために、刺激による疲労感が減衰による感覚の変化を打ち消してしまったためだと考えられます。また、今回用意した計算タスクが前回の実験タスクに比べて短かったために、減衰による影響が出る前に実験が終了してしまった可能性があります。今後は、より負担の少ない減衰刺激と長時間のタスクでの再実験を検討しています。さらに、今回はJINS MEMEの集中度として、システムが出力する値をそのまま使っていましたが、今後はJINS MEMEの出力する生データをもとにして、集中度を計測しようと考えています。

また、今回の実験協力者13人中7人は、何も刺激を提示しなかった場合に比べて提示した場合の方がタスク達成度が向上する視覚刺激を持っていました。この視覚刺激を有効刺激としたとき、有効刺激のある人・ない人それぞれ2人に対して追実験を行ったところ、有効刺激のある人は追実験においても同じ有効刺激を持っていました。この結果から、視覚刺激の単純な提示による集中操作の観点、および個人によって効果のある視覚刺激が異なる可能性が示唆されました。この内容については今後B3の研究テーマとして引き継がれる予定です。

 

スライド

今回発表で用いたスライドがこちらです。容量の都合上、本来動画として提示していた視覚刺激を静止画像に変更しております。ご了承下さい。

論文情報

原稿は以下のリンクから確認できます。

感想

2度目の学会発表という事であまり緊張せずに発表ができたのですが、直前までスライドを追加していたこともあり少し早口での発表になってしまいました。時間調整は大事ですね。今後は気を付けたいです。

また、質疑においては実験設計に関するアドバイスをいくつかいただくことができ、かなり有意義な学会参加になったと思います。皆様、ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます。

また、学会以外の時間では先生や先輩方と沖縄を存分にエンジョイすることができたので最高でした。美味しいものも沢山食べました。また行きたいなあ。

念願のA&W 本場?のルートビアもやっぱりマズかったです

もちろん海にも行ったのですが、諸事情あってまともに泳げませんでした。詳細は伏せますが、皆さんは裸足でフジツボを踏まないようにしましょうね。

最後になりますが、直前まで論文や発表練習を見て下さった中村先生、先輩方にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました!

HCS研究会で「タスク作業中の周辺視野への視覚刺激提示が集中に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました(髙橋拓)」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: アイ・オー・データ機器さんから集中機能を搭載したディスプレイが発表されました – 中村聡史研究室

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