はじめに
中村研究室B3の田中佑芽です.
2023年8月8日, 9日に北海道大学 学術交流会館にて開催された第204回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「コミクエ: 漫画の内容のクイズ作成が既読巻の想起に与える影響」というタイトルで発表しました.その発表報告をさせて頂きます.
研究概要
背景
漫画の単行本は最新巻が発売されるまで数か月から数年かかるため、ストーリー展開を忘れてしまうことが多くあります.ストーリーの内容を思い出す方法として,読み直しやあらすじ,Web検索など様々な方法が考えられます.しかし,読み直しには時間がかかってしまうため,最新巻をいち早く読みたい時や時間がないといった時にはもっと手軽に確認する方法が適切であると考えられます.あらすじは手軽に確認することができますが,思い出すのには不十分である場合が多いです.また,Web上のコンテンツは整理されているものではないため,ネタバレ情報を閲覧してしまう可能性があります.
これらのことを踏まえ,我々の目的は
こととしています.
提案手法
こうした問題を解決するため,我々は,読了後にクイズを作成し,共有する手法を提案してきました.この手法をWebシステム「コミクエ」として実装し,運用を行ってきました.下図のようにコミクエでは,クイズを作成・共有することができ,最新巻が発売された時は,自身が作成したクイズや他者が作成したクイズを確認することによって,内容を思い出すことが可能となっています.漫画好きの方,もしご興味があればアクセスしてクイズに答えてみてください!
コミクエに登録されたクイズの分析
コミクエを長期にわたって運用した結果,多くのクイズが登録されました.そこで,漫画の内容を覚えておくためにユーザは漫画内のどの位置からどのようなクイズを作成したのか,明らかにするために,クイズの巻内における分布とクイズの種類について分析を行いました.
クイズの分布
以下の図はページを25分割した時,クイズがどの位置に作成されているのかその件数を示しています.この図から,クイズは巻末に多く作成されていることが分かります.クイズの作成数が巻末に多い理由として,巻末は次巻の引きになっている場合があり,クイズにして覚えておきたい情報が多いことが考えられます.
クイズの種類
クイズの種類を分析した結果,6W1Hに分類することができました.以下の表から「What」,「Who」に関するクイズの作成数が多く作られ,「When」,「Where」,「Which」に関するクイズの作成数が少ないということが分かります.What,Whoはクイズにしやすい情報であるため,作成数が多くなったと考えられます.When, Whereはクイズにしても覚えにくい情報であるため作成数が少なくなったと考えられます.また,Whichに関するクイズはほとんどが勝敗を尋ねるものがほとんどであり,このようなシーンは限られていたため,作成数が少なくなったと考えられます.
実験
今回の研究では,「クイズの作成,確認がその巻の想起を促す」という仮説の検証を,クイズ群と感想群の想起の度合いを比較することで行いました。ここで,クイズ群はクイズの作成・確認により想起を行うグループ,感想群は感想の記述・確認により想起を行うグループとしました.また,想起内容は発話する形式で収集しました.以下の図は実験のフロー図になります.
結果&考察
クイズまたは感想を確認する前も後もどちらの場合でも,クイズ群の方が得点率が高いという結果が得られました.
また,想起に有効なクイズは,
であると明らかとなりました.
今後の展望
今回の実験では自身が作成したクイズのみを用いて想起を行いましたが,他者が作成したクイズが想起に有効であるかについても検証を行っていきたいと考えています.また,クイズによるネタバレ度合いについても明らかにしていきたいと考えています.
詳細は下記スライドや原稿をご参照ください.
発表スライド
コミクエ: 漫画の内容のクイズ作成が既読巻の想起に与える影響 by @nkmr-lab
論文概要
感想
今回は初めての学会発表であり,とても緊張しましたが,中村先生や先輩方のサポートのおかげで落ち着いて発表することができたと思います.様々な方からコメントを頂くことができ,貴重な経験となりました.
また,北海道のご飯はとても美味しく,連日幸せでした!
最後になりますが、ご指導してくださった中村先生、論文添削や発表チェックをしてくださった先輩の方々,他にもたくさんの人のサポートのおかげで発表することができました。この場をお借りして感謝申し上げます。
ピンバック: 第71回エンタテインメントコンピューティング研究会で「コミクエ: 他者が作成したクイズが漫画の既読巻の想起に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(田中佑芽) | 中村聡史