NHKのフクッチという番組において、ALSの患者さんからもともと相談を受け、ワコムさんと共同で研究開発してシステム化した tegaki.fun が紹介されました。こちらで配信されているようなので、ご興味がありましたらどうぞ。
この研究は、もともと中村研で進めてきた手書き文字の数式化と平均化手法、そして平均手書き文字がきれいになることに着目して、自身の過去の手書き文字と平均化してきれいに書ける平均手書きノートなどの研究がベースとなっています。ALSという病気は徐々に筋力が失われていくため、手に力が入るうちにそのひとにとって自分らしい手書き文字を記録・記憶しておき、視線入力などを利用して送りたいメッセージをタイプし、その記録・記憶しておいた手書き文字で再現するというものになります。
ここで、手書き文字をフォントとして残しておく手はあるのですが、手書き文字なのにまったく同一のものが出てくると気持ち悪さがあるという我々の過去の研究をもとに、自身の過去の手書き文字の組み合わせや、他者の手書き文字との融合によってゆらぎをもたせる(加重平均化する)ことにより、気持ち悪さをなくしているというものになります。
このシステム、Googleのアカウントを利用してログインする必要はありますが、誰でも利用いただけますので、ぜひ試していただければと思います。
収録当日は、ALSの患者さんにも研究室に来ていただき、収録の中でシステムを体験してもらいつつ色々な意見をいただきつつ、意見交換などもさせていただきました。その患者さんは、複写はがきというものを使われており、そのこれまでの記録を見せていただいたのですが、とてもきれいな手書きで感銘を受けるとともに、「ひとにとって大事な自己表現のひとつが『手書き文字』」という想いは私と共通するもので、システムのことをとても喜んでもらいとても嬉しく思いました。また、お子さんが大きくなったときには手書きはできないかもしれないけれど、「このシステムを使って、子どもが成人したときに手書きでメッセージを送りたい」と言われたときにはとても嬉しく、また身が引き締まる思いでした。
ちなみに、私と、収録に来てくれた患者さん、そして取材をしに来てくれた香月萌衣さんとで「一期一会」という手書き文字を書き、平均化したのが番組で使われたこの画像(番組から切り出し)になります。それぞれの字の特徴が出ており、自分らしさの中に他者も感じることができる良い文字だなぁと思っています。
具体的には、それぞれが「一」「期」「会」を3回ずつ書き、それを「一期一会」という文字列を入力して平均化したうえで、システムで3人で撮影した集合写真を背景に挟み、絵葉書のように3人の平均手書き文字を融合して画像として出力したものでした。自分らの作ったシステムの出力がこのような形で使われるのは嬉しいですね。
番組は、こちらから視聴することができるようなので、ご興味がありましたらどうぞ。
ちなみに、ハートネットTVでは、医療的ケア児に関することとして、私の息子が私が出張のときなどによくお世話になっている短期入所施設もみじの家も紹介されたのを視聴したことがあり、今回取材をしていただきとても嬉しく思ったのでした。