松井 啓司 さん
学部3年生~修士2年生の4年間研究室に在籍し,表彰2件,論文誌採録2件(その内主著が1件),国内会議発表10件(その内主著が5件)と,わずか4年間でかなりの成果を残しました.
研究は主に周辺視へ視覚的な刺激を提示することによって,ユーザの感覚を変容させようというものでした.学部3年生のときには視聴中の動画の周辺視野部分に暗くなるまたは海面が高くなっていくなどリッチなエフェクトを提示することによって,動画の印象変容を狙った研究に取り組み,情報処理学会の全国大会において学生奨励賞を受賞しました.
また学部4年生からは,その後の修士論文での研究に繋がる周辺視野への視覚刺激提示によって,色々な退屈な時間を短くするための,時間感覚の変容に関する研究に取り組みました.当初は,充実時程錯覚などをもとに,周辺視野へ部分へ回転する移動物体を提示し,その速度の違いによって制御することを考えていたのですが,その速度では差がありませんでした.ただ,実験の中で前後の速度差がある場合に時間感覚の変化が生じることを発見し,その点について卒業研究でまとめるとともに,成果が論文誌に採録されました.
修士課程では,その時間感覚制御の研究に引き続き取り組みました.具体的には,待ち時間においてよく利用されるプログレスバーの効果を高めるため,プログレスバーと同時に周辺視野に提示する移動物体を速度変化させることによる時間制御研究に取り組みました.その結果,周辺視野の移動物体を減速することでプログレスバーの待ち時間をより短縮できることなどを明らかにしました.さらに,ウェブページの待ち時間に対する実験により,プログレスバー+周辺視野刺激が最も離脱率が低いことを明らかにしました.
こうした修士課程における研究は,修士論文「周辺視野への視覚刺激提示がプログレスバーの主観的な待機時間に及ぼす影響」にまとめられました.
当初周辺視野に関する研究なんて全く想定していなかった私ですが,中村研究室ができてから周辺視の研究がやたらと増えたのは,松井君が研究室内でその分野を切りひらいたことが大きかったと言えます.実際,多くの後輩が関連した研究に取り組みました.また,ノイズキャンセリングミュージックという騒音の大きさを音楽により緩和する手法についても提案し,研究に取り組んできました.
2019年4月からは,ヤフー株式会社にエンジニアとして就職しています.どこかで見かけましたら,是非ともお声がけいただきますとともに,ご支援をよろしくお願いいたします.
業績
- 表彰
- 論文誌
- 国内会議
- 松井 啓司, 中村 聡史, 鈴木 智絵, 山中 祥太: 周辺視野への視覚刺激提示によるプログレスバーの主観的な待機時間短縮手法, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2019-HCI-181 (25), 1-6 (2019-01-14), 2188-8760 (2019/01/22).
- 松井 啓司, 中村 聡史, 鈴木 智絵, 山中 祥太: 周辺視野への視覚刺激提示がプログレスバー待機時間に与える影響, 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2018-HCI-176(23), 1-7 (2018-01-15), 2188-8760.
- 松井啓司,中村聡史: 周辺視野への視覚刺激提示が時間評価に及ぼす影響,情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2017-HCI-171(7), 1-8 (2017-01-16) , 2188-8760.
- 松井 啓司,中村 聡史: 周辺視へのエフェクト提示による動画の印象変化に関する調査,第78回全国大会講演論文集, 2016(1), 303-304 (2016-03-10).
- 松井 啓司, 中村 聡史, 大島 遼: 周辺視へのエフェクト提示による動画の視聴体験拡張, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集, 2015, pp. 543-550 (2015-09-18).
- 高橋拓, 福地翼, 山浦祐明, 松井啓司, 中村聡史: タスク作業中の周辺視野への視覚刺激提示が集中に及ぼす影響の調査, 信学技報, vol. 118, no. 49, HCS2018-1, pp. 1-6 (2018/05/21).
- 徳久 弘樹, 佐藤 剣太, 松田 滉平, 松井 啓司, 中村 聡史: ノイズキャンセリングミュージック: 音楽の提示により騒音の不快度を低減する手法, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2018-HCI-178(16), 1-8 (2018-06-07) , 2188-8760.
- 松田滉平, 松井啓司, 佐藤剣太, 久保田夏美, 佐々木美香子, 斎藤光, 中村聡史. ノイズキャンセリングミュージック. エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2017論文集. 2017, p. 249-256.
- 福地翼,松井啓司 ,中村聡史: 周辺視への錯視図形提示によるコンテンツ視聴手法の提案, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI),2016-HCI-169(15),1-8 (2016-08-22) , 2188-8760.
- 福地翼, 又吉康綱, 松井啓司, 中村聡史: IllumiFrame:錯視図形を利用した額縁型視聴体験拡張システム, 第24回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2016)論文集, December 2016.
- 学位論文