中村研究室B3の伊藤理紗です。2019年12月10日〜11日に淡路夢舞台国際会議場にて開催された第185回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で発表してきましたので、報告させていただきます。
今回「手書きとフォントの文字形状の違いが顔と名前の記憶に及ぼす影響」というタイトルで発表させていただきました。
研究の概要
みなさんひとの顔と名前を覚えるのは得意ですか?
学校でのクラス替えや、会社での営業など人と新しく知り合う機会は多くあります。また、歴史などの試験にむけて顔画像と名前を記憶するなど、人の顔と名前を覚えなければいけない場面は多いと思います。一方、自身の顔と名前を覚えてもらうことも重要であり、名刺や選挙のポスターなどではフォントでその人の印象や名前を伝える工夫がされています。しかし、人の顔と名前を覚えることを苦手としている人は多くいます。そこで、我々は顔と名前を覚えてもらいやすい文字というものに興味を持ち、研究を行いました。
我々は過去の研究において、テキスト情報の記憶において、続け字風の手書き文字が記憶に残りやすく、ゴシック体が記憶に残りにくいということを明らかにしました。この結果から、今回の研究においても、同様の結果「続け字風の手書き文字が記憶に残りやすく、ゴシック体が記憶に残りにくい」となるのではないかという仮説を立てました。
仮説を検証するために、ミスコンテスト出場者の顔画像と名前を下の4種類の文字表現を用いて実験を行いました。ミスコンテスト出場者の顔画像を使用した理由としましては、服装や背景の条件がそろっているためです。また、実験に用いた4種類の文字は過去の研究で使用していた文字と同じものとなります。
この実験を26人に挑戦してもらいました。実験の詳細については論文を見てもらえればと思います。
実験の結果、まず男性よりも女性の方がスコアが高いという結果になりました。今回のタスクは女性の顔と名前を覚えるというものであったため、女性の方が女性の顔画像と名前を覚えるのが得意であると言えます。さらに、提示順序の効果も見られ、最初と最後に提示したものが記憶に残りやすいということがわかりました。
一方、文字ごとのスコアをみたところ、MSゴシックのスコアが高く手書きAのスコアが低いという、仮説と異なる結果が得られました。ここで、実験後に行ったアンケートで提示した文字が男性的か女性的かという質問を行っており、MSゴシックが男性的、手書きAが女性的という印象を持つことがわかりました。さらに、女性の顔画像に対して文字がマッチしているか、していないかという質問を行い、MSゴシックは女性の顔画像にマッチしていないということがわかりました。これらのことから、画像に対し違和感のある文字を提示した方が記憶に残りやすい可能性が考えられます。
また、本研究の結果が過去の研究の結果と異なったことについて、実験環境の違いではないかと考えました。過去の研究では紙に印刷された文字を提示していたのに対して、本研究ではディスプレイで提示しています。そこでディスプレイの影響を調査するために、過去の研究の実験をディスプレイで実施しました。
この実験は、架空の物事を記憶してもらう実験となります。実験の詳細については過去の研究の論文をご覧ください。その結果、前回の実験結果と異なり、MSゴシックのスコアが高いことがわかりました。この結果からディスプレイにおいてゴシックが記憶に残りやすい可能性があると考えられますが、まだ実験協力者の人数が少ないため、さらに実験し検証していく予定です。
今回の研究では女性の顔画像のみを使用しているため、男性の顔画像でも同様の実験を行いたいと考えています。また、今後は文字の種類を増やして同様の実験を行い、覚えやすい文字の特徴を調査していきたいです。さらに、違和感のある文字というのは意図していない印象を与えてしまう可能性があるため、印象を考慮しつつ違和感のある文字表現を模索していきたいと考えています。
参照
発表に使用したスライドがこちらです。
感想
初日にバスで淡路島へ移動する際に、神戸のルミナリエを窓から見ることができました、とても綺麗でした。さらに、研究会の会場と隣接しているウェスティンホテルに宿泊したのですが、とにかくご飯が美味しかったです!下の写真は朝食の写真です。その場で作ってくれるオムレツがとても美味しくて幸せでした。
学会発表は2回目でまだまだ至らない点は多々あったかと思いますが、質疑ではたくさんのご意見をいただくことができ、とても貴重な時間となりました。
最後になりますが、ご指導いただいた斉藤先輩をはじめとする先輩方、中村先生にこの場をお借りして感謝いたします。そして、同じ学会に参加した梶田さんや船﨑さん、神山先輩、山浦先輩、瀬戸さんのおかげで楽しい旅となりました。ありがとうございました!
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