こんにちは、M2の山浦祐明です。
もう今年も終わりに近づいていますね、早いものです。
さて、2019年12月10〜11日と兵庫県淡路市にある淡路夢舞台にて開催された第185回情報処理学会ヒューマンインタラクション研究会(SIGHCI185)に参加し、研究発表をしてきましたのでその報告をさせていただきます。
発表中の様子
あらまし
みなさん、折角集中していたのに、ふと出てきた広告や、LINEなどの通知に集中を途切れされた経験はありませんか?
日常生活において、作業や仕事などの集中しなければいけない場面や、動画の視聴やゲー ムコンテンツをプレイするなどの集中したい場面というのは数多く存在します。特にIT事業やe-Sportsなどが盛んな現在では,PC上において集中するということは重要なことだと言えます。しかし、集中を乱す原因は多く、集中が遮断されてしまう場面があります。
例えば、課題のレポートや資料作成のためにWeb ページで情報や素材を収集している際、興味をそそられる記事を見つけてしまい、そのままその内容を調べ続けてしまったり、SNSの通知が画面端に表示されて、その内容が気になって返信したりしたことで集中が遮断されてしまった経験はあるのではないでしょうか?
私自身、情報収集していたら関係ない寿司の情報に注意が行ってしまい、そのことを延々と調べてしまったことがあり、どうにかできたらと常日頃より思っています。
このように思わず気になってしまう原因としては、その人にとって重要な情報であるか、または価値のあるものであるかということが関係していると言われており、このような情報に対して過剰に反応してしまうことを知覚的鋭敏化と言います。知覚的鋭敏化は無意識的に起こるものとされており、無視することや注意を向けないことが非常に困難です。そこで私たちは、気になってしまう情報をぼかすことで曖昧にできれば、この知覚的鋭敏化が抑止できるのではないかと考えました。今回の研究では、見ている周りの情報に対してぼかしをかける、つまり周辺視野のぼかしを強調するという手法をとっています。
研究内容
私たちはこれまで周辺視野のぼかしを強調することにより、集中を促進する研究に取り組んできました。この手法でメインタスクの集中を促進しつつ、妨害も防ぐことができたらと思いました。
周辺視野のぼかし強調を行うシステムについては、過去の研究で実装したシステムの仕組みと同様となっております。概要だけ説明しますと視線の検出を行い、その注視点の近くははっきりと見せ、注視点から離れた部分にぼかしエフェクトを重ねたものとなります。詳細な内容につきましては下記の論文のリンクからご覧ください。このシステムを用いて知覚的鋭敏化が抑止できるかの実験を行いました。
実験は大野らの研究で用いた記憶タスクを参考にしており、知覚的鋭敏化が発生するようなものとしました。実験で行った記憶タスクは以下の動画の通りです。
実験で行った記憶タスク(注視点の周りにぼかしがかかっています)
この記憶タスクに対して4段階のぼかし強調を行い、どのレベルのぼかし強調が知覚的鋭敏化の抑止につながるかについて分析しました。ぼかし強調の強さは以下の画像の通りとなります。
ぼかしの強さのイメージ図
実験の結果、弱い程度のぼかし強調を行うことで知覚的鋭敏化が抑止できることが示唆されました。また実験から、ぼかし強調が強すぎる場合は抑止できないことも示唆されたため、どの強さが知覚的鋭敏化の抑止に使えるかは今後も調査が必要だと言えます。さらに、弱い程度のぼかし強調を行うことでタスクの成績が向上したことから、知覚的鋭敏化が起こりうる状況でぼかし強調を行うと、記憶力や集中力が向上する可能性があるとも言えます。この考察については、まだ知見や情報が不足しているため同様に調査が必要です。
また本研究についてですが、私が今まで行ってきた「ぼかし」がユーザに及ぼす影響について調査してきた研究の地続き的な位置にありますので、過去の参加報告記事であるHCII2018、HCI184、HCI182、HCI169もぜひご一読ください。
発表原稿
発表スライド
感想
今回の発表場所は淡路島の夢舞台というところでした。この場所は過去にも一度行ったことがあり、2度目の訪問となります。ここのホテルはお部屋と朝食が素晴らしく、再度の訪問でもその印象が変わることはありませんでしたね。あいも変わらず素晴らしかったです。実は以前淡路島でウォークマンを紛失してしまい、もしかしたら…と思いかるーく探してみたのですが、残念ながら見つかりませんでした…無念。
夢舞台の一部、ここだけ見るとダンジョンみたいな様ですね(実際ものすごく迷う)
さて、今回の発表をもちまして私の発表は最後となります。思えばたくさんの発表をしてきたなと感慨深いものがあります。肝心の発表自体については残念ながら最良の形でお伝えすることができなかったので、その点が悔しいところです。ですが、有意義な議論をすることができましたので、この内容については修士論文にしっかり反映させていきたいですね。
ここまでたくさんの発表をし研究が続けてこられたのも、有意義な学生生活が送れたのも多くの人の支えがあったからでこそです。卒業が近づくにつれてその重みを実感しますね。本当にありがとうございます(これで卒業できなかったら締まりが無いし、エライコッチャなのでラストスパートを駆け抜けるぞ…)。
どこかでお会いすることがありましたら、よろしくお願いします(ヤサシクシテネ)。