はじめに
はじめまして。B3の伊藤理紗と濱野花莉です。5/16-17に沖縄産業支援センターにて行われたHCSでワコムさんとの共同研究の成果について発表してきましたので、報告させていただきます。
今回、学部2年生から研究していた「手書きとフォントの文字形状の違いによる記憶効果の比較」というタイトルで発表させていただきました。
研究内容
皆さんは勉強をする際に、教科書を見て勉強しますか?それともノートを見て勉強しますか?
私たちは勉強をする際に、教科書や 参考書、 講義スライドといった教材や、自分で講義内容をまとめたノートを利用しています。これらの中で使用されている文字の種類は様々で、教科書や参考書、パソコンでタイピングをしてとったノートではコンピュータのフォントが使用されています。一方、紙のノートなどの場合は、 書き手ならではの手書き文字が使われていると思います。ここで、私たちはフォントと手書き文字のどちらが覚えやすいのだろうということに疑問を持ちました。
そこで、私たちは文字列記憶実験と特徴記憶実験を行いフォントと手書き文字で覚えやすさに差が生じるのかを検証しました。1つ目の文字列記憶実験では差が出なかったのでここでは省きますが、特徴記憶実験では、架空の物事の名称と特徴を記憶してもらいました。その際、提示する文字はMS明朝、MSゴシックの2種類のフォントと手書きA、手書きBの2種類の手書き文字を用意しました。実際に実験で使用したものは下図のような感じでした。この図では、架空の宇宙人の名前とその特徴が書かれています。
実験では、この宇宙人だけでなく,他に2人の宇宙人について覚えてもらっています。実験で用いた実際の記憶対象とそれぞれの手書き文字はこちらになります(明朝とゴシックについては抜いています)。
さて、みなさんどのタイプの文字が一番記憶できると予想されるでしょうか?
この記憶実験を26人に挑戦してもらいました。実験の詳細については論文を見てもらえればと思います。
実験の結果、下の図のようなスコアが得られました。MSゴシックの点数がとても低く、手書き文字のスコアが比較的高いという結果になりました。1年次の学生さんに予想してもらったところ、ゴシック体が記憶しやすそう予想していたひとが多かったのですが、それと反する結果になっていました。
この結果から、フォントよりも手書き文字の方が記憶に残りやすい(特にMSゴシックが記憶に残りにくい)ということが示唆されました。この結果の要因としては、フォントと比べて手書き文字の方が文字の形が崩れていて読みにくいことが考えられます。
また、実験後のアンケートでの「自分の手書き文字は手書きA、手書きBのどちらに似ていますか」という質問に対する回答とテストのスコアを調べたところ、自分の手書き文字に似ている文字は記憶に残りやすいということも示唆されました。この要因としては、自分に似ている手書き文字の方が、見慣れているため覚えやすいのではないかと考えています。
学校などで穴埋めするような資料がよく配布されていますが、今回の結果を踏まえると穴埋め部分以外はフォントが利用されており、穴埋め部分を自分で手書きするというのは、実をいうと記憶することにおいてもいいのかもしれません。
今回の実験では4種類の文字を使いましたが、今後は文字の種類を増やして同様の実験を行い、覚えやすい文字の特徴を調査していきたいと考えています。さらに、実験協力者自身の手書き文字を使って実験を行いたいと思います。
応用としては、重要度によって文字を使いわけるということが挙げられます。例えば、選挙のポスターでは候補者の名前を覚えてほしいため、記憶に残りやすい手書き文字を使うといったことや、ノートに使う紙の色を変えることで書いた文字を少し見えづらくするといった工夫によって記憶に残りやすいノートができるのではないかということが考えられます。
参照
論文および発表スライドは以下から参照できますので、よろしければご覧ください。
感想
実験計画や、データの分析など何もわからないままに研究がスタートし、途中うまく結果がでなかったこともあり不安がありましたが、先輩方や先生のサポートで無事に発表できました。研究を始めた2年生のころはこんなに楽しく発表できるとは想像もしていませんでした。
ご指導いただいた菅野先輩や野中先輩をはじめとする先輩方、中村先生、宮下先生にこの場をお借りして感謝いたします。そして、一緒に研究してくれた濱野さんがいなかったら、ちゃんと論文を書いて発表練習をして学会で発表することはできなかったと思います。ありがとうございました!
沖縄では綺麗な海と美味しいご飯を満喫できてとても楽しい旅になりました。猫がたくさんいたので嬉しかったです。(伊藤)
研究をするのも,学会に参加するのも発表するのも全て初めてでしたが,先生や先輩方,そして一緒に研究してくれた伊藤さんのおかげで無事に終えることができました.また,会場では先生や先輩方,同級生がいたおかげで,本番の発表でも全く緊張せず,楽しんで発表することができました.ありがとうございました.
学会以外の時間は,沖縄そばや海ぶどうを食べて沖縄を満喫できました.ちょうど梅雨入りしたタイミングだったので,天気を心配していましたが,綺麗な景色も楽しめてよかったです.
非常に素晴らしい研究ですね。
「同様の実験を行い、覚えやすい文字の特徴を調査していきたい」
とのこと。期待しております。
是非候補に、手書き風フォントと、UDデジタル教科書体をご検討いただきたいです。
ピンバック: 2022年度 修了生: 伊藤 理紗【修士(工学)】 #28 | 中村聡史研究室
ピンバック: 2022年度 修了生:濱野 花莉 【修士(工学)】 #30 | 中村聡史研究室