第216回HCI研究会にて「音声聴取におけるDeceptive Pattern: 発話速度の操作による非母語話者の選択誘導可能性の検証」を発表しました(木下裕一朗)

投稿者: | 2026年1月21日

はじめに

中村聡史研究室M2の木下裕一朗です.1月14, 15日に宮古島で行われた第216回HCI研究会にて,「音声聴取におけるDeceptive Pattern: 発話速度の操作による非母語話者の選択誘導可能性の検証」を発表しましたので,その報告をさせていただきます.

研究概要

背景

サブスクリプションサービスの解約手続きを煩雑にしたり,ショッピングサイトで選ばせたいオプション(定期購入など)を目立たせたりするデザインはDeceptive Pattern(Dark Pattern)と呼ばれています(以降,DPと略).このようなデザインはサービス提供者に利益をもたらす一方で,消費者には不利益をもたらす有害なデザインです.

DPに関する研究は主にGUIを対象に行われてきましたが,DPはVoice User Interface(VUI)にも存在 [1] し,今後さらに出現する可能性があります.本研究では,出現可能性が考えられるDPの一つとして,VUIから出力される音声の発話速度の操作に着目しました.発話速度が選択に及ぼす影響はユーザの母語の環境で検証されてきました[2][3]が,ユーザが非母語で音声インタラクションを行う場合には誘導効果が変化する可能性があります.ユーザが非母語を使用しなければいけない状況には,(1) VUIが多言語対応していない,(2) 意図的にインタラクションの一部で非母語の使用を強制される,の2つの場合があると考えています.GUIにはコンテンツの一部をユーザの使用言語に翻訳せず理解を妨げるDPが存在 [4] しており,このようなDPがVUIにも使用されると(2)のような状況が生じる恐れがあり,ユーザは音声インタラクションの一部で非母語を使用しなければいけない状況に直面する可能性があります.

本研究では,英語の非母語話者である日本人を対象とし,VUIが英語で選択肢を音声提示する際に,発話速度を操作することによって選択が誘導されるか検証しました.

実験と結果

質問に対する答えを,2択の選択肢の中から選んでもらうという実験を行いました.質問は嗜好を問うようなものとなっており,2択の選択肢の一方を人間の平均的な発話速度で音声提示し,もう一方はその0.8倍の速度で音声提示しました.音声を聴いた後,どちらの選択肢を選ぶかクリックで回答してもらいました.本研究では選択肢が母語音声で提示される条件と,非母語音声で提示される2条件を設け,結果を比較しました.

実験の結果,母語・非母語の両条件ともに,発話速度を操作しても選択が偏らなかったことがわかりました.そのため,今回の結果からは,発話速度の操作はDPとして機能しないと考えられます.しかし,非母語条件では,母語条件と比べて選択肢内容の理解度や自身の選択のコントロール感が低く,言語の違いが選択に影響を及ぼしていたことがわかりました.

今後は,2つの音声の発話速度の差をより大きくした場合に誘導されるか,またどのくらい速度差をつけるとユーザは違和感を抱くのかを検証していきたいと考えています.

参考文献

[1] Owens, K. et al.: Exploring Deceptive Design Patterns in Voice Interfaces. EuroUSEC’22.

[2] Dubiel, M. et al.: Impact of Voice Fidelity on Decision Making: A Potential Dark Pattern?. IUI’24.

[3] Zhang, S. et al.: The Manipulative Power of Voice Characteristics: Investigating Deceptive Patterns in Mandarin Chinese Female Synthetic Speech. Proc. ACM Interact. Mob. Wearable Ubiquitous Technol. Volume 9, Issue 3, Article No. 150, pp. 1-32, 2025.

[4] Hidaka, S. et al.: Linguistic Dead-Ends and Alphabet Soup: Finding Dark Patterns in Japanese Apps. CHI’23.

発表スライドと書誌情報

木下裕一朗, 中村聡史. 音声聴取におけるDeceptive Pattern: 発話速度の操作による非母語話者の選択誘導可能性の検証. 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol. 2026-HCI-216, No. 13, pp. 1-8, 2026.

おわりに

前回のHCI研究会では淡路島に行き,今回は宮古島と2連続で島に行きました.私は島らっきょうが大好きなのでそれを食べることを1つの楽しみにしていたのですが,どうやら島らっきょうのシーズンは3~5月頃らしく,食べることができず残念でした…

学会では,今回も興味深い発表を聴くことができ,また自身の研究について意見をいただくことができて良かったです.今後も楽しんで研究に取り組んでいきます.

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