はじめに
中村聡史研究室M2の木下裕一朗です.11月26, 27日に淡路島で行われた第215回HCI研究会にて,非母語話者の発話選択におけるDeceptive Pattern: 英語選択肢の発音容易性による選択誘導可能性の検証を発表しましたので,その報告をさせていただきます.
研究概要
背景
サブスクリプションサービスの解約手続きを煩雑にしたり,ショッピングサイトで選ばせたいオプション(定期購入など)を目立たせたりするデザインはDeceptive Pattern(Dark Patternとしても知られる)と呼ばれています(以降,DPと略).DPに関する研究は主にGUIを対象に行われてきましたが,DPはVoice User Interface(VUI)にも存在 [1] し,今後さらに出現する可能性があります.本研究では,将来VUIが世界に遍在した状況において出現可能性が考えられるDPの一つとして,選択肢の発音容易性の違いに着目しました.発音容易性の違いによるユーザの選択の誘導は,特にユーザが非母語で発話選択する場合において効果を発揮すると予想されます.ユーザが非母語で発話選択しなければいけない状況は,(1) VUIが多言語対応していない,(2) 意図的にインタラクションの一部で非母語の使用を強制させられる,の2つの場合があると考えています.(2)の状況について,GUIにはコンテンツの一部をユーザの使用言語に翻訳せず理解を妨げるDPが存在 [2] しており,このようなDPがVUIにも使用される恐れがあります.VUIにも使用された場合,ユーザは音声インタラクションの一部で非母語を使用しなければいけない状況に直面する可能性があります.
本研究では,英語の非母語話者である日本人を対象とし,英語選択肢の発音容易性の違いによって発話選択が誘導されるか検証しました.
実験
質問に対する答えを,2択の選択肢の中から発話によって選んでもらうという実験を行いました.質問は嗜好を問うようなものとなっており,2択の選択肢は発音容易性の異なるペアとしました.実際に発音容易性が異なっているかは,あらかじめクラウドソーシングによって参加者を募集して確認し,またクリック選択では選択に偏りが生じないことを確かめました.
実験の結果,発音が容易な選択肢が選ばれた回数は361回であったのに対し,発音が難しい選択肢が選ばれた回数は169回となっており,選択の偏りに有意差が認められ,中程度の効果量であることが明らかとなりました.そのため,非母語話者にとって,選択肢の発音容易性の違いはDPとして機能する可能性があると考えられます.
今後は,母語の状況でも発音容易性の違いがDPとなりうるか検証し,今回の結果と比較したいと考えています.また,今回はユーザの音声入力における潜在的なDPに着目しましたが,VUIによる音声出力における潜在的なDPについても明らかにしたいと考えています.
参考文献
発表スライドと書誌情報
おわりに
今回は新テーマでの発表だったため少しドキドキしていましたが,学会では有益な質問やコメントをいただくことができて良かったです.また,学会の前後の空いた時間で神戸観光ができ,初めて神戸牛を食べられて嬉しかったです.神戸牛はなかなか値段がはりましたが,とても美味しかったです.今後も,研究頑張っていきます!
