はじめに
こんにちは。M2の植木里帆です。だんだん涼しくなってきましたね。
さて、愛媛県松山市で9月11日、12日に開催されたHCS研究会にて発表してきましたので、その報告をさせていただきます!
こちらは第196回HCI研究会やHCGシンポジウム2022で発表した研究の続きとなっております。ご興味がありましたらそちらもあわせてご参考にしてください。
研究概要
みなさんは中高生の頃、よく計算ミスをしませんでしたか??
私は地元の学習塾で中学生に数学を教えてもう6年目になる塾講師をしています。
そこではもったいない計算ミスを非常に多く見かけます。
しかし中学生レベルの基礎計算(ここでは正負の数や文字式の計算)はその後の数学学習の基盤となるもので、計算ミスをしないようにすることは重要です。
そこで我々はシステムによる計算ミス防止がしたいと考えました。
さてプログラミングをする際、コードが見やすいように色付けがされる拡張機能があります。
これを”シンタックスハイライト”といい、プログラムを書く人には欠かせない機能です。
このシンタックスハイライトから着想を得て、数式にもハイライトすると気をつけるべき箇所へ注意が向き計算ミスが減るにではないか?と思いました。
ただ数式にハイライトをすると言っても、なにを対象にハイライトするのか、どんなハイライトの仕方が良いのかさまざま考える必要があります。そのため、数式に最適なハイライト法の調査をすることとしました。
前回の実験では8種類の条件を用いた計算式の正誤判定をする実験に理工系大学生及び大学院生29名に実験協力を依頼しました。
その結果、正負の数・文字式の計算ともにかっこに色付けをする手法の正答率が高く、解答時間が短いという結果になりました。また、かっこ内にマーカーを引き同類項にアンダーラインを引くという唯一2種類のハイライト手法を同時提示した条件では正答率が低く、解答時間が長いという結果になりました。これについては注意すべき箇所が多くなってしまい、ハイライトがかえって混乱を招いた可能性がありました。
前回の実験では、理工系の方に実験を依頼したため、数学が苦手あるいは数学に触れる機会が少ない人の場合が検証できていませんでした。また、各条件を1問ずつランダムに提示したため、連続提示した場合の学習効果や慣れが測れていませんでした。
そこで今回は人文系の大学生を対象に手法を2種類に限定して連続提示した実験を行いました。
条件はかっこに色をつける条件とかっこ内にマーカーを引く条件の2種類です。
実験は前回同様、計算式の正誤を判定する実験でした。実験の流れは以下の図のようになっていました。
実験の結果、Baseline条件(ハイライトなし)ではB-color群の方が正答率が高く、解答時間は長くなり、2群間のベースにばらつきが見られました。
また、ハイライト条件の結果もB-color群の方が正答率が高く、解答時間は長くなり、Baseline条件と同様に結果が得られました。ここでは群間の基礎的な数学力の統制が課題としてあがりました。
次に連続提示による学習効果に関する結果ですが、両群ともセットを追うごとに解答時間が短くなり、正答率が下がっていました。これはあまり考えずにハイライトに頼った正誤の判定をしたことや、Baseline条件からハイライト条件で十分に休憩を取れず後半に疲れが出てしまったことが考えられます。
また、問題別に正答率や解答時間の差をまとめたところ、ハイライトの色や間違えのある箇所によって違いが見られました。そのため、今後は間違え方や色に関する詳細な分析を行う予定です。
今後は
- より複雑な式を用いた実験
- 速記したような字を用いた実験
- 計算中のハイライトの効果検証
を予定しています。
詳しくは下記のスライドや論文情報をご参照ください。
発表スライド
論文情報
植木 里帆, 中村 聡史. 基礎計算のミス防止に向けた2種類の数式ハイライト手法の比較検討, 信学技報, Vol.123, No.188, HCS2023-64, pp.41-46, 2023.
感想
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はじめて愛媛に行きましたが、本当に至るところにみかんジュースの蛇口がありました!笑
また空いた時間で今治に行ったり、松山城、道後温泉、鯛めし、みかんとそれなりに楽しむことができました〜
初めての学会発表をする後輩3人を率いての学会参加でしたが、とてもアットホームな雰囲気で落ち着いて発表できました。議論してくださった方々、ありがとうございました🙇♀️
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最後になりますが、実験に参加してくださった方々、原稿添削や発表練習に付き合ってくださった研究室同期・後輩、そして中村聡史先生にこの場をお借りして感謝申し上げます。
ありがとうございました!