第196回HCI研究会で「中学基礎計算の途中計算を促進する記号ハイライト手法の提案」というタイトルで発表してきました(植木里帆)

      2023/01/05

はじめに

こんにちは!!!中村研B4の植木里帆です。

2022年1月11、12日の2日間にわたって石垣島で開催された第196回HCI研究会に参加してきましたので、報告をさせていただきます。新型コロナウイルスの影響で現地/オンラインのハイブリッド型開催となり、私はオンラインで「中学基礎計算の途中計算を促進する記号ハイライト手法の提案」というタイトルで発表させていただきました。

 

研究内容

私は中学生を対象に数学を教える塾講師として勤めているのですが、中学生を教えてて思うのが計算ミスが非常に多いことです。計算スキルは数学の土台となるもので、例え文章題で立式までできても最後の計算部分で落としてしまうのはとてももったいないと思います。

 

そんな生徒たちの計算を見て気づいたのが「途中式を書かない」ことでした。大体、中学2年生の終わりに証明問題の書き方を学習してから記述式のテストで部分点がもらえるようになり、高校へ進学してさらに記述式の解答方法に慣れて途中式を書くようになります。それまではなかなか途中式の重要性・必要性に気づかず、面倒だとか書かない方がカッコイイと思って途中式を省いてしまうようです。しかし、このような生徒たち一人一人にあのね、途中式はね、見直しがしやすいんだよ〜、計算ステップが視覚化されて良いんだよ〜、計算ミスが減るよ〜と直接伝えても、全員に分かってもらうには限界があります。そこで、どうにか感覚的に自ら途中式の重要性に気づいてもらえないものかと考えました。

 

ここで、突然ですが、「シンタックスハイライト(syntax highlight)・構文強調」というものをご存知ですか?

シンタックスハイライトとは、テキストエディタの機能であり、テキスト中の一部分をその分類ごとに異なる色やフォントで表示するものである。(Wikipediaより)

基本的にはプログラムのコードに採用されているものが多く、情報系の方には馴染みがあるのではないでしょうか。このシンタックスハイライトの利点は、とにかく見やすいことです!長ったらしいプログラムのコードも色がついているととても見やすい。コードは書きやすいし、エラーも発見しやすい。そこで、数式にもハイライトしたら計算ミスが減るのではないか、ハイライトのために途中式を書くようになるのではないかと考えました。

数式ハイライトのイメージ図

中学生あるあるの計算ミス箇所は複数あり、これらに対するハイライト方はさまざま考えられます。今回は、どういったハイライト方がどういった計算ミスに影響するのかを調査するため、「=」「+」「−」「×」「÷」といった数学記号にのみ色付けを行うプロトタイプシステムを作成し、実際に中学生・大学生・大学院生に利用してもらう実験を2回行いました。

実験の結果、数学記号の認識精度が不十分であったことや、実験環境でのネットワークの不調、提案システムの制約などから残念ながらシステム利用による差が見られませんでした。

そこで、システム改良のために2回の実験を通して見られた様々な計算ミスを分類わけし、どのようなハイライト方が最適かを考えました。

  • 括弧を外す計算をする際に符号を変え忘れる、「−」×「−」を負の数にするというような符号ミス
    →最初の計算問題にハイライトする、あるいは問題文を写してシステムにハイライトしてもらってから問題を解き始めさせる
  • 分配法則の際に近い方しか計算しないで、遠い方に分配し忘れる
    →括弧で括られた数式のまとまりを意識させる必要があるため、まとまりの見やすいマーカーのようなハイライト方にする
  • 四則計算の順序を取り違え、前から順に計算してしまう計算ミス
    計算順序に意識を向かせるため、「×」と「÷」を「+」と「-」より目立つようにする
  • 括弧の中に同類項があるのに計算せずに分配している、文字式と数字を足している計算ミス
    文字式の認識がしっかりできていないことが考えられるため、同じ文字式の項を同じ色にする

 

今後は数式の認識精度向上に努め、上記のような様々なハイライト方法の影響の調査や長期実験を予定しています。また、計算分野を方程式などに拡張すること、色付け以外の手法も検討しています。

詳細は下記のスライドや原稿をご参照ください。

スライド

植木 里帆, 中村 聡史. 中学基礎計算の途中計算を促進する記号ハイライト手法の提案, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI196, No.4, pp.1-8, 2022.

 

感想

当初は石垣島現地での発表予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大から直前でオンライン発表への切り替えを決断しました。

石垣島に行けることをモチベーションに実験や原稿執筆に邁進していたため、非常に悔しい気持ちですが、今は無事に発表を終えられたこと嬉しく思います。

今回、学会投稿に間に合うか間に合わないかのギリギリを攻めての実験や原稿執筆だったため、昨年度以上に中村先生や先輩方にご相談ご協力をしてもらいました。ありがとうございます...!!!!
この恩は、今度は私が先輩として後輩たちに引き継ぐことで返せたらなと思っております。

最後になりますが、改めて、ご指導いただいた中村聡史先生、実験に協力していただいた皆様、サポートしてくださった先輩・後輩・同期に感謝申し上げます。ありがとうございました。

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