はじめに
こんにちは!中村研究室M1の植木里帆です。
2022年12月14日〜16日の3日間にわたり開催されたHCGシンポジウム2022に参加してきましたので、その報告をさせていただきます。
現地とオンラインのハイブリッド開催でしたが、私は現地の香川県高松市で「数学の基礎計算におけるミス防止のためのハイライト手法の比較検討」というタイトルで発表させていただきました。こちらは第196回HCI研究会で発表した「中学基礎計算の途中計算を促進する記号ハイライト手法の提案」の続きとなっておりますので、あわせてご参照ください。
研究内容
背景
基礎計算って大事ですよね。ここでいう基礎計算は中学生の初頭で学習する正負の数や文字式の計算のことを指しています。基礎計算は中学校、高校と学年が上がっていってもずっと数学の基盤として存在し、基礎計算でのミスは早い段階でなんとか減らす必要があります。
私は塾講師として中学生を対象に数学を教えてもう5年目になるのですが、本当にもったいないミスが多いんです!!!テストの最初にある計算問題の小問集でミスをしたり、文章題でも立式はできても計算部分でミスをして点を落としたりする例が見られます。このもったいないミスをなんとかシステムで支援できないかと考えたのがこの研究のはじまりでした。
基礎計算でのミス防止をシステムで支援するべく、我々は「シンタックスハイライト(syntax highlight)」に着目しました。シンタックスハイライトとは、テキストの一部に色を付けるなどして可読性を向上させるものとなっています。
仮説・目的
数式には数字はもちろんのこと、数学記号や文字を含み、長くなればなるほど複雑化するといった特徴があります。そのため、シンタックスハイライトのように注意すべき箇所へハイライトをすることにより計算ミスの軽減につながるのではないかという仮説をたてました。
過去の研究「中学基礎計算の途中計算を促進する記号ハイライト手法の提案」では、計算途中の数学記号にリアルタイムで色を付与するプロトタイプシステムを実装し、中学生数名と大学生数名に利用してもらう実験を行いました。しかし、自由な中学生の数式筆記にシステムの認識が追いつかず、数学記号へのハイライトが計算ミス防止に及ぼす影響を明らかにすることができませんでした。
そこで、別の方法で数式への最適なハイライト方法を調査することとしました。
実験概要
最適なハイライト方法を調査するにあたり、考慮すべき点がいくつかあります。
- 視認性について
→複数のハイライト法を組み合わせても良いのか
→何色まで使っていいのか - どうやってハイライトするか
→文字色変え/太文字/マーカー/下線 - 何をハイライトするか
→数学記号/かっこ/文字式 - 間違え方によって最適なハイライト法があるのか
→計算順序のミスなら数学記号、まとまり意識ならマーカー
これらを考慮し、今回選定したハイライト条件は以下のようになりました。条件名の”B”は「かっこ」、”L”は「同類項」を意味しています。
この条件を用いて、見直し作業を想定し、すでに最後まで計算された計算式の正誤を判定する実験を行いました。実験協力者は明治大学に通う理系大学生及び大学院生29名でした。
実験結果
正答率における実験結果は以下の表のようになりました。
表からもわかるとおり、正負の数ではB-color条件が、文字式の計算ではB-color条件とL-color条件の正答率が高いという結果となりました。
続いて、回答時間における実験結果は以下のようになりました。
グラフからもわかるとおり、どの条件も大きな差は見られませんでした。もう少し具体的に見てみると、正負の数ではB-color条件の平均回答時間が最も短く、Baseline条件とB-marker条件は同程度であることから正答率と同じような傾向が見られました。一方、文字式の計算では正答率と同じような傾向は見られませんでした。
考察
実験結果から以下のようなことがわかりました。
- 正負の数ではB-color条件が最も良い手法であることが示唆された
- B-marker条件は誘目性が高く、ハイライト外の間違えを気づきにくくした可能性がある
- 複数ハイライト手法を組み合わせたMix条件は注目すべき箇所が多く、混乱をまねいた可能性がある
また、今後は
- 実験対象者を中学生や文系の人に変えて実験を行う
- 問題の難易度をあげる
- 適切な色を調査する
などを検討しています。
詳しくは以下のスライドや論文をご参照ください。
スライド・論文情報
数学の基礎計算におけるミス防止のためのハイライト手法の比較検討 by @nkmr-lab
論文情報
植木 里帆, 中村 聡史. 数学の基礎計算におけるミス防止のためのハイライト手法の比較検討, HCGシンポジウム2022, No.C-5-3.
感想
今回初めてHCGシンポジウムに参加させていただきました。急遽、中村先生が引率できなくなってしまったこともあり、学生だけでの学会で不安な気持ちもありましたが、とっっっってもアットホームな雰囲気で、落ち着いて、そして楽しむことができました!
また、ポスターセッションでは様々なデモ体験と活発な議論に大変刺激を受けました。
いただいた意見を参考に今後の研究を発展させていけたらいいなと思います!
そしてそして、初めて上陸した四国!!!香川県!!!!高松市!!!!!!!!
うどんしかないとか言ってすみませんでしたあああ!!!!!
うどんはもちろん骨付鶏も美味しかったし海鮮も美味しかったです!栗林公園や金刀比羅宮、小豆島など観光地もそれなりにまわりました!
いろんなハプニングはありましたが(笑)、同期と後輩ちゃん連れ回してしっかり楽しむことができました〜〜〜!!
ひとつ皆様に忠告したいことがあるとすれば、ぜひレンタカーでの観光を強くオススメします^^
運転練習しなくちゃなあ…。
中村研では運転練習支援の研究もやっておりますので、そちらもぜひ。
最後にこの場をお借りして、ご指導いただいた中村聡史先生、実験に協力していただいた皆様、サポートしてくださった先輩・後輩・同期に感謝申し上げます。ありがとうございました!!!
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