中村研究室M2の又吉です.2020年12月16日から18日にオンラインで開催された第28回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ (WISS2020) にてロング登壇発表させていただきました.
発表内容
背景
大学の情報系学部学科で開講されるプログラミング教育では,数百人単位の学生を数人のTAで指導する必要があり,TA1人に対して学生10人以上を担当することもあり,指導の工夫が求められています.また,対面講義の問題点として,「学生が初歩的な質問をTAするのが恥ずかしい」「TAが学生の質問を解決できずに困る」「質問したい学生が手を上げてもTAが順番を飛ばしてしまう」などが主な問題点として存在してました.
新型コロナウイルスの影響で増加したオンライン講義では,上記の3つの問題がさらに大きな問題となります.「TAと1対1の閉鎖的な環境(通話アプリ等)に学生が入りにくいことで質問がしにくくなる」「TAが学生の質問を解決できなかったときに他のTAに頼りづらい」「一定のルールやシステムを設けないと順番待ちが困難」というようなオンライン環境に起因する問題が生じます.
目的
本研究は,大学におけるプログラミング教育においてTAの人数が限られている中で,オンライン環境に起因する問題を解決し円滑に学生とTAが学習,指導できる環境を構築することを目的としています.
設計指針
今まで,対面講義で行ってきたフローを図示します.
- 受講生が手を挙げてTAに質問があることを意思表示し呼びます.
- TAは受講生のところに向かいます.
- 受講生の質問を聞いたりTAが指導を初めて質問応答を行います.
本研究では,受講生とTAの間にシステムを設けることで,背景で述べた問題の解決を行います.
- 受講生はシステムに質問を投稿します.
- TAはシステムに投稿された質問をチェックします.
- その中に回答できそうな質問を回答開始にします.
- TAによって質問が開始されるとシステムは質問を投稿した受講生に通知を行います.
- 受講生とTAは質問応答を始めることができます.
こうすることによって,「学生はTAから呼ばれる立場になる」「TAは事前に質問をチェックできる」「システムが順番を管理する」と問題を解決することが出来ます.
実装
上記の設計指針に沿ってaskTAというシステムを構築しました.詳しくはデモビデオを参照してください.
運用
askTAを実際のプログラミング演習のオンライン講義で8回の運用を行いました.
運用中のaskTAのダッシュボード画面
askTAには,367回の質問が投稿されました.受講生がTAを待った時間やTAが指導を行った時間を分析したところ,多くの質問は投稿されて5分以内にTAが対応を始め20分以内には指導が終了していました.対面講義やaskTAを運用していないオンライン講義との直接の比較は行っていないものの,askTAによって円滑にTA業務が行われていたと考えられます.
また,運用終了後のアンケートでは全体的に高い評価がされました.その中からは,「受講生の質問に対する抵抗感の軽減」「TAの負担軽減」なども行えてたことが示唆されました.詳しくは以下の発表スライドや論文を参照してください.
発表スライド
論文情報
最優秀発表賞(一般)を受賞!
今回のWISS2020では,オンラインで参加費が無料で開催されたことにより,参加者が400名にも登っていました.その400名の一般参加者による査読ありの登壇発表に対する投票によって最優秀発表賞 (一般)を受賞しました!!
学部2年のWISS2016@長浜で初めて学会に参加し,WISS2017@八ヶ岳,WISS2019@長野,とショート登壇発表でしたが,最後にロング登壇発表で最優秀発表賞を受賞できてとても嬉しいです.ありがとうございます.