はじめに
お久しぶりです。
最近寒さもだいぶ収まってきて、外でも非常に過ごしやすくなりましたね。
私は先日の夜、映画鑑賞の帰り道にてやたらテンションの高いおじいさんを見かけて人間の可能性について考えるようになりました。
さて、今回2023年3月13~15日に沖縄産業支援センターにて開催されたMVE研究会にて発表してきましたので、その報告をさせていただきます。
研究内容
研究背景
皆さんは学業を行う上で、暗記の難しさに頭を抱えた経験はありますか? 僕はよくあります。
覚えなければいけない事象の多さに対して覚えるための時間が足りない、などと思うことも多いと思います。
そこで、単語の表示方法を工夫することで単語の覚えやすさの向上を狙い、暗記の支援をしたいと考えました。
具体的には、あらかじめ覚えたい記憶対象にぼかしを与え、ぼかしが与えられた単語に視線を向けると段階的にそのぼかしが晴れていくといったような表示方法を提案しました。
以前の研究では提案手法の有用性を調査するため、提案手法を利用した場合と利用しなかった場合での記憶テストの得点の差を比較し、本手法を利用した際のほうが記憶効率が向上することが明らかになりました。
既存手法との比較
前回の研究では「覚えるべき箇所が強調されている」利用した場合と「覚えるべき箇所が強調されていない」利用しなかった場合で比較を行ったため、そういった要素が影響を与えたのではないかと考えました。
そこで今回の研究では、提案手法を利用した場合と既存手法を利用した場合での記憶テストの得点の差を比較します。
既存手法として今回利用したのは、マーカーによるハイライトを用いた手法です。
ハイライトが適応された記憶対象
実験設計
記憶実験の流れに関しては前回の研究と基本同じとなっています:詳しくはこちら
ただし、忘却フェーズにて行ってもらったタスクをジグソーパズルからブロックパズルに変更しました。
そして、最も大きな実験設計の変更点として、今回の実験では実験者間比較を行いました。
実験協力者にはまず紙媒体で手法なしで記憶テストを二回行ってもらい、その結果をもとに既存手法群と提案手法群に分けました。
そして一週間後に群に応じた手法を利用して記憶テストを行ってもらい、各群における点数の変化を比較しました。
各群における実験設計
このようにテストを行う順番を固定化することによって、その影響を軽減しました。
実験結果
結果としては、以下のグラフの通りです。
各群における基礎点数平均と手法点数平均
提案手法の平均が49.0点、既存手法の平均が44.6点となりました。
また、基礎点数との点数差は提案手法が13.5点、既存手法が23.5点となりました。10点ほどの差があります。
このことから、提案手法を利用した場合、既存手法を利用した場合よりも記憶効率が良いということがわかります。
次に視線の分析についてお話します。
以下の画像は提案手法群にて高い・低い点数を取った人の視線の一例と既存手法群にて高い・低い点数を取った人の視線の一例です。
提案手法群にて高い・低い点数を取った人の視線の一例
既存手法群にて高い・低い点数を取った人の視線の一例
これらから、視線のブレや単語への集中度が記憶効率に関わっている可能性が考えられます。
考察
提案手法群のほうが既存手法群に比べて手法点数が高く、また基礎点数との差も提案手法群のほうが小さかったことから、既存手法に比べて提案手法のほうが記憶高率を向上させられることが明らかになりました。
また、視線データの分析により視線のブレや単語への集中度が記憶効率に関わっている可能性が明らかとなりました。
今後は、視線データのより詳細な分析・分類を行っていき、視線の遷移や覚え方の分類とそれによる記憶効率への影響を調査していきます。
さらに、比較対象としてぼかしのみの群を用いることで、視線に連動した変化が記憶に与える影響についても研究していきます。
発表スライド
論文情報
あとがき
三回目の学会発表でしたが、いつも通り緊張しました。
なぜか参加者の中で最高学年だったこともあり、うわどうしようかなぁの多い学会であった気がします。
海
魚
とはいえ全員無事に発表が終わり、楽しい旅となったのでおっけーです。以上。