はじめに
こんにちは。最近自分が雨男ではないかと疑い始めた中村研究室M1の髙久拓海です。
今回は、2023年9月6日から9月8日にかけて開催されたKES2023で、「A method to construct a comic dataset and the analysis of comic spoilers」というタイトルで発表しましたので、そちらについて報告させていただきます。
なお、今回発表した内容は中村研1期生の牧良樹さんの研究を引き継ぎ、追加の分析を行って英語化したものとなります。牧さんの元の原稿はこちらになりますので、そちらも合わせてご覧ください。
研究内容
背景
みなさんは漫画やアニメ、ドラマなどは好きでしょうか?私自身漫画を読むのが非常に好きで、常に最新巻の発売日を心待ちにしています。そんな中で、コンテンツ系に存在する問題点の1つにネタバレが存在します。ネタバレとは、作品の内容のうち物語上の重要な部分を暴露してしまうこととされています。私自身、好きな漫画の最新情報をSNS上でネタバレされた経験を持っており、非常に嫌な経験をしたことがあります。
このように、作品のネタバレに嫌悪感を持つ人は少なくなく、ネタバレに関する研究は様々行われています。我々の研究室でもネタバレに着目した研究は様々行われています。(スポーツ観戦のネタバレ研究、漫画でネタバレを避けながら内容の思い出しを支援する研究、など)
また、我々は過去に漫画におけるネタバレの影響について調査を行いました(詳細はこちらをご覧ください)。
しかし、この時の研究では、
- 漫画におけるネタバレの定義が曖昧であるため、ネタバレの影響を十分に調査できていない可能性がある。
という問題点がありました。
そこで、今回の研究の目的は「漫画におけるネタバレの定義を明確にし、ネタバレの影響について再度調査を行う」になります。
ネタバレ定義
ネタバレを定義する上で重要な点として、「読者が読んでいる場所」と「ネタバレが提示された場所」の関係があると考えられます。例えば、読者が読んでいる場所(左)とネタバレが提示された場所(右)が下記の2通り存在したとします。
1通り目
2通り目
この時、1通り目の場合は読んでいる場所とネタバレが提示された場所が91巻と物凄く離れているため、そもそも提示されたネタバレを認識できない可能性が高いと考えられます。他方、2通り目の場合は、ネタバレが提示された場所が読んでいる場所と近いため、影響が高いと考えられます。
このことから、我々はネタバレを以下のように定義しました。
ネタバレの定義:そのコミックのN話までを読んでいる他者に対し、N+1話の中にあるページpを提示したときに嫌な思いをさせるもの
実験
前章で定義したネタバレをもとに、漫画におけるネタバレの影響について再度調査を行うためネタバレのデータセット構築を行いました。データセット構築は5名の協力者に行ってもらい、各漫画のページがどれほどネタバレに該当するかを3段階で評価してもらいました。データセット構築に使用した漫画は、下の図をご覧ください。また、データセット構築の詳しい条件などについては今回の論文およびベースとなった論文をご覧ください。
使用した漫画
左から、「All You Need Is Kill (小畑健)」、「GIANT KILLING(ツジトモ)」、「予告犯(筒井哲也)」、「ReReハロ(南塔子)」
結果
各作品におけるページごとのネタバレの影響度を下に示します。なお、横軸は漫画の話数、縦軸はネタバレ度合(高いほどネタバレの影響が強い)を表しており、赤いグラフは今回構築したデータセット、青いグラフは過去の研究で構築したデータセットの結果となっています。
これらの結果より以下のことが明らかになりました。
- 今回構築したデータセットでは、過去に構築したデータセットよりも多くのネタバレを検出できている。
- 過去の研究では、「物語のオチ」といった終盤付近に出てくる内容がネタバレとして主に扱われていたが、ネタバレは物語の終盤だけでなく、中盤付近にも生じる。
このことから、ネタバレに関する研究では、
- ネタバレの定義を明確にすること
- ネタバレは後半部分に限らず、作品全体で生じる可能性があること
といった点を考慮して行う必要があるとわかりました。
より詳細な内容についてはスライドや論文をご覧ください。
発表スライド
論文情報
感想
初めての国際会議&英語での発表だったため物凄く緊張しましたが、なんとか発表出来て良かったです。また、発表後に様々な方から意見をいただいて沢山交流できたことは、非常に有意義な体験となりました。頂いた意見などを次の研究にも是非活かしていきたいと思います。
また、空き時間に世界遺産であるパルテノン神殿をはじめ、古代ギリシャの様々な建造物や博物館などを観光できてとても幸せでした。また国際会議で発表できるように今後とも研究を頑張りたいと思います!
最後になりますが、たくさんのサポートをしていただいた中村先生、研究室のみなさんに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
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