ICAD2025(AM.ICAD)にて「Comparison of Speed-based and Position-based Auditory Feedback in Eccentric Strength Training」というタイトルで発表してきました(大石琉翔)

投稿者: | 2025年8月25日

はじめに

こんにちは,中村研究室M2の大石琉翔です.

6月30日〜7月4日にポルトガルで開催されたICAD2025(The International Conference on Auditory Display)にて発表してきましたのでそちらについて報告させていただきます.

今回発表した内容は,EC71HCI211で発表した内容を再整理して英語化したものになりますので,よろしければそちらもご覧ください.

 

研究概要

背景

筋トレの1つにエキセントリックトレーニングというものがあります.エキセントリックトレーニングとは,ダンベルやバーベルなどの重量をゆっくりと下げることに重点をおいた筋トレです.ダンベルの上げ下げを繰り返すダンベルカールで例を示すと,ダンベルを下げる動作をゆっくりに行います.このダンベルを下げる動作(エキセントリック動作)を3~5秒で行うことが一番効果的と言われているのですが,回数を重ねるごとに動作が速くなってしまうといった問題が生じます.そこで本研究の目的は,エキセントリックトレーニングにおいて適切な動作速度を維持してトレーニングできることです.

 

提案手法

この問題に対し,我々は動作速度に応じて「動作をゆっくりとしたくなるような音」をフィードバックする手法を提案しました.動作速度が適切な場合に「チャージ音」というエネルギーが蓄積されていく音がフィードバックされ,力を使えているという感覚からその速度の維持を促します.動作速度が速くなってしまった場合には「パワーが抜ける音」が鳴り,力が使えていないという感覚から速度の減速を促します.このように動作速度をフィードバックすることで,ユーザが音を聞くだけで動作を制御できることが期待されます.実際のシステムの使用例を以下に示します.

良い例

 

悪い例

 

実験1:従来手法との比較

実験1では,提案手法が適切な動作速度の維持に有効かどうかを検証しました.提案手法条件,秒数読み上げ条件,フィードバックなし条件の3つの条件を比較しました.秒数読み上げ条件は,0~5秒まで1秒ごとに経過時間を音声で提示される条件であり,パーソナルトレーナーによって広く用いられてきた従来手法です.提案手法と従来手法を比較することで,提案手法の有効性を検証しました.

実験には10名の実験協力者に参加してもらいました.各条件においてエキセントリック局面の動作時間について分析を行ったところ,提案手法条件および秒数読み上げ条件のいずれにおいても,フィードバックなし条件と比較して有意に動作時間が長くなることが示されました.

 

実験2:速度・位置フィードバックの比較

実験2では,「何に基づいてフィードバックするのか?」ということに着目しました.提案手法では速度に基づいて聴覚フィードバック(SpeedFB)を行うものですが,先行研究では腕の位置に基づいた聴覚フィードバックも提案されていました.この実験では速度に基づいたフィードバック(SpeedFB)と腕の位置に基づいたフィードバック(PositionFB)とを比較し,それぞれの特性と有効性を検証しました.

実験には22名の実験協力者に参加してもらいました.実験1と同様に各条件においてエキセントリック局面の動作時間について分析を行ったところSpeedFB条件とPositionFB条件で動作時間に有意差が見られました.しかし,中央値は,SpeedFB条件で4.84秒,PositionFB条件で4.72秒とその差は大きくありませんでした.また,分散の違いを検討するためにF検定を実施した結果,両条件間に有意な分散の差が認められ,SpeedFBの方が動作時間のばらつきが小さい結果となりました.

 

まとめ

SpeedFBは適切な動作時間でのトレーニングや速度の一貫性において安定した効果を示し,特に筋疲労が蓄積する状況下でも実用性が高いことが示唆されました.一方,PositionFBは丁寧で緩やかな動作を促すという特性を持ち,フォーム重視のトレーニングにおける補助的な手法としての可能性が示されました.これらの結果から,両手法を補完し合うことでより効果的なフィードバックが提供できるのではないかと考えられます.今後はそれぞれの強みを活かしたハイブリッド型のフィードバック手法を検討する予定です.

 

発表スライド

https://www.docswell.com/s/nkmr-lab/58MMXQ-2025-07-21-142724/1

論文情報

Ryuto Oishi, Satoshi Nakamura. Comparison of Speed-based and Position-based Auditory Feedback in Eccentric Strength Training, ICAD2025, 2025.

 

おわりに

今回,人生で初めて国際会議で発表する機会をいただきました.私は英語がとても苦手で不安も大きかったのですが,何度も練習をさせいただきなんとか発表をやり遂げることができました.一方で,質疑応答では英語がうまく聞き取れなかったり,思うように英語が出てこず,悔しさや課題が残る発表にもなりました.今後は英語力を磨き,もっと議論できるようになりたいと感じています.

会議の開催地であるポルトガルに訪れるのも初めてで,ヨーロッパならではの美しい街並みや歴史を感じました.特にご飯がとても美味しく,現地の文化にも触れることができました.研究発表だけでなく,こうした体験も自分にとって大きな財産となりました.

 

 

ポルトの夜景

 

 

 

 

 

 

 

 

リスボンの景色

 

 

 

 

 

 

 

 

イワシの塩焼き

 

 

 

 

 

 

 

 

有名なお菓子ペイストリー(右)

 

 

 

 

 

 

ポートワインの醸造所

 

最後になりますが,ご指導いただいた中村先生,実験に協力いただいた研究室の皆様に感謝を申し上げます.本当にありがとうございました.

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