はじめに
こんにちは,中村研究室M1の大石琉翔です.
1月14~15日に開催された「第211回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会」にて,「エキセントリックトレーニングにおける適切な動作速度を維持するための聴覚フィードバック手法の検討」というタイトルで発表しました.
本発表では,研究の背景やシステムの概要,さらに実験結果について紹介し,参加者の皆様と活発な議論ができました.
研究内容
背景
筋力トレーニングへの関心が高まる中,セルフ型ジムの普及により,トレーナーがいない状況で個人でトレーニングを行う機会が増えています.特に,「エキセントリックトレーニング」は,筋肉が収縮した状態からゆるやかに伸ばしていく動作に焦点を当てたトレーニング方法で,筋力アップや筋肥大に効果的な手法として注目されています.例えば,ダンベルカールでは,ダンベルを持ち上げた状態から,3~5秒かけてゆるやかにダンベルを下ろす動作がエキセントリック動作に該当します.このように,エキセントリック動作では「ゆるやかに動作すること」が重要ですが,ひとりで行う際は自身でその速度をコントロールするのが難しいという問題があります.
この問題に対し,速度に基づくフィードバック (SpeedFB) や腕の位置に基づくフィードバック (PositionFB) が提案されてきましたが,両者を比較した研究はこれまで行われていませんでした.そこで,本研究では,これら2つの手法が動作速度や速度の一貫性に与える影響を比較し,より効果的な支援方法を検討しました.
提案手法
本研究では,以下の2つのフィードバック手法を用いて比較を行いました.
- SpeedFB手法
- 適切な動作速度の場合は「チャージ音」,速すぎる場合は「エネルギーが抜ける音」を鳴らす.
- PositionFB手法
- 腕の位置に応じて8段階の音階が鳴ることで,動作の進行状況をフィードバックする.
それぞれの手法はApple Watchを用いたシステムとして実装し,スマートウォッチから取得した動作データに基づいてリアルタイムで音響フィードバックを行いました.以下にそれぞれのフィードバック手法での使用例を示します.
SpeedFB手法
PositionFB手法
実験結果
実験では,20~24歳の男女21名を対象に,ダンベルカールのエキセントリックトレーニングを実施し,各手法の動作時間および速度の一貫性を評価しました.
1. 動作時間の比較
- SpeedFB手法では,動作時間が3~5秒の範囲に収まる傾向
- PositionFB手法では動作時間のばらつきが大きい傾向見られたものの,動作をゆるやかにする傾向
2. 速度の一貫性
- PositionFB手法は,速度のばらつきをより抑える傾向
- SpeedFB手法でも同様に,速度のばらつきを抑える傾向
まとめ
今回の研究により,SpeedFB手法が動作速度の維持や動作の安定性において優れた効果を持つことがわかりました.一方で,PositionFB手法では動作のばらつきが課題として挙げられたものの,動作をゆるやかにする傾向が見られました.今後は以下の点に取り組むことで,より実用的で効果的な支援システムの実現を目指します.
- フィードバックの具体性や直感性を高める改良
- 禁活動の計測を用いた,筋肉への意識や動作精度に与える影響の検証
- SpeedFBとPositionFBの利点を組み合わせた新たなフィードバック手法の検討
これらの取り組みにより,初心者でも効果的なトレーニングが行えるシステムの実現を目指していきます.
発表スライド
書誌情報
感想
今回の学会発表で,研究室のメンバー8人と一緒に沖縄に行ってきました.
学会ではさまざまな方々から貴重な意見やご質問をいただきました.これまでの研究を見つめ直し,今後の改良につながる大きな学びとなったと感じています.この経験を活かし,より効果的なトレーニング支援システムの実現に向けて,引き続き研究に取り組んでいきたいと思います.
帰る日の飛行機までの時間で8人研究室メンバーと美ら海水族館へ行ったり,沖縄料理を食べたりして,とてもいい思い出となりました.特に,海ぶどうをアグー豚で巻きつけて食べるのは絶品でした.
学会での記念撮影
海ぶどうをアグー豚のしゃぶしゃぶで巻いて食べる
美ら海水族館のジンベエザメ
最後になりますが,ご指導いただいた中村先生,研究室の皆様に感謝を申し上げます.本当にありがとうございました.
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