はじめに
こんにちは!中村研究室M2の山﨑郁未です。
2023年8月8日, 9日に北海道大学 学術交流会館にて開催された第204回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で発表してきましたので、報告させていただきます。
今回は、「自由記述設問の順番とテキストボックスサイズが離脱に及ぼす影響: スマートフォン・PCの比較」というタイトルで発表してきました。
研究概要
Webアンケートは手軽に多くの回答を集めることができるメリットがあり、研究の基礎データ収集や社会調査で利用されています。
私はこれまで、「Webアンケートにおける不真面目回答予防システム実現に向けた自由記述配置の基礎検討」というタイトルで、自由記述の位置による不真面目回答率や文字数、離脱率の調査を行いました。その結果、自由記述を最初に配置することで、不真面目回答率が低くなるものの、文字数が少なくなる傾向、また自由記述設問の段階で離脱する人が多いことを明らかにしました。
また、「Webアンケートにおける自由記述設問の順番が回答時間と離脱に及ぼす影響のスマートフォン・PC間比較」では、デバイスによる離脱率や回答特徴の調査、および自由記述が最初にあることによる離脱率の正確な調査を目的に研究を行いました。その結果、離脱率は自由記述を最後に回答してもらうより自由記述を最初に回答してもらう方が高く、PCよりスマートフォンの方が高いことがわかりました。また、25~30%の人がアンケートの1問目で離脱することも明らかにしました。
ここで、自由記述設問における要素としてテキストボックスは、とても大きなものになってくると考えられます。Maloshonokらの研究においては、テキストボックスが大きく表示された人は、小さく表示された人より回答が長くなること、また畑中らの研究においては入力欄が大きいテキストボックスは離脱率が高くなることが示されています。
つまり、
- 自由記述設問を最初に回答してもらい、かつそのテキストボックスが大きければ離脱率が高くなる
- 自由記述設問を最後に回答してもらい、かつそのテキストボックスが小さければ離脱率が低くなる
と予想することができます。
これらを踏まえ本研究では、自由記述設問の位置とテキストボックスサイズの2要因が離脱に及ぼす影響の調査、およびスマートフォンとPCの比較を目的に研究を行いました。
実験は、「スマートフォンを日常的に使用している人向けアンケート」とし、Yahoo!クラウドソーシングで依頼をしました。実験は、自由記述を最初に回答してもらう最初群、自由記述を最後に回答してもらう最後群のどちらか、また、テキストボックスサイズが小さい群、大きい群のどちらか、この2要因の組み合わせ合計4群に分けて行い、これらはランダムに分けられました。
詳しいグループ分けは以下の図の通りとなっております。
結果ですが、まず離脱率について、以下のグラフのような結果になりました。
こちらのグラフから、最初群については、30~47%の人が、最後群については約20%の人がアンケートページにアクセスはするものの、アンケートに回答せず、離脱してしまうということがわかります。また、最も離脱率が高いのは自由記述設問を最初に回答し、そのテキストボックスサイズが大きい「最初群(大)」であることがわかります。
次に、自由記述設問における合計文字数および合計回答時間について示します。
こちらの表から、最初群(大)において、合計文字数および合計回答時間が多いことがわかります。
ここまでの結果をまとめると、テキストボックスサイズが大きいと
- 離脱率が増加する
- 文字数を多く入力しようとする
- 回答時間を多く取り入力しようとする
ということがわかりました。このことから、離脱率と回答の質のバランスが重要であると我々は考えています。
さらに、スマートフォンとPCにおける離脱率について以下のグラフに示します。
こちらの表から、PCよりスマートフォンの方が離脱率が高いことがわかります。
このデバイスによる結果と最初群(大)の離脱率が50%を超えたことは、スマートフォンで回答している人は待ち合わせなどの外的要因があるうえに、テキストボックスが1問目で大きく表示されたことが原因として考えられます。このことから、離脱率を増加させないためには、自由記述設問を冒頭に配置しない方がよく、テキストボックスサイズも小さめが望ましいと言えます。
今回の結果を整理すると下記のようになります。
今後は、
- どのようなアンケートテーマ/構成であれば回答の質への効果があるのか詳細に調査
- 複数アンケートを実施し、アンケート設計時の注意点について提案
を行いたいと考えております。
発表スライド
論文概要
感想
今年度3回目の発表で、準備等バタバタでしたが、当日はいつも通り落ち着いて発表することができました。今年度にこれから学会発表を行うかどうかは決まっていませんが、このような経験も学生のうちだけなので、どこかに行って発表できたらなと思っております。
初の北海道は美味しいご飯を食べることができ、とても満足です!海鮮丼がほっぺが落ちそうなくらい美味しかったです!
今回の出張はM2が私1人だったのですが、こんな先輩を優しく受け入れて一緒に行動してくれた後輩たちには感謝しかないです!
また、HCI研究会の前日には、北海道情報大学の湯村研、伊藤研のみなさまと合同研究会をさせていただきました。中村研とはまた違った面白い視点からの研究をされており、他の研究室との合同研究会は毎回刺激になっています。会場準備などにご尽力いただいた湯村研、伊藤研のみなさま、ありがとうございました。
最後になりますが、この学会までに論文・発表指導してくださった中村先生、後輩の皆さん、ありがとうございました。また、会場運営、研究会にご尽力いただいた運営委員の方々に感謝申し上げます。
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