第199回HCI研究会にて「優柔不断な選択者を後押しする眼鏡型デバイスの実現とその評価」というタイトルで発表してきました(小松原達哉)

   

はじめに

こんにちは、中村研M1の小松原です。
8/22,23に北海道で開催されたHCI199にて発表を行ってきました。本記事ではその報告をさせていただきます。

研究概要

みなさんは自身を優柔不断だと思ったことはありますか? わたしはかなりの優柔不断人間です。

優柔不断は、選択においてうまく判断ができずに長く悩んでしまう特性を指します。日常において選択をする機会は往々にしてあるために、優柔不断であるとタイムセールの機会を逃してしまったり、同行している友人を待たせてしまったりといったことが起こってしまいます。また、過去の研究では選択を悩みすぎてしまうことで選択者の疲労感増加や、 最終的な満足度の低下を引き起こすことが明らかにされています。
こうした優柔不断であるために起こってしまう悪影響をなくすために、選択の悩みを低減することを大目的として研究を行ってきました。

日常的な選択で、同行している友人や訪れた店の店員さんによって一緒に考えたりアドバイスされたりすることで、それが後押しとなり判断を下せるようになることがあります。そのことから我々は、選択中のユーザの視線運動を計測し、最も注視していた候補を「〇〇がオススメです!」と推薦することで、ユーザの選択を後押ししてくれる存在をいつでも再現するシステムを提案してきました。

DEIM2022ではプロトタイプシステムを用いた実験において、ユーザの興味推定が正確に行えていた場合に、その後押しでユーザの選択時間と満足度に良い影響が見られたことを報告しました。しかし、前回の実験では選択の対象として私が作成したメニューを使っていたために実際の選択とは与える印象が異なっていたことや、後押しの有無による比較を行うための実験を行っていなかったため、システム自体の有用性を検証し切れていないという問題点がありました。

これらのことを踏まえて、本研究の選択実験では既製品のカタログギフトを利用して、その中から気になる商品を一つ選ぶという実験を実施しました。これを実験協力者ごとにシステムによる後押しのあり/なしのどちらかで実施し、それにより結果にどのような変化が表れるかを検証しました。

実験の結果、選択の内容や実験後に行ったアンケートへの回答から、残念ながら後押しの有無を比較して後押しが効果的に働いた様子は見られませんでした。ただ、この後押しが効果的に働かなかったことについて視線や見ていたページの文責を行ったところ、今回の実験ではこの例のように全体の選択行動に対して早すぎるタイミングで推薦が行われてしまったケースが多くありました。実際に下のグラフは横軸が時間、縦軸がその時に見ていたページの番号を表す選択行動のログの一例です。緑線が実際に選んだ商品のページ番号、赤線が推薦が行われたページの番号、縦の黒線が推薦が行われたタイミングを示しています。

まだ何にするか選んでいるのにもかかわらず、推薦してしまったことが逆効果となってしまっていたようでした。ここでいろいろな視線を分析したところ、下図のような傾向がありました。このページ移動について分析を行い、その悩んでいる状態を判断して適切に推薦することで効果が出るのではと考えています。

また、アンケートにおいて興味を持っていなかった候補が推薦されていたケースがあることもわかりました。これらについてはカタログ内のインパクトのある文言や写真などによって、興味がなくても注視時間が伸びたことが影響したと考えられます。

今後は後押しが適切なタイミングで表示されるために選択状況の判別を行うことや、インパクトが強い候補の影響を軽減できるように注視時間を時系列で重み付けするなどの設計の見直しをしていく予定です。

 

原稿情報

小松原 達哉, 中村 聡史. 優柔不断な選択者を後押しする眼鏡型デバイスの実現とその評価, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-199, No.8, pp.1-7, 2022.

発表スライド

 

感想

初めてのオフラインでの学会参加で不安も多かったですが、なんとか発表を終えることができてよかったです!発表に向けてサポートをしてくださった先生、そして研究室の皆さんありがとうございました。質疑や他の参加者の方々の発表もすごく勉強になりました。

また、空いた時間で小樽を観光してきました。トラブルもあったりしましたが、夜景は綺麗でご飯は美味しくとても充実した出張でした!

小樽運河

小樽天狗山

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