第196回HCI研究会で「自己決定に基づく内発的動機づけが運転に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(中川由貴)

      2023/01/05

はじめに

はじめまして!中村研究室B3の中川由貴です。

2022年1月11~12日に開催された第196回HCI研究会にて、株式会社SUBARUさんとの共同研究の成果を「自己決定に基づく内発的動機づけが運転に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました。ここではその報告をさせていただきます。

研究内容

 

みなさんは運転免許証をお持ちでしょうか?

免許を保有していても運転に苦手意識を持っている人は多いと思います。実際、免許を取得して間もない初心者ドライバや免許を持っていてもほとんど運転をしないペーパードライバに当たる人はたくさんおり、このようなドライバは運転に苦手意識を持っていることが多いです。Yahoo!クラウドソーシングを用いて、運転免許証を保有する男女2000人を対象に運転に関するアンケート調査を行ったところ、「あなたは運転が得意ですか?苦手ですか?」という質問の回答は以下のようになりました。

初心者ドライバやペーパードライバはその他のドライバに比べて苦手意識を持っている人が多いことがわかります。このような苦手意識を放置してしまうと運転を避けることにつながってしまいます。そのため、運転への動機づけを高めて運転技能を向上させるシステムが必要だと考えました。

内発的動機づけ

私たちは動機づけの中でも、「内発的動機づけ」に着目しました。内発的動機づけというのは人からの強制やお金などの報酬目的ではなく、興味や関心に基づいて自分から行動している場合の動機づけのことを指します。好きなことや趣味に関することなどをしているときは内発的に動機づけられているといえますね。この内発的動機づけは、質の高い行動長く続けられるということがわかっています。そこで、運転に対して内発的動機づけを誘発できれば、運転の技能向上や苦手意識除去につながるのではないかと考えました。

実験

運転への内発的動機づけを促すために、運転前に運転技能に関する選択肢を提示してドライバにその後の運転で「気をつけること」を選択した後で運転をしてもらいました。(運転はシミュレータ上で行いました。)「この技能に気をつけるぞ!」と自分で選択した事による自己決定感から運転への内発的動機づけを誘発できると考えました。また、比較検証として、ドライバ自身が選択するのではなく、実験者側から「〜に気をつけて運転してください。」というように指示された場合の実験も行いました。選択肢として用意したのは「不必要なハンドルの切り足しや戻しをしない」、「左右の幅に気をつける」、「スピードを一定にする」の3つです。

実験の流れ

結果と考察

シミュレータで実験をしたところ、運転前に「不必要なハンドルの切り足しや戻しをしない」という技能を選択した実験協力者は、同じ技能を実験者から指示された人に比べてその後の運転での修正舵(ハンドルの切り足しや戻し)回数が少ない傾向がありました。

一方で、「左右の幅に気をつける」と「スピードを一定にする」という技能については選択や指示による差はありませんでした。

「左右の幅に気をつける」や「スピードを一定にする」という技能は「不必要なハンドルの切り足しや戻しをしない」という技能に比べるとドライバによって注意する操作に差が出てしまったり、操作が複合的で分かりづらかったりした可能性があります。つまり、操作が直接的でわかりやすい運転技能について内発的動機づけが作用しやすいのではないかと考えられます。

また、実験後のアンケート調査ではいづれの技能についても実験者側から指示された実験協力者(外発的動機づけ)の方が主観評価が高い結果となりました。しかし、修正舵回数については自身で技能を選択した協力者(内発的動機づけ)の方が少ない傾向にありました。そのため、外発的動機づけは技能によっては意識したつもりになってしまい、技能向上の効果が低くなる可能性があります。

今後は提示する選択肢の再選定やシミュレータの改善をした上で再度検証していきたいと考えています。

詳細については下のスライドや論文情報をご参照ください。

発表スライド

論文情報

中川 由貴, 松田 さゆり, 船﨑 友稀奈, 松山 直人, 中村 聡史, 小松 孝徳, 鳥居 武史, 澄川 瑠一, 高尾 英行. 自己決定に基づく内発的動機づけが運転に及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-196, No.9, pp.1-8, 2022.

おわりに

コロナウイルスの影響で、現地(石垣島)での発表は断念し、オンラインでの発表となってしまいました。今後の発表はオンラインではなくどこかへ行って登壇発表できることを祈っています。

最後になりますが、お忙しい中たくさんのサポートをいただいたSUBARUの方々や中村先生、研究室の方々に心より感謝申し上げます。

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