淡路島で開催された第195回HCI研究会に参加してきました!(細谷,松山,横山,伊藤,植木,中村,中川)

   

こんにちは。本格的に寒くなってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
2020年11月30日・12月1日に、淡路夢舞台国際会議場とオンラインでハイブリッド開催された第195回ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会に参加してきましたので、その参加報告をさせていただきます。

中村研に所属するメンバーの発表内容につきましては、別途発表報告記事がありますのでそちらをご覧ください。

気になった研究

非常に興味深い研究がたくさんありましたが、ここでは細谷、松山、横山、伊藤、植木、中村、中川が気になった研究を1つずつご紹介させていただきます。

細谷が気になった研究

ディップフラワーのデザインおよび制作支援システム(中島 萌子,五十嵐 悠紀(明治大学))

ワイヤーで作った輪にディップ液で膜を派って作る、ガラス細工のようなお花である”ディップフラワー”の作成を支援する研究です。初心者において、オリジナルのデザインを作ることが難しい・デザイン通りにワイヤーを曲げることが難しいという問題点に着目し、パラメーターをいじることで簡単にデザイン可能で、デザインした花びら型のワイヤーを出力するシステムを提案しました。

実際にひとに使ってもらう実験の実施や、複雑な形状のものは今後の課題と述べており、これからが楽しみな研究でした。母が趣味でディップフラワーを作成しており、作成手順や完成品を見て作ってみたい気持ちはありつつも難しそうだなあと思っていたので、このシステムを使ってみたいなと思いました。

松山が気になった研究

スケジューリング情報が未確定のタスクも対象とするタスク管理支援システム(吉田 篤人,鳥越 涼太,山本 景子,辻野 嘉宏(京都工芸繊維大学))

締め切りや実行タイミングが明らかになっていないなど、スケジューリング情報が未確定の予定があってもタスク管理を可能にする手法を提案した研究です。情報が曖昧なタスクを開始可能時刻や締め切りに幅があるタスク、開始可能時刻や締め切りが全くわからないタスク、実行時間の見積もりが明確でないタスク、1セットで複数回行うタスクのスケジュール化に分け、それぞれに対してスケジュール化を行うシステムの実装を行いました。

自分がタスクへのモチベーション向上に関する研究を行っているため、研究背景や問題点にとても共感しました。タスクとスケジュールを同一時間軸で管理できない問題や、情報が曖昧なタスクを種類ごとに分けた話については、自分の研究にもつながる話だと思ったので参考にしたいです。システムの評価実験はこれから行うとのことだったので、今後の研究が楽しみです。

横山が気になった研究

こめかみ部の血流の測定から唾液分泌量を予測するメガネ型ウェアラブルシステム の設計と実装(鷲野 海,大西 鮎美,寺田 努,塚本 昌彦(神戸大学))

唾液は人体にとって重要であり,唾液分泌量が低下すると口腔疾患などさまざまな弊害が生じてしまいます。唾液分泌量を日常的に測定し、唾液分泌量低下による悪影響の低減に繋がる可能性があるため、なるべくユーザの負担が大きくならないように自動で唾液分泌量を測定するメガネ型ウェアラブルシステムの構築を目指しました。本研究では,光センサを用いて唾液分泌量を測定するメガネ型ウェアラブルシステムを提案し、提案システムが唾液分泌量を推定することができるか調査しました。その結果、平均絶対誤差(MAE) 0.17 で唾液分泌量の推定が可能であると明らかにし、今後は精度向上や無線化することを展望としていました。

個人的に目新しい課題で、かつ水とレモンの臭い刺激を用いて唾液の分泌量を計測するという実験方法の斬新さにも魅力を感じました。精度向上のために学習データを増やすことや推定手法の見直しを検討しているとのことでした。口腔内の乾燥を防ぐことは近年の感染症予防にも有用であると思うので、今後の精度向上を楽しみにしています。

伊藤が気になった研究

お手伝い株式会社:リスクマネジメントに着目した小学生向けアントレプレナーシップ教育教材の開発と評価(前川 碧井(情報経営イノベーション専門職大学),山内 正人(情報経営イノベーション専門職大学/慶応義塾大学))

起業する際のリスクマネジメントなどに関するアントレプレナーシップ教育について、若年層を対象とした教材は増えていますですが、小学生や中学生向けの教材はあまりありません。そこで、著者らは小学生を対象とし、すごろく形式でリスクマネジメントについて学ぶことができる「お手伝い株式会社」という教材を開発しました。また、小学4~6年生を対象としたワークショップを行った結果、「お手伝い株式会社」によってリスクマネジメントに関する知識が向上し、起業に対する興味が増加することを明らかにしました。

この研究で提案されていた「お手伝い株式会社」では、お手伝いをテーマに企業における従業員の役割を妹に置き換えるなど、小学生でも想像しやすいよう工夫を行っており、難しいテーマを楽しく学ぶことができる点に魅力を感じました。このすごろくは対象者によって内容を私自身起業のリスクマネジメントについては知識が乏しいので、ボードゲームを用いて知識を学んでみたいと感じました。

植木が気になった研究

輪郭線のデフォルメにおけるメンタルイメージの保存条件(三末 和男(筑波大学))

メンタルイメージを保存したデフォルメの自動化を目指し、簡略化を利用してメンタルイメージが保存される条件を探すための実験を実施しました。実験は都道府県を題材にして、実験参加者にデフォルメしたそれらの輪郭形状からどの都道府県かを識別できるかや、表している都道府県のイメージに合うかを問いました。Web によるオンライン形式で実施した実験の結果分析から、都道府県の輪郭は局所的な特徴を備えるものとそうでないものに分けられることが分借りました。さらに局所的な特徴として、面積比が一定以上、頂点の角が一定以下の「つの」がメンタルイメージの保存に影響していることが分かりました。

都道府県の形をどこまでデフォルメして識別できるかという実験でしたが、青森県の上部や新潟県の佐渡島など特徴的な「つの」が都道府県の識別に影響があるようでした。実際にデフォルメされた都道府県の画像を見ても、青森県や静岡県は「つの」があって識別しやすく、面白いと思いました。都道府県以外の対象でデフォルメした場合にどうなるのか、とても気になりました。

中村が気になった研究

海鳥の行動パターンと移動軌跡の視覚的な表現の設計(三浦 志菜,三末 和男(筑波大学))

多次元多変量データである海鳥の行動パターンの可視化について検討した研究です。海鳥の移動軌跡と行動パターンを読み取りやすくするために、明度や色相,アニメーションを用いた視覚表現を提案しました。また、海鳥専門家の方に可視化したものについて評価していただき、それぞれの可視化手法についてのメリット,デメリットについて考察を行いました。この海鳥の行動パターンの可視化は重要海域や生態的情報を得るのに役立つことが期待されます。

まだ可視化で用いられていない海鳥の行動パターンのデータに着目をし、実際にそのデータの可視化を必要とする人に意見を聞いているのが良いと思いました。情報量が多いデータの可視化は読み取りづらくなりやすく難しいので他の可視化の研究にも活かせる部分が多そうだと思いました。

中川が気になった研究

スマートフォンを用いた危険な自転車運転検知に向けた運転状況認識手法の実装(林 裕嵩,徐 安然,周 中一,矢谷 浩司(東京大学))

危険な自転車運転を検知して、運転者に自身の運転のフィードバックを提示するシステムをつくる研究です。自転車に搭載したスマートフォンのカメラ映像から自動車や歩行者の有無や一時停止標識、運転者の顔の向きなどを認識するプロトタイプシステムを実装し、実際の自転車運転データからその検討をしました。今後は認識手法の改善や危険度の統一的な評価、フィードバック手法を検討することを展望としていました。

スマートフォンのみで様々な運転状況の認識ができる点がとても魅力的に感じました。自転車に乗り始めたばかりの子供たちの教育にも生かせるのではないかと思いました。自動車運転については自動化を見据えた多くの研究が行われていますが、自転車運転でも危険を感じる場面は多いためこのシステムが改良されていくのを楽しみにしています。

感想

ここ1年はCOVID-19の影響でオンライン開催の学会が多かったため、久しぶりに現地開催の学会に出席することができ、感慨深かったです。

会場となった淡路夢舞台は建築家の安藤忠雄氏がデザインを手がけたリゾート施設で、空き時間に広大な敷地を散歩したり、淡路島牛乳のソフトクリームを食べたりと心も身体もリフレッシュすることができました。
宿泊場所は会場に隣接するグランドニッコー淡路で、淡路島のたまねぎやヨーグルトを楽しめるおいしい朝食バイキングも堪能しました。

今回はB3〜M2までの13人という大所帯での学会参加でした。これまでコロナ禍でできていなかった対面での交流がたくさんでき、とても良い思い出になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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