HCGシンポジウム2024で「ドライビングシミュレータにおける路上駐車のドア開閉が認知的狭さに及ぼす影響について」というタイトルで発表してきました(成瀬詩織)

投稿者: | 2025年3月26日

はじめに

はじめまして。中村研究室B3の成瀬詩織です。
2024年12月11日から12月13日に金沢歌劇座(石川県金沢市)で開催されたHCGシンポジウム2024にて研究発表を行いましたので、ご報告させていただきます。

背景

車での運転時、ナビゲーションシステムを使用したことのある方は多いと思います。初心者の方であれば、多少時間がかかってでもいいから道幅の広い通りを、長年運転されてきた方ならば、複雑でも早くつける効率の良い道を通りたいと考える人もいるでしょう。しかしながら、現在のナビゲーションシステムでは、こうした運転技量や習熟度についての考慮がされていません。適切な車のナビゲーションのためには、道路形状や運転者の心理状態を反映した運転難易度のモデル化が必要となります。
私たちはこれまで、カーブ走行や幅員減少、道路幅など複数の道路条件における運転難易度のモデル化をステアリングの法則を用いて調査してきました。
その中のひとつに去年のMVEで発表された「ドライビングシミュレータにおける路上駐車による道路幅の変化が運転に及ぼす影響」というタイトルの研究があります。

この研究では、路上駐車による道路幅の変化が運転に及ぼす影響を調査し、その運転難易度のモデル化の検証についての調査が行われました。また、その影響の度合いはステアリン グの法則に関するモデルを用いて推定できることを明らかにしました。

実験

 

実験は、上記の図(左)のような経路をmetaクエストを用いたVR空間上で再現し、ドライビングシミュレータを用いて行いました。コース条件は元の道路幅を5mで固定し、駐車車両によって減少した幅(3m, 4m, 5m)と経路長(40m, 100m, 200m)の組み合わせ9種類。さらに、路上駐車のドア1mが開閉した時の道幅である最狭幅(4m, 5m, 6m)と経路長(40m, 100m, 200m)の組み合わせ9種類の合計18種類の道路条件を選定し、走行実験を行いました。実験を通して得られたデータから、条件ごとのエラー率と平均通過時間について分析を行いました。また、実験協力者一人一人の車線経路を計測し、それらを特徴ごとにグループ分けを行いました。

結果

平均通過時間

こちらが、道幅が最も狭くなる時の長さ(最狭幅)を基準とし、3m,4m,5mの条件ごとに区間長の長さ40m,100m,200mごとに分析した平均通過時間の結果の表です。この表から、区間長が等しく最狭幅が異なる条件を比較すると、最狭幅が狭いほど路上駐車区間を通過する際にかかる時間は長くなることがわかりました。また、開閉がない区間の方が平均通過時間が長くなっていることがわかりました。

エラー率

 

 

 

 

 

開閉有無別のエラー率

 

 

 

 

 

左右別のエラー率

上記の図は、各通過幅と区間長における区間内のエラー率を示したものです。どちらの図からも、通過幅が狭くなるほどエラー率は高くなり、区間長が長くなるほどエラー率が高くなるという結果が得られました。開閉有無別のエラー率から、最狭幅4m,5mの場合エラー率は開閉ありの方が高くなるということがわかりました。
また、興味深い結果として、左右別のエラー率の結果から、駐車位置が走行方向に対して右に位置する時、通過幅、区間長ともにエラー率が高くなるという結果が得られました。

モデル化の検証

今回用いたモデルは、Yamanakaらによって提案されたモデルになります。
以下の式は本実験で得られた最も精度の高かったモデル式です。モデル化の検証では4つの式を用い、既存のモデル化式と比較したところ、路上駐車のドア開閉を考慮した式の方が高い精度で推定できることがわかりました。

 

 

 

 

 

ここで結果から、駐車区間において、「ドアが開く」ことに対して危険予測を行いながら運転する場合、実際の道路幅に対して認知的狭さが影響を与えていることがわかりました。

今後の展望として、運転難易度のさらなるモデル化に向けてコース条件の再設計を行い、異なる連結方法についても検討していきたいと考えています。

詳細は下記のスライドや論文の原稿をご覧いただければ幸いです。

論文情報

成瀬 詩織, 飯田 空, 福井 雅弘, 髙久 拓海, 中村 聡史, 山中 祥太. ドライビングシミュレータにおける路上駐車のドア開閉が認知的狭さに及ぼす影響について, HCGシンポジウム2024, No.B-4-6, 2024.

感想

今回が初めての学会発表でしたが、たくさんの方のサポートのおかげで無事に終えることができました。研究聴講やインタラクティブセッションでは、著名な先生方や研究員の方、優秀な学生さんの研究のお話を直接聞くことができて、自分にとって非常に刺激のある時間でした。また、現地で食べた海鮮や金箔アイスが絶品でした。時期的に兼六園の雪景色や紅葉をみることができなかったので、次回訪れる際は金沢の絶景を楽しみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後になりますが、実験準備から論文のチェック、発表練習などで支えてくださった先輩方、中村先生に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

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