第115回GN研究会で「待ち合わせの困難性を左右する場所の伝達と把握の難易度に関する検討」というタイトルで発表してきました(古市冴佳)

投稿者: | 2022年2月12日

こんにちは、中村研究室M2の古市冴佳です。

2022年1月20~21日にオンラインで開催された115回グループウェアとネットワークサービス研究発表会にて、「待ち合わせの困難性を左右する場所の伝達と把握の難易度に関する検討」というタイトルで研究発表を行ったので、その報告をさせていただきます。

 

あらまし

待ち合わせ場所として、アクセスの良い場所やランドマークのあるわかりやすい場所が選ばれることが多いですが、そういった場所は同じように待ち合わせをしている人で混雑してしまうことがよくあります。「混雑した場所でより簡単・円滑に待ち合わせ相手を見つけられるような支援を行いたい」という思いから、2019年度からこの研究を続けています。

我々は、待ち合わせ相手の探索には次の2つの探索段階があると考え、それぞれの探索における問題点を明らかにすることを目指し研究に取り組んできました。詳細は、それぞれの発表報告記事をご覧ください。

  1. 待ち合わせ場所を絞り込むための探索(113回GN研究会での発表報告記事
    …待ち合わせ相手との場所のやりとりで得られた情報をもとに、待ち合わせ相手がいる位置を絞り込む
  2. 待ち合わせ相手を特定するための探索(186回HCI研究会での発表報告記事
    …待ち合わせ相手の顔や体格などの特徴をもとに、待ち合わせ相手を特定する

今回の研究では、1つ目の「待ち合わせ場所を絞り込むための探索」で行われている「場所のやりとり」に着目し、これまでの実験で収集したデータを用いて、どのような要素が場所のやりとりを難航させてしまうのかについて明らかにすることを目指しています。

 

研究内容

本研究では、難航したやりとりで見られた「場所のやりとりが上手くいかなかった箇所」に着目し、その箇所に現れる特徴を明らかにすることを目的として、以下のように取り組みました。

1. 待ち合わせ対話データセットの作成

2. 探索者と待機者の会話がすれ違ってしまったやりとりに現れる特徴の分析

 

まず、これまでの実験で収集したデータを用いて、待ち合わせ対話データセットを作成しました。

実験は、通話で場所のやりとりを行いながら、AppleのLook Around機能を使用し待ち合わせ場所の探索を行ってもらい、待機者がいると思われる位置まで探索者が移動するというタスクを設計しました。実験は合計で40回行い、トラブルのあった1回を除いた39回の実験データを用いて分析しています。実際の実験の様子は、こちらで示しています。

各実験について待ち合わせ相手と円滑に落ち合うことができたかを評価し、実験データは、発話をアイディアユニットに分割し、発話意図によって発話プロトコルに分類しました。発話プロトコルについては、下記のように探索者を9カテゴリ、待機者を10カテゴリに分けています。

探索者:説明、報告、確認、質問、要求、応答、相槌、不完全、その他
待機者:説明、確認、質問、要求、応答、視点指示、行動指示、相槌、不完全、その他

 

次に、探索者と待機者の会話がすれ違ってしまったやりとりについて説明します。これは、難航したやりとりのみで見られたものであり、場所のやりとりを困難にさせる要因の一つであると考えられます。実際に実験で見られたすれ違いについて、下の画像の例を用いて説明します。

すれ違いが起きたときの探索者(左)と待機者(右)のLook Around画面

画像のやりとりでは、待機者が右側の風景を見ながら「でっかいビルが2個」と説明したのに対して、探索者が左側の別の建物を見ながら「あるね」と回答したことですれ違いが生じてしまいました。このペアはその後、「ビル2個」を使って待機者の位置関係についてやりとりを重ねたものの、基準となる建物が異なっているためなかなか話が合わず、混乱している様子が見られました。

このように、お互いが違うものを見ていることに気が付かずにやりとりを続けてしまうと、相手の説明が理解できず、相手の意図とは異なる動きや回答をしてしまうことがあります。そのため、すれ違いに早く気が付かせることが重要であると考えました。

円滑なやりとりと難航したやりとり、難航したやりとりのうち、このすれ違いが起きている箇所と起きていない箇所について、発話パターン(発話プロトコルの順序:「説明→質問→応答」「説明→相槌→要求」など)の出現回数を求めました。各発話プロトコルが発話パターンに含まれている割合を比較したところ、以下のことが分かりました。

難航原因箇所:
「説明」「相槌」が含まれる割合が最も低い
「質問」が含まれる割合が最も高い
非難航原因箇所:
「確認」が含まれる割合が最も低い

これらの結果から、やりとり中の「説明」「相槌」「質問」の割合の変化に着目することですれ違い箇所を検出できる可能性、定期的に相手の理解や状況を確認することが円滑なやりとりにつながる可能性が考えられます。また、実験協力者の組み合わせによってすれ違い箇所に偏りがあることが分かりました。この理由として、お互いが共通して知っていると認識している情報を過大評価してしまったことで、やりとりが雑になったり勝手に解釈してしまったりして、すれ違いが多くなってしまったことが考えられます。

 

発表スライド

発表で使用したスライドです。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。

論文情報

論文はこちらにありますのでご興味のある方はどうぞ。

古市 冴佳, 中村 聡史. 待ち合わせの困難性を左右する場所の伝達と把握の難易度に関する検討, 情報処理学会 研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN), Vol.2022-GN-115, No.38, pp.1-8, 2022.

感想

前回に引き続き、オンラインでの発表となりました。直前まで対面で発表できる予定だったのですが、このご時世なので仕方がありません。私は淡路島で美味しい玉ねぎをたくさん食べることを期待していたので、名残惜しさからスライドに玉ねぎのイラストを追加してみました。(質疑の際にそのことを指摘していただけてとても嬉しかったです。)また行く機会があれば、次はたくさん食べたいと思います。

そして、今回が学生最後の研究会での発表となりました。大学院の2年間は研究会が全てオンラインでの参加となってしまいましたが、学部の2年間で5回もの研究会・国際会議に対面で参加することができ、多くの方と交流できたことは研究を進めるための糧となり、とても貴重な経験だったなと改めて感じます。

中村研究室での4年間、中村先生をはじめ卒業された先輩方、同期、後輩の皆さんにはたくさんお世話になりました。皆さんのおかげで、多くの楽しい思い出を作ることができ、また色々な面で成長することができたのではないかと思います。

これまで様々なところでお世話になった全ての方に、心から感謝しています。
本当にありがとうございました!

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