はじめに
こんにちは,中村研M1の重松龍之介です.
2025年12月9日〜12日にマレーシアのクアラルンプールで開催されたMMAsia2025にて
“Guiding Task Choice in Japanese Voice Interfaces through Vocalization Cost: Click-based vs. Voice-based Selection”
というタイトルで発表を行ってきましたので,ご報告をさせていただきます.
今回発表した研究は2023年に淡路島で開催されたHCI205で発表した内容を整理し,英語化したものとなります.あわせてご覧いただけますと幸いです.
研究概要
背景
皆さんは学生の頃,親から「勉強をしなさい」と言われ,嫌々机に向かった経験はないでしょうか?そのような時,なかなか勉強が捗らなかったことを思い出す人も多いと思います.
一方で,自らの意思で「勉強しよう」と決めてペンを持った時には,比較的集中しやすく,勉強も捗った経験もあるのではないでしょうか?
このように,人は課題に取り組む際,自ら選択した場合の方が集中しやすく,パフォーマンスも向上することが知られています.これは内発的動機づけと呼ばれ,学習や作業の質を高める要因です.一方で,複数の課題が提示された場合に,人は無意識のうちに簡単そうな課題や負担の小さい課題を選びやすい傾向があります.
そのため,内発的動機づけの効果を損なうことなく,選択者にとって有益な選択を自然に促すことが重要であると考えられます。
目的
『内発的動機づけの効果を損なうことなく,選択者にとって有益な選択を自然に促す』
このゴールを達成するために,本研究では音声インタフェースにおける発話コストに着目しました.
本研究の目的は,音声選択のインタフェースにおいて,発話に要する負担が選択行動にどのような影響を与えるかを明らかにすることです.
実験
実験では,比較手法としてマウスによるクリック選択を行う群を用意し,大学生・大学院生40名に参加してもらいました.
実験協力者は,画面上に表示された選択肢(タスクに取り組む上で意識する項目)から,クリックもしくは発話によって1つを選択し,その後ポインティングタスクに取り組みました.
選択肢には,以下の3つの異なる表現を付与しました.意味は同じですが,発話コストが異なるものです.
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簡単な表現:「できるだけ」
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やや形式的な表現:「可能な限り」
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長く複雑な表現:「やれる範囲で最大限に」
結果
1. 発話コストによる選択への影響
クリック選択では3種類の表現がほぼ均等に選択されたのに対し,音声選択では最も複雑な表現が有意に選ばれにくいことが明らかになりました.これは発話の負担が高い表現を無意識に避ける行動が生じたことを示唆しています.
2. 選択肢の位置による選択への影響
横並びに置かれた3つの選択肢のうち,左側に表示された選択肢が選ばれやすく,右側の選択肢が避けられる傾向も見られました.これは,クリック選択では見られず,音声インタフェース特有の現象であると考えられます.
これらの結果から発話コストや選択肢の配置といった要素が,人の選択を意図せず偏らせる可能性があることが示されました.一方で,これらを適切に設計することで,ユーザの内発的動機づけを保ったまま,より望ましい選択を促せる可能性も示されました.
発表スライド
論文情報
おわりに
初めての国際学会への参加ということもあり,出発前は緊張と期待の入り混じった気持ちでしたが,終わってみると非常に充実した,あっという間の1週間でした.
現地では,美味しい料理や壮観な街並み,歴史的な建造物に触れることができましたが,まだマレーシアの魅力を十分に味わい尽くせていないと感じています.機会があれば,ぜひまた訪れてみたいです.🇲🇾
論文執筆にあたりご指導いただきました中村先生をはじめ,学会参加にあたりお世話になった鳩貝くん,中川さん,そして関係者の皆様に心より感謝いたします.
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