こんにちは!
中村研B3の重松龍之介です.2023年11月21-22日に淡路島の淡路夢舞台国際会議場で開催された第205回HCI研究会にて発表をさせていただいたので,そのご報告をさせていただきます!
研究概要
先行研究
我々は過去に内発的動機付けに関する研究を行いました.その研究では,運転練習において意識することをクリックして選択する「クリック選択」と声に出して選択する「音声選択」では技能向上にどのような違いがあるかについて実験を行いました.その際に,クリック選択に比べて音声選択で大きな選択の偏りがありました.ここで我々は,音声選択でのみ選択の偏りが生じる要因があるのではないかと考えました.
この選択の偏りについて,音声選択でのみ偏りが起こる要因は選択肢に読み上げにくさが影響しているのではと考えました.読み上げにくさは漢字が多かったり,文字数が多いなどの表現の違いに左右されると考えられます.
ここで,本研究では音声選択において選択肢の表現が選択に与える影響を明らかにするため,選択肢の表現として「副詞的表現」に着目しました.
実験タスク
本研究ではタスク難易度を下げるために,運転練習の代わりにポインティングタスクを用いて実験を行いました.
タスク画面
このタスクはランダムな位置にランダムな大きさのターゲットが表示され,それを必要個数クリックしていくというものになります.
選択肢
選択画面における選択肢は3択とし,選択肢にはポインティングタスクを行う上で注意することを表示しました.
このタスクを行う上で注意する項目として以下の5つを用意しました.
- 速く
- 正確に
- 同じリズムで
- 円の中心を
- 移動を短く
そして本研究の大目的である副詞的表現として以下の3つを用意しました.
- できるだけ(口語的)
- 可能な限り(文語的)
- やれる範囲で最大限に(説明的)
これらの注意事項と副詞的表現を組み合わせた形(例:できるだけ円の中心を)を選択肢に表示しました.
選択方法の比較
副詞的表現による音声選択への影響を調査するために,比較対象としてクリック選択群を設けました.それぞれの選択している映像は以下のようになります.
クリック選択
音声選択
実験手順:選択→ポインティングタスクの順番で1人当たり20回行いました.
実験参加者:それぞれの選択方法において20人ずつ,計40名の大学生・大学院生
結果
副詞的表現ごとの選択率
クリック選択では「できるだけ」,「可能な限り」,「やれる範囲で最大限に」の順に少しずつ選択率が上がっているものの,大きな差はないことがわかります.
一方音声選択では「できるだけ」,「可能な限り」と「やれる範囲で最大限に」の間に大きな差があることがわかります
音声選択でのみ「やれる範囲で最大限に」の選択率が低くなったは,この表現が他の表現に比べて文字数が多く発声に時間がかかることが原因であると考えられます.音声選択では選択肢の内容を声に出す負担があるため,文字数の多い副詞的表現は読むことに時間がかかると無意識に認識され,選択率が減少した可能性が考えられます.
表示位置ごとの選択率
選択肢の位置ごとに選択率を見てみたところ,クリック選択では選択率に大きな差は見られませんでした.
一方音声選択では,左から順に選択率が高いという結果になりました.この結果に関して我々は,日本語の文字列の読み方によるものであると考えました.選択肢を選択する際,クリック選択では選択肢の内容を一語一句読まなくても選択することができます.しかし音声選択では声に出すため選択肢を読む必要があり,日本語は横書きのものを左から読むため,左から順に読んでいき,途中で選択するものを決めることがあるため,このような結果になったと考えられます.
他にも表現の組み合わせによる分析や,ポインティングタスクにおけるパフォーマンスの分析なども行ったので,詳細については下のスライドや論文情報をご参照ください。
発表スライド
論文情報
おわりに
今回は初めての学会発表でだったため不安なことでいっぱいでしたが,同行して下さった先輩方のおかげで無事に発表を終えることができました.本当にありがとうございました!
また淡路島を満喫してきました!特に玉ねぎが非常に甘くておいしく,たくさんの玉ねぎ料理を食べてきました!
最後になりますが,たくさんのサポートをして下さった中村先生,研究室の先輩方に心から感謝申し上げます.ありがとうございました!
ピンバック: 404 -中村聡史研究室