DEIM2022で「色覚特性によるゲームの有利不利の制御に向けた背景色を考慮したD型模擬フィルタを用いた実験による色の基礎検討」というタイトルでオンライン発表してきました&学生プレゼンテーション賞を受賞しました(藤原優花)

      2023/01/05

はじめに

中村研M1の藤原です。そろそろThe Tea Tokyoでパンケーキを食べたいです。

さて、2022年2月27日〜3月2日にオンラインで開催されたDEIM2022にて研究発表を行ったので、ご報告させていただきます。

研究概要

年々オンラインゲームの人気が高まっており、様々な人が娯楽として楽しんでいます。しかし、ゲームでは単純な練習量・技量ではなく、「聴力が弱いから敵の位置がうまく把握できない」「視力が悪いから敵と味方の判断する時間がかかる」などの形でアンフェアな状況が生まれていることがあり、特に「色覚多様性者」に着目しました。(図1)

図1 一般色覚者とそれぞれの色覚多様性者が見ている例 ©️ SEGA ぷよぷよ

色覚多様性者は色による情報の判断が難しくなり、一般色覚者と比べて反応速度が遅くなります。ゲーム制作側はその状況ではゲームを楽しめないと考え、色覚サポートを実装し、色覚多様性者が見えやすい状況を作っていますが、多くの場合は十分ではありません。そうした問題を踏まえ、私は一般色覚者と色覚多様性者のゲームバランスを平等にする方法の実現を目指して研究を進めています(図2)。

中でも今回は、背景色を考慮した両者間で識別しやすい色の調査を行いました。

図2 本研究の目的と立ち位置

過去の研究では、「彩度と明度の値に差がある」色の組み合わせが一般色覚者とD型色覚者にとって識別しやすいことがわかりました。

しかし過去の実験設計では背景色を白に固定していましたが、ゲームは背景色を含めて初めて成り立ちます。そこで本研究では、ゲームによく使用される「緑」「青」「茶色」「オレンジ」「灰色」の5色を背景色として追加して実験を行いました。

実験を行うにあたり一般色覚者と色覚多様性者との違いを分析する必要があるのですが、D型色覚者の方を多数集めて実験することは容易ではありません。また、今後様々な色覚タイプに対応していくことを考えた場合、集めて実験することは難しくなります。そのため、今回は過去の研究と同様に、一般色覚者を対象に実験できるようにするためのD 型模擬フィルタを利用して、実験を行いました。具体的には、D型色覚者の模擬的視覚を提示し(詳細は論文を参照下さい)、反応速度などの分析を行いました。

実際の実験画面が図3になります。選択肢の中で異なる色を「標的色」、選択肢の中の大半の色を「基本色」、背景の色を「背景色」と名付けます。実験では「標的色」を素早く、かつ正確に選択してもらい、選択するまでにかかった時間と正答率を分析対象としました。

図3 実験定時画面

本実験で使用した色の組み合わせや背景色、全体の結果は論文の方を参照ください。考察では「反応速度が同じ = 平等性が保たれる」という解釈のもと、両者にとって識別する時間の差がない色の組み合わせを抽出し、分析を行いました(図4)。

図4 両者にとって識別する時間の差がない色の組み合わせ

分析の結果、「背景色が明度と彩度の差が大きい色の組み合わせ」「基本色と標準色と背景色の明度の値に差がある色の組み合わせ」は一般色覚者にとってもD型色覚者にとっても識別する時間の差がない組み合わせになる要因であることがわかりました。つまり、注目したい色の明度が周りの色の明度と比べて値が高い場合,一般色覚者と色覚多様性者の両者にとって識別しやすい公平色になり、ゲーム環境にも適応することが可能であると考えます。

今後は以下の2点に着目し、研究を行っていく予定です。

  • 標的色や基本色の位置を動かした場合の実験
  • 識別しやすい色を使ってゲームの有利不利の制御が可能かどうかの検討

スライドと原稿

藤原 優花, 中村 聡史. 色覚特性によるゲームの有利不利の制御に向けた背景色を考慮したD型模擬フィルタを用いた実験による色の基礎検討, 第14回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム, 2022.

感想

今回もコロナの影響のため、オンラインでの発表になりました。名古屋行きたかった……近場ですし、コロナが落ち着いたら一人旅でも行こうと思います。

発表自体は慣れたもので、本番でもなんのトラブルもなく行えました。また、DEIM学生プレゼンテーション賞を受賞しました!自分は話すのが苦手なタイプだったので、この賞は自信になりました、ありがとうございます。原稿のチェックや発表練習をこまめに指導してくださった中村先生や先輩方に感謝いたします。

これからは修論に向けてより一層頑張っていきますので、温かく見守っていただけたら幸いです。

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