第175回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会参加報告(神山,高橋,福地,松井,山浦)

   

中村研究室修士1年の神山,松井,学部4年の福地,山浦,学部3年の高橋です.

2017年11月1〜2日に兵庫県淡路市夢舞台で行われた「ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(SIGHCI175)」に参加してきましたので,その中で気になった研究について報告をさせていただきます.また,SIGHCI175では修士1年の神山と学部3年の高橋が研究発表を行いました.こちらの詳細な発表内容については別途報告をさせていただきます.

会場となった淡路夢舞台

 

神山が気になった研究

良いスピーチのための表情筋を使った開口のセンシングと教示の基礎検討:西村 幸泰,橋田 朋子(早稲田大学)

良いスピーチかどうかは声の大きさや高さ,速さなどの言語的伝達能力と,表情やアイコンタクト,身振りなどの非言語的伝達能力の2つの側面から評価されます.過去のスピーチ支援研究ではこのどちらかの側面しか支援されていませんでした.そこで著者らはどちらの側面からもスピーチを評価するため,開口という動作に着目し,良い開口をしていれば良いスピーチができている,という定義をしました.その上で,広頚筋という首の側面の筋肉の隆起をフォトリフレクタでセンシングし,良い開口で良い母音の発音ができているのかを機械学習を用いて判断する分類器を作成しました.その結果,このシステムはニュートラルな表情時の母音発話よりも良い開口時での母音発話で高い認識率が得られました.自分自身があまり声が大きい方ではなく,プレゼンテーション中の発話に関して毎回苦労していたので,広頚筋を使いながら開口をして発話することで良い発声でのプレゼンテーションをしていけたらと思いました.

 

松井が気になった研究

電子回路図からARを利用した三次元水路図への自動変換システムの提案:安達 拓也,小島 有貴,濱川 礼(中京大学)

中学生の教育過程において「電流」は苦手かつ興味を引きにくい単元であると報告されています.また,電子回路を水の流れに例えて学ばせることで学習効果があがることも同様に報告されています.そこで著者らは電子回路図をスマートフォンのカメラを用いて撮影することで,自動的に二次元の電子回路図を三次元(AR)の水路図へ変換し,表示するシステムが提案されていました.実際に中学生に「電流」の単元を教えた経験のある教師を対象にアンケートを行うことで,提案システムによって中学生の「電流」に対する苦手意識の軽減,また,理解の促進が行える可能性が示唆されました.今回のHCIのテーマが「教えるインタラクション」だったのですが,既存の教育方法をARなどの技術によって再構成する発想がすばらしいと思いました.

 

福地が気になった研究

Wi-Fiチャネル状態情報を用いた屋内日常物の状態変化推定:尾原 和也,前川 卓也,松下 康之(大阪大学)

IoTの普及に伴い,屋内日常物の状態を推定する需要が増加しており,屋内設置型のセンサを用いた状態推定が多く行われてきました.しかし,この手法では状態を推定したい屋内日常物それぞれにセンサを取り付けなければならないという設置の手間が問題とされています.そこで著者らはWi-Fiが持つ物体との接触による波形の変化を利用し,屋内日常物の状態を推定する手法を提案し,精度の検証を行いました.その結果,Wi-Fiを用いることで屋内日常物の状態が既存の手法より高い精度で推定可能になることが明らかになりました.Wi-Fiのような一般に普及している機器に対してアプローチすることでIoTのような現在に即した技術研究を行っている点に興味を惹かれました.

 

山浦が気になった研究

体臭可視化ネックレス: 体臭教育のためのウェアラブルデバイス:玉城 絵美,本山 理梨子,西村 昭治(早稲田大学)

人間には嗅覚疲労という現象が起こります.これはある臭いを嗅ぎ続けているとその臭いを感じることができなくなってしまう現象のことであり,約2分間で同じ臭いを嗅ぎ続けると発生すると言われています.そのため,自分の臭いも感じられなくなるため体臭の対策が取れないという問題に繋がります.そこでこの研究では臭いが発生したタイミングを知らせてくれるウェアラブルデバイスを提案しています.このデバイスにより,ユーザは臭いの発生するタイミングを学習でき,体臭への対策が取れるようになります.実験結果では,ユーザが適切なタイミングを知ることができ,対策が取れるようになったということを明らかにしています.実際に体臭は臭ってると人に言われてから対策することが多いような気がするので,そのタイミングをユーザに学習させて,人に言われる前にできるようになるというのはとても画期的だと思いました.

 

高橋が気になった研究

実況lizer: スポーツ実況のメタファに基づいたライブ都市センサデータの可聴化手法の提案:井上 義之,  米澤 拓郎,  大越 匡,  中澤 仁(慶応義塾大学)

IoTの発達やスマート端末の普及によって,大量のデータをリアルタイムで収集,提示可能となりました.中でも,知的都市マネジメントの実現のために,収集した様々な都市データを可視化して行政職員に提示する手法などが利用されていますが,可視化だとユーザの視覚を専有してしまうために他の業務と並行して情報を伝えることが難しくなってしまっています.そこで著者らは,データを音声化し,重要な個所の音の高さや速さを変えることでスポーツ実況のようにユーザに提示する手法,実況lizerを提案しました.評価実験の結果,特に軽作業時において可視化手法より認知負荷を抑えつつ,都市状況の理解を促す事ができる可能性が示唆されました.今回自分が発表した研究が視覚に関するものであったこともあり,視覚と聴覚それぞれの特徴を明確にしているこの研究は興味深く,参考になりました.また,実際に実況をされている方の研究・登壇という点も,説得力があり面白い発表でした.

 

全体の感想

UBI研究会との合同研究会だったこともあり,あまり馴染みのない分野の興味部会研究発表も多く聞くことができました.また,ウェスティンホテル淡路に宿泊させていただいたのですが,設備などがとても整っていて非常に快適な時間を過ごすことができました.淡路島から見える日の出や海なども素晴らしく,参加者一同とても印象に残る研究会となりました.

日の出がとてもきれいでした

 

神山・高橋の発表も無事に終了し,たくさんの質問やコメントをいただくことができました.これも発表練習や実験に協力してくださった方のおかげです.ありがとうございました.次の投稿に向けて頑張ります.

おつかれさまでした

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