HCS研究会で「Webブラウジング実験環境統制システムの実装と待機画面の表現が離脱に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました(三山貴也)

      2024/05/24

はじめに

中村研究室B4の三山貴也です。

2024年5月13日、14日に沖縄産業支援センターで開催されたヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)にて研究発表を行いましたので、ご報告させていただきます。

今回は「Webブラウジング実験環境統制システムの実装と待機画面の表現が離脱に及ぼす影響の調査」というタイトルで発表してきました。

研究概要

この研究は、HCS2023年9月研究会で発表した研究の続きとなりますので、よろしければそちらも併せてご覧ください。

ブラウジングやネットサーフィンをしているとき「読み込みが遅い」と感じたことがあるかと思います。Webページを閲覧するユーザは情報をスピーディに入手したいと思っているため、読み込みが遅いとユーザに悪い印象を与え、ユーザが離脱する(他のページに移動したりブラウザを閉じたりする)可能性も高くなります。そのためWebページの表示速度を改善することが求められるのですが、ここでは客観的な表示速度(実際に何秒かかったか)に加えて主観的な体感速度(ユーザが何秒かかったと感じたか)を改善することが重要です。ここで、主観的な体感速度を改善するためには、スロバー(スピナー)やプログレスバーといった進捗インジケータによって処理状況をユーザに通知することが効果的だとされています。

そこで今回の研究では「Webページの読み込み中に表示する進捗インジケータの種類によってユーザの離脱行動が変化するか?」という調査を行うことにしたのですが、視覚刺激はその提示される大きさにより影響度が大きく変わるので、大きさをある程度統制して実験しないと、何の結果が得られているのかわかりません。実際、私がこれまで実施してきた実験はクラウドソーシング(インターネットを通じて不特定多数の人に依頼)を利用して実施したのですが、このサービスを利用すると大規模な実験をスピーディに実施できる一方で、参加者によって環境がバラバラなので実験環境統制が難しく、参加者によって使用しているディスプレイのサイズや解像度が異なるため表示サイズがバラバラになってしまい、実験で提示する刺激に対する感じ方やユーザ体験が変わってしまうという問題がありました。このようなことから、実験自体が環境に影響を受けてしまう可能性があります。

そこで今回の研究では「クラウドソーシングを利用する実験のための環境統制システム」を実装して、これまで紹介してきた実験を行いました。ここでは、表示サイズを統制するためにクレジットカードを使用した手法を採用し、実験開始前に実物のカードとカード画像の大きさを合わせるタスクを実施することで、画面解像度(1mmあたり何pxか)をもとに表示サイズを統制しています。

また、フルスクリーン表示にしたうえでブラウザを模したインタフェース上でブラウジングを行うことによってブラウジングに関する実験の環境統制を目指しています。ここでは、フルスクリーン表示によって周囲に何も表示しない状況を作り出すことでながら作業を防ぎつつ、表示サイズの統制をもとにインタフェースのサイズも変更することでブラウザのウインドウサイズも統制します。これによって、ノートPCや外部ディスプレイといった様々な環境でも実験用のページを同じサイズで表示することができます。さらに、インタフェース内でブラウザ操作(戻る・進む・リロード・リンクのクリックなど)をできるようにすることで、ページ遷移の方法も統制することができます。

さて、この実現したシステムを用いて、今回は読み込み中に表示される待機画面として、スロバー条件、プログレスバー条件、プログレスバー+視覚刺激条件の3種類を用意して比較実験を行いました。視覚刺激というのは、過去の研究で体感時間の短縮効果が認められたものになっています。

実験では、ページ遷移をしながら情報探索を行うタスクを実施しました。ここでは、各ページにアクセスすると遅延が発生して待機画面となり、読み込みが完了するとページの内容が表示されます。このページ遷移で、読み込みが完了する前に戻るボタンがクリックされた場合、離脱したと判定するようにしました。

実験はYahoo!クラウドソーシングを利用して、PCを対象として実施しました。

まず、クレジットカードを用いたサイズ調整でどのような操作が行われているかを分析しました。クレジットカードを使用するサイズ調整タスクでは調整結果が一定の範囲に分布していたので、多くの実験参加者は表示サイズの統制ができていたと考えられます(スケールとはカード画像の初期サイズに対するサイズ調整結果の比率)。一方で、実験の指示を守らずにサイズ調整を全く行わなかった参加者も一定数存在したため、そのような参加者の行動を分析するために、参加者をサイズ調整群とサイズ未調整群に分けてページの滞在時間について分析しました。その結果、サイズ未調整群では平均ページ滞在時間が短い傾向がみられ、指示を守らない参加者は比較的雑にページ遷移を行っていた可能性があります。このように、クラウドソーシングを利用した実験では指示を守らない参加者が存在し、それによって実験結果も影響を受けてしまう可能性があるため、こうした仕組みは重要であると考えます。

また、サイズ調整群に絞って実験結果を分析したところ、スロバー条件ではプログレスバー条件に比べて離脱率が高い傾向がみられました。一方、プログレスバー条件とプログレスバー+視覚刺激条件の間に大きな差はみられませんでした。

ここで離脱が発生するタイミングついて分析を行った結果、スロバー条件では離脱タイミングが分散しており、読み込み完了まで残りわずかで離脱しているケースもみられました。一方、プログレスバー条件では読み込み開始から3秒以内に発生した離脱が多い結果となりました。下のグラフは、縦軸が「ページに設定された読み込み時間」、横軸が「読み込み開始からの経過時間」となっていて、各点は「ページの読み込み時間が〇秒のとき、読み込み開始から△秒で離脱した」ということを表しています。

以上のことから、スロバーでは処理状況が可視化されておらず、ユーザが読み込み時間を予測できないため離脱が発生しやすいと考えられます。また、この実験で使用したプログレスバーが一定速度で進むものであり、ユーザが読み込み時間を簡単に予測できるため離脱が発生しにくいと考えられます。

今後は、速度変化や途中停止といった動きを含むような実際の環境に近いプログレスバーを使用した実験を行う予定です。また、今回はPCを対象として実験を行いましたが、スマートフォンを対象とした実験も行う予定です。さらに、今回実現した実験環境統制システムの改良を行い、このシステムをベースとして様々な実験を実施できるような仕組みを実現する予定です。また、研究室内で取り組んでいるクラウドソーシングを利用した実験にも関わることができるのではないかと思っています。

 

発表スライド

論文情報

三山 貴也, 中村 聡史, 山中 祥太. Webブラウジング実験環境統制システムの実装と待機画面の表現が離脱に及ぼす影響の調査, 信学技報, Vol.124, No.19, HCS2024-17, pp.85-90.

おわりに

自分にとっては2回目の発表で、前回よりも学会の規模が大きかったので少し緊張しましたが、練習通りに発表できたと思っています。また、他大学の学生と交流する機会もあり、研究を頑張っている同年代の方々から良い刺激をもらいました。

また、自分にとって初めての沖縄で、海がきれいで、沖縄でしか食べられないような料理も食べることができ、また行きたいと思える素晴らしい場所でした。個人的には沖縄そばがとても美味しかったです。

最後になりますが、ご指導いただいた中村先生、様々なアドバイスをいただいた研究室のみなさんに感謝申し上げます。ありがとうございました。

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