第206回HCI研究会で「化粧フローチャートに基づく美容系YouTuberの動画推薦手法の検討」というタイトルで発表してきました(髙野沙也香)

   

はじめに

こんにちは,中村研究室M1の髙野沙也香です.

新年を迎え,娘が人生2回目の年女ということで,母がなんとも言えない龍の置物を買ってきました.あれは本当に龍なのか?と家族会議が行われる日々です.皆様いかがお過ごしでしょうか.

さて,2024年1月15日・16日に開催された,第206回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「化粧フローチャートに基づく美容系YouTuberの動画推薦手法の検討」というタイトルで発表しましたので,そちらについて発表報告をさせていただきます.

 

研究内容

化粧をされる皆様,InstagramやYouTubeなどのSNSで新しいコスメや化粧法について検索したことはありませんか?

そして,新しい化粧法を知り「いいかも!」と思って1度は試したけれど,それ以降その工程を何度も忘れてしまって,結果的に自身の化粧工程が変わらない…なんてご経験はございませんか?

私はこの原因の1つに,自身の化粧工程と取り入れたい化粧工程の類似の低さがあると考えました.

化粧は日々繰り返し行うルーティーンのようなものです.そのため,ある日からいきなり全く違う工程をこなそうとすると,学んだ工程を覚えきれない&自身の工程として定着しないという事態が発生するのではないかと思いました.

しかし,現状化粧工程の類似度に基づいて化粧情報(化粧のチュートリアル動画)を推薦するサービスは無く,SNS上に存在する膨大な情報の中からその1つ1つを見て確認をするしかありません.

 

そこで私は,化粧工程の類似度に基づいた化粧のチュートリアル動画推薦サービスの実現を最終目的とし,自身の研究を以下の3つのステップに分けてこれまで取り組んできました.

  1. 個人の頭の中にしかなかった化粧工程をフローチャートで表し,情報として扱えるようにする
    →HCI200:「Make-up FLOW: 個人差・状況差の大きい化粧工程の構造化と忘れやすさに関する調査
  2. 他者間の化粧フローチャートの類似度算出手法を検討する
    →HCI204:「化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定
  3. 化粧フローチャートの類似度に基づいて,化粧のチュートリアル動画を推薦する手法を検討する
    →HCI206:「化粧フローチャートに基づく美容系YouTuberの動画推薦手法の検討」 NEW!

ステップ1・2についてはこれまでに取り組んでおり,今回はステップ3の推薦手法の検討を行いました.

 

まず,今回は推薦対象を美容系YouTuberの化粧のチュートリアル動画として推薦実験を行うため,美容系YouTuber53名の計103本の化粧動画をフローチャート化しました.

次に,実験参加者と103本の化粧動画との化粧工程の類似度を2つの類似度算出手法(標準化レーベンシュタイン距離・N-gram頻度に基づいたコサイン類似度,詳細は「化粧フローチャートに基づく大学生・大学院生の化粧類似度推定」へ)で算出しました.

そして,実験参加者ごとに各類似度算出手法において類似度が高い動画・やや低い動画を2本ずつ,計8本推薦し,各動画に対してどの程度参考になったか?などのアンケートについて回答してもらいました.

得られたデータをもとに,化粧工程の類似度に基づいた動画推薦の精度を検証するため,類似度の高さと動画の評価の高さの関係について相関係数を求めました.

つまり,Q.化粧工程の類似度が高い動画は,その評価も高くなるのか?ということを計算しました.

その結果,以下に示すように,N-gram頻度に基づいたコサイン類似度よりも標準化レーベンシュタイン距離の方が値が大きいものの,共に無相関(関係が見られない)となりました.

化粧工程全体を用いた類似度算出による相関係数の結果

 

ここで,化粧工程の前半はベースメイクや眉メイクなど多くの人に共通して参考になる工程が多いのに対して,後半はアイメイクなど多様な色味を使って様々な雰囲気を演出することができる工程が多くなっています.そのため,化粧工程の前半・後半に分けて類似度を算出し,相関係数を求めたところ以下のような結果になりました.

化粧工程の前後半に分けて類似度を算出した場合の相関係数

 

表より,化粧工程の前半のみを用いて標準化レーベンシュタイン距離により類似度を算出した場合に,相関係数が最も高い値となることが分かりました.

しかし,相関係数は低いままとなっており,推薦精度は良くありません.この原因の1つに,動画の評価に関わる要素の多さが考えられます.

実際に,実験参加者に動画が参考になった/ならなかったという評価をした理由を調査したところ,以下のような理由が挙げられました.

  • 動画が参考になった理由
    - 自分が使ったことないアイテムばかりだった
    - うまくメイクをするコツが説明されていた
  • 動画が参考にならなかった理由
    - 分かっていることや,自分に合わない内容があった
    - 私のメイクの系統と違うと思った

このように美容系YouTuberの方の動画を評価する際には,化粧工程の類似の他に様々な要因が関わってくることが分かりました.

そのため,今後は化粧工程の類似度算出手法を改善すると共に,複数情報を組み合わせた類似度算出手法について検討することで推薦精度の向上に努めたいと考えています.

そして,将来的には類似度に基づいて他者の化粧のチュートリアル動画を推薦・検索できるシステムを実装し,化粧のバリエーション増加を支援したいと考えています.

 

発表スライド

化粧フローチャートに基づく美容系YouTuberの動画推薦手法の検討 by @nkmr-lab

 

論文情報

髙野 沙也香, 中村 聡史. 化粧フローチャートに基づく美容系YouTuberの動画推薦手法の検討, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2024-HCI-206, No.9, pp.1-8, 2024.

 

感想

温かい紅茶を水筒に入れると味が変質せずにずっと美味しいまま!香りも良くてQOL上がる!!と今年初めて気づき,それから日々紅茶を飲み続けている髙野です.

今回は沖縄に行ってきました!冬の沖縄は初めて行きましたが暖かくて過ごしやすくて…最終日に極寒の東京に帰るのが億劫になるほど快適でした.

旅の初日は,先輩の運転する車に乗せていただき古宇利島に行きましたが,なんといっても海が綺麗で最高でした!!透明度の高い澄んだ海に太陽の光が反射してキラキラしていて…見ているだけで癒されました.また,手作りアクセサリーのお店では素敵な指輪とも出会うことができました!

2日目・3日目は終始HCI学会に参加をしていましたが,多様なテーマに触れ,そうそうたる教授陣の鋭い質疑を拝見することができ,非常に学びの多い2日間でした.私にはない発想をもとに研究をされている方がたくさんいらっしゃって,自身もこのような既存の枠にとらわれない面白い発想ができるようになりたい,そのために引き出しを増やさなくては…と身が引き締まる思いでした.

最終日はウミカジテラスに行き美味しいものを堪能した後,琉球ガラス体験をしました.この4日間で食に景色に体験に…と大満足の旅でした!!冬の沖縄また行きたいです♪

最後に,HCI206で発表できるまで支えてくださった,中村先生および中村研究室の皆様本当にありがとうございました.

次回も美味しい・楽しい・最高!がたくさん味わえる旅であることを祈って,今回の旅の締めくくりとさせていただきます.

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