第196回HCI研究会で「実環境を想定したタスク並列提示による負荷軽減手法の検証」というタイトルで発表してきました(松山直人)

   

はじめに

こんにちは!中村研究室M2の松山です。

冬も本格化してきてだいぶ寒くなりましたね。だいぶ前の記事でヒートテックには屈しないという文言を書いた覚えがありますが、今年は早々に屈しました。寒すぎる。ヒートテックLOVE。生まれてきてくれてありがとう。

それでは、2022年1月11日〜12日に石垣島とオンラインでハイブリッド開催された第196回HCI研究会にて、「実環境を想定したタスク並列提示による負荷軽減手法の検証」というタイトルで発表しましたので、そちらの発表報告をさせていただきます。

研究概要

みなさんはタスクを後回しにしてしまうことはありますか? 僕はよくタスクを後回しにしてしまい、溜まったタスクを慌ててやったり、消化するのを諦めてしまうことが多いです。そのため、人々はタスク管理ツールを使ってタスクの遂行を行っていますが、リマインドするだけではタスクへのモチベーションを向上させられるとは言い難いです。
そこで私はこれまでに、こうした問題を解決するため、人々が認知的負荷の低いタスクから取り組むことに着目し、遂行すべきタスクよりも負荷の大きいタスクを並列提示することで、遂行すべきタスクの負荷を小さく感じさせる手法を提案しました。また、提案手法によるタスクへの取り組み度合いや遂行へのモチベーションが向上するかについて実験を行いました。実験の結果、並列提示タスクの負荷が遂行するタスクの負荷より大きくなるほど、遂行率や遂行への意思が向上する様子がみられました。詳しくはこれらの記事をご覧ください。

第192回HCI研究会で「負荷の高いタスクの並列提示によるタスク遂行への負荷軽減に関する手法の提案」というタイトルで発表してきました(松山直人)

第194回HCI研究会で「負荷の高いタスクの並列提示がタスク遂行の意思に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(松山直人)

しかし、これらの研究ではタスクの選定をすべて著者が行っており、実験協力者が実際に抱えているタスクではありませんでした。そのため、実験協力者にとって必ずしも遂行する必要がないタスクも含まれているという問題がありました。

そこで本研究では、実環境を想定し、実験協力者が実際に抱えているタスクを対象に実験をし、提案手法の有用性について検証を行いました。

実験

実環境におけるタスクに対して提案手法を用いることで遂行率が向上するかを目的に、提案手法とベースライン手法におけるタスクの遂行率を比較する実験を行いました。
また、本実験を行うにともない、タスクと時刻を手動で登録し、指定の時刻に通知を行う実験用プロトタイプシステムをiOSアプリケーションとして実装しました。

実験に用いた手法のイメージ

実験の主な流れは以下の通りです。

  1. 実験用プロトタイプシステムをインストールする
  2. システムに遂行タスクとそれを行う時刻を設定する
  3. タスクの通知を確認する(このとき、ベースライン手法と提案手法のどちらかがランダムに提示されている)
  4. タスクに取り組む
  5. 30分後に通知されるタスクの実施有無に関するアンケートに回答する
  6. 2~5を10日間、登録したタスク分だけ繰り返す

タスク登録画面

タスクの実施有無に関するアンケート

また実験後には、登録したタスクと並列タスクの負荷(-3:小さい〜+3:大きい)や、登録したタスクの緊急性(0:締め切りがなかった〜1:締め切りがあった)などについて回答してもらうアンケートを実施しました。

結果・考察

以下の図は、主観的負荷の差(遂行タスクの負荷から比較タスクの負荷を引いたもの)ごとの遂行率についてのグラフです。赤色の横線はベースライン手法の平均遂行率です。これより、これまでの研究で確認されていた並列タスクの負荷が遂行タスクの負荷より大きくなるにつれて、ベースライン手法より遂行率が高くなる様子は確認されませんでした。

主観的負荷の差ごとの遂行率に関するグラフ

また、緊急性の有無ごとに主観的負荷の差ごとに遂行率を算出したグラフが以下になります。これより、件数は少ないものの緊急性があるときは主観的負荷の差が-5、-3、-1の時にベースライン手法よりも遂行率が向上する様子が確認されました。なお、緊急性がないときは主観的負荷の差が+3の時のみベースライン手法よりも遂行率が向上していましたが、ほぼ横ばいでベースライン手法と同じ遂行率でした。

緊急性の有無ごとにおける、主観的負荷の差ごとの遂行率に関するグラフ(左があり、右がなし時)

これまでの研究と異なる結果がでた要因として、実験後アンケートの感想や緊急性なし時の主観的負荷の差ごとの遂行率より、実験協力者が普段から抱えている緊急性のないタスクは手法によらずそもそも遂行する可能性が高いと考えられます。また、緊急性あり時の主観的負荷の差ごとの遂行率より、緊急性がある時において提案手法の効果があらわれる可能性が示唆されました。しかし、こちらは件数が少ないため、今後調査していく必要があります。

なお、並列タスクの馴染み度合いが遂行率に影響した可能性も考えられるため、並列タスクの馴染み度合い(0:馴染みのない,1:少し馴染みのある,2:とても馴染みのある)について追加でアンケートを行いました。その結果、件数は少ないものの、4人の実験協力者において馴染み度合いが高い時の方が遂行率が向上している様子が確認されました。

これより、実際に自分が抱えているタスクや馴染みの深いタスクを提示することで提案手法による効果が得られる可能性が高いと考えられます。なお、これらについてはこれまでの研究(HCI192、HCI194にて発表)においても、実験協力者の感想として得られていました。

実験協力者ごとにおける、並列タスクの馴染み度合いごとの遂行率

これらの結果より、過去の自分のタスクや他者の似たようなタスク等を長期的に集め、適切な並列タスクを提示できるような仕組みを実現することで、提案手法の有効性を十分に活かしたシステムの構築ができると考えられます。

スライド

こちらが発表で使用したスライドです。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。

論文情報

松山 直人, 中村 聡史. 実環境を想定したタスク並列提示による負荷軽減手法の検証, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-196, No.16, pp.1-8, 2022.

おわりに

まず、COVID-19が流行しておりさまざまな制限がかけられている状況にもかかわらず、ハイブリッドによる発表の場を設けていただいた運営の方々に感謝申し上げます。しかし私はオンライン、、、しくしく。

本テーマでの発表はこれで3本目になりますが、毎回たくさんのご指摘・ご意見をいただけてとても有り難かったです。これらをふまえて修士論文の執筆もラストスパートかけていこうと思います!

そして今回の発表が(おそらく)学生最後の学会発表となります。昔の記事を見て、「そういえばこんなことやってたな〜」や「HCI研で4回も発表したんだな〜」など、とても感慨深い気持ちでいっぱいです。強いて言えば、COVID-19により現地での発表が1回しかできなかったことが心残りです。後輩にはこんな思いをしてほしくないので、どうか皆様COVID-19の終息のために尽力してもらえればと思います。

最後になりますが、4年もの間、研究をはじめ原稿や発表練習等でサポートしていただいた中村先生、中村研究室の1期生〜7期生の方々、実験に協力してくださった総合数理学部の学生方、18年間にもおよぶ学生生活を支えてくれた家族に、この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。

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