第196回HCI研究会で「カウントダウン提示時の残タスク数がタスクの処理速度に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(南里英幸)

   

はじめに

こんにちは! 中村研究室M2の南里英幸です!

この間東京で雪が10cm以上積もるようなことがあり、久々に東京で雪景色がみられました!

何故か、嬉しさよりも億劫さを感じました。

さて、1月11日、12日に開催された石垣島・オンラインのハイブリット開催されたHCI研究会でオンライン発表を行いましたので、その報告をさせていただきます。

研究内容

皆さんは、タイムプレッシャーというものを知っていますでしょうか。

タイムプレッシャーとは、「時間内に終わらせなければいけない」という圧迫感から生じる心理的ストレスのことです。例えば、クイズで制限時間が表示されているとき、残り時間が少なくなってくると非常に焦った経験はないでしょうか。その時に感じる圧迫感のことをタイムプレッシャーと言います。

小川らの研究によるとタイムプレッシャーにおける意思決定で、強いストレスや疲労感を覚え、注意力を欠き、より単純な推論策をもって思考することが分かっています。また、タスクの締め切り直前になるとそのタスクに対し意欲がわく締め切り効果の存在が知られていることから、タイムプレッシャーによって行動に変化をもたらすことが分かっています。

これまでの研究(レポジトリ記事)で、タスク中にカウントダウンを提示することでタスクを促進する手法を提案し、採点タスクを題材に提案手法を含めた3手法を用いて比較検証しました。

その結果、手法間に差がないことが明らかになりました。この理由として、カウントダウンを提示した時のタスクの進行状況によって行動が変化した可能性が考えられます。

この実験から以下のような関係性がある可能性が示唆されました。

  1. 残りのタスク数がカウントダウンに間に合う時、タスク速度が上昇
  2. 残りのタスク数がカウントダウンに間に合わない時、タスク速度が減少
  3. カウントダウンに合わせてキリ良く終わらせようとする

そこで本研究は、残りのタスク数がカウントダウン内に「間に合うか間に合わないか」によってタスクに対する行動が変化する関係性を詳しく調査します。

具体的には、以下の4つの状況を用意することで、先行研究の関係性を明らかにします。

タスク設計

以前の研究と同様に、タスク内に区切りのあるタスクであることが望ましいと考えられ、以前の研究で使用したタスクよりも認知的負荷の高いタスクが望ましいと考えられます。

そこで、区切りのあるタスクであり、以前の研究より認知的負荷の高いタスクとしてマス計算タスクを採用しました。

そして、ランダムな2桁の自然数同士の加法演算するものとしてマス計算タスクシステムを実装しました。

タスクの風景は以下の動画の通りです。

  • 赤枠に囲まれた部分の計算をしてもらうタスクで、数字キーやテンキーで数値を入力することができ、エンターキーで回答を確定することができます。
  • 回答を確定すると、次のマスに移動します。
  • 回答を確定する前であれば、バックスペースキーで修正することができます。
  • 全てのマスが埋まると自動的に次のページに移動します。

実験にあたって実装したシステムは以下の通りとしました。

  1. 検証の妨害の恐れのあると考えられる要素の除外
    • 51以上の自然数(演算結果が3桁になる可能性があるため)
    • 10の倍数(演算が非常に簡単になってしまうため)
  2. 演算する場所はシステム側でランダムに指定する(前後関係で演算結果が分かってしまうため)
  3. 30秒のカウントダウン機能(以前の研究と同様)
検証のためのカウントダウンについて

実験目的を達成するためには以下の状況を作る必要があります。

  • 明らかに間に合わない条件(無理条件)
  • 少し頑張れば間に合う条件(気合条件)
  • 自身の能力と同じ条件  (平均条件)
  • 気を抜いても間に合う条件(余裕条件)

能力差を考慮し、残りのタスク数に対してカウントダウンを提示するタイミングを決め、仮想的に状況を作ります。

そのため、各条件を再現するための倍率を決める必要があります。

各条件を再現する倍率を決めるための予備実験を実施した結果、

  • 無理条件:2.0倍
  • 気合条件:1.2倍
  • 平均条件:1.0倍
  • 余裕条件:0.8倍

としました。

本実験

先述のタスクシステムを用いて、大学生20名を対象に実験を行いました。

順番をランダムに4条件を2回ずつの計8タスク実施してもらいました。

タスクは、実験協力者のタスク速度を計るための計測時間を6分間とし、計測時間が終了した後に次のページに移動した時に、条件ごとのタイミングで30秒間のカウントダウンが表示されます。

カウントダウンを提示するタイミングについては以下の通りです。

実験結果

30秒当たりの平均タスク量を正規化し、全体の平均を求めたものです。

結果として、気合条件において最もタスク促進効果があることが分かりました。

カウントダウン前後のタスク精度の比較したものです。

どの条件においてもタスク精度が低下し、特に余裕条件において最も低下することが分かりました。

30秒当たりの平均タスク処理量の変化率の全体の平均を求めたものです。

分散分析を行った結果、有意差が認められ(p<0.05)、Tukey法の多重比較を行った結果、気合条件と余裕条件において有意差がある(p<0.05)ことが認められました。

考察

すべての条件において、タスク促進効果があることが明らかになりました。

「ここまで終わらせたいというような目標ができる」という意見から、カウントダウンによってタスクの終わりが提示され、目標勾配効果によりタスク促進効果があると考えられます。

また、条件によってタスク促進効果が変化しました。

「マス目の埋まり具合で急ぎの度合いが変化した」「埋まりそうなときは少し早く、全然埋まっていないときはより注意深くやる」といった意見から、埋まっている状況によって行動が変化したと考えられます。

このことから、以前の研究と同様の結果があることが明らかになりました。

各条件についてみていくと、

  1. 気合条件:最も促進効果があることが明らかになった
    • タスク速度を上昇すれば間に合いそう→カウントダウンが終わるまでにキリ良く終わらせようとして、タスク速度を上昇
  2. 平均条件:気合条件と比べ促進効果が弱まった
    • 通常通りに実施していれば間に合いそう→気合条件と比べ促進効果が弱まった
  3. 無理条件:気合条件と比べ促進効果が弱まり、変化率の分散が最大になった
    • 大きく2通りの様子が観察された
      • 間に合わないと感じた→タスク速度が大きく減少
      • 間に合わせようとした→タスク速度が多く上昇
  4. 余裕条件:最もタスク促進効果が弱かった
    • 集中してやらなくても、間に合う状況→最も促進効果が弱まった

タスク精度について、カウントダウンが提示されることでタスク精度が低下しました。

Mooreらによると「精度よく実施するためには速度を落とす、速度高く実施するためには精度を落とす」というトレードオフの関係があることが分かっています。

このことから、カウントダウンに間に合わせようとして、タスク速度が上昇しタスク精度が低下したと考えられます。

気合条件に関しては、タスク速度が最も上昇したため精度が低下したと考えられます。

一方で余裕条件においてもタスク精度が最も大きく低下しました。この理由として、余裕でカウントダウンが終わるまでにタスクを終えることができるため集中力が切れてしまい、精度が低下したと考えられます。

以上のことから、間に合うか・間に合わないかによってタスク速度や精度が変化すると考えられます。そのため、こういったカウントダウンを途中提示するような手法は単調かつ長続きしにくくあまり精度を求められないタスクへの応用が考えられます。

今後の展望としては、区切りがあるが、時間内に実施できるタスク量が推定しにくいタスクや区切りのタスクへの促進効果の有無について検証していきたいと考えています。また、今回使用した倍率について、気合条件と無理条件の間にマージンがあります。その間の倍率に関して、どの程度促進効果があるのか検討してきたいと考えています。

 

スライド

 

論文情報

南里 英幸, 中村 聡史. カウントダウン提示時の残タスク数がタスクの処理速度に及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-196, No.20, pp.1-8, 2022.

 

感想

前回に引き続きオンライン発表でした。

本来は石垣島に行く予定でしたが、某ウイルスの影響を鑑み自粛しました。

最後の学会だったので、せっかくだし行きたかったですが残念です。

泡盛飲みたかった…。

まもなく卒業を控えてますし、修論周りもケリをつけないといけないので、気を引き締めて残りの院生生活を最後まで走り切りたいです。

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