第191回HCI研究会で「文字形状の違いが男女の顔と名前の記憶に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました(清水亜美)

      2023/01/05

はじめに

本年度,中村研に配属されましたB3の清水亜美です.

2021年1月28日・29日にオンラインで開催されたHCI研究会で「文字形状の違いが男女の顔と名前の記憶に及ぼす影響」というタイトルで発表してきました.その報告をさせていただきます!

 

研究概要

皆さんは人の顔と名前を覚えることは得意でしょうか?

私はとても苦手です.

私と同じように苦手と回答する人が2017年のしらべぇの調査で57%ということがわかりました.また,名刺や選挙ポスターでは名前を覚えて覚えてもらうためか,様々な文字形状で名前が書かれています.

私はどういった文字形状で書かれれば自分の名前を覚えてもらえるんだろうか(また,どういった文字形状で人の名前を書けば覚えることができるんだろうか)という思いから,どの文字形状が最も記憶に残りやすいか研究することにしました.

女性の顔画像を用いた先行研究では,「(女性的な印象のMS明朝に比べ)男性的な印象のMSゴシックが名前を記憶できている」という結果が出ました.これは,女性の顔画像に対して男性的な印象の文字が違和感に感じたため,記憶に残ったのではないかという仮説を立てました.また,「女性の方が男性に比べスコアが高い」という結果が出ました.これは,女性の顔画像に対して女性が親近感を感じたため,記憶に残ったのではないかという仮説を立てました.

そこでこの仮説を検証するために,今回は男性の顔画像も用いて実験しました.さらに,先行研究ではMSゴシックとMS明朝と手書き文字2種を用いて実験していました.しかし,手書き文字2種は女性が書いたものであったため,本研究では男性が書いた手書き文字も加えて影響があるかについて実験を行いました.さらに,こうした記憶実験がクラウドソーシングでも可能かどうかを確かめるために,クラウドソーシング上でも実験し,検証しました.

実験室内では,ミスター・ミスコレクションの出場者の顔画像と以下の文字形状(手書きAは女性が書き,手書きBは男性が書いた)で書かれた名前のペアを8組覚えてもらいました.これを1つのタスクとして1人4タスク行なってもらいました.つまり,1人あたり4タスクx8組で32人の顔と名前を覚えてもらったことになります.

実験の結果,実験室内の実験で「男性の顔と名前の場合に女性的な印象のMS明朝,女性の顔と名前の場合に男性的な印象のMSゴシックを用いると記憶に残りやすい」ことがわかりました.これは,顔画像の性別と文字の印象の違和感がある方が記憶に残りやすいのではないかという仮説を裏付ける結果となりました.

一方クラウドソーシングでの実験では,スーツをきた男女の顔画像と先ほど提示した文字形状で書かれたペアを8組覚えてもらいました.実験室内で行なった実験は,1つのタスクに提示される顔画像は男性か女性のどちらかでしたが,クラウドソーシングでは,1つのタスクに男女の顔画像を交互に提示しました.その結果,クラウドソーシングの実験では,MS明朝もMSゴシックも女性の顔画像の時にスコアが高いという実験室内の実験と異なる結果となりました.これは色々な要因が考えられるのですが,画像が統制できていなかったことや,順番が固定だったこと,1つ前に提示された顔と名前を覚えることが出来なかった影響があとに出てしまったのではないかなどが考えられます.

一方,「男性の顔画像・女性の顔画像に対しては男女に違いはない」ことがわかりました.これは,顔画像の性別に対して,親近感を覚えた方が覚えやすいのではないかという仮説を裏付けることはできませんでした.

さらに,「男性が書いた手書き文字を加えても,大きな影響は見られない」ことがわかりました.ただ,今回用意した男性の手書き文字をもっと荒々しい感じの文字にしたりすると違った結果が得られるかもしれないと思っています.

今回の実験は,名前の読み方が難しかったり読みにくい場合は我々が選定した名前に変更しましたが,その選定方法を今後は客観的なものにしていく予定です.また,クラウドソーシングで使用したスーツの画像のなかで顕著にスコアがよかったものの中に,1つだけグレーのスーツを着ていた画像がありました.このスーツの色のせいで記憶に残りやすかったのではないかと考え,今後は画像の選定も統一していく予定です.さらに,スコアの平均点が半分以下とかなり低かったのでもう少しタスクの難易度を下げたものに変更する予定です.

 

スライドと原稿

今回,発表で使用したスライドと原稿はこちらです.

清水 亜美, 伊藤 理紗, 中村 聡史, 掛 晃幸, 石丸 築. 文字形状の違いが男女の顔と名前の記憶に及ぼす影響, 情報処理学会 ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2021-HCI-191, No.16, pp.1-8, 2021.

感想

今回初めての学会発表でとても緊張しましたが,先輩や先生,同期の皆さんにたくさん力を貸していただき,無事乗り越えることができました.

コロナの影響でオンライン開催になってしまったのは残念でしたが,これからも日々精進し来年は現地で発表できることを願います!!

 - news, research , , , , , , , , ,