はじめに
こんにちは 中村研究室M1の野中滉介です.
段々と暖かくなり過ごしやすくなってきましたね.僕は花粉症で外に出たくないので狂ったようにスプラトゥーンをして過ごしています.
さて,3/16~3/17に開催された第59回EC研究会にて発表を行ないましたので,その報告をさせていただきます.
研究内容
皆さんは,好きな漫画,音楽,などはありますか?
現在ではオンラインのサービスで様々なコンテンツを楽しむことができますが,それら膨大なコンテンツの中にはまだ知名度は高くないものの,とても良い作品が埋もれてしまっていると考えられます.
これはそのコンテンツの作者にとっての問題でもありますが,ファンにとっても悲劇です(僕はインディーズバンドなどを聴き漁るのが好きなのですが,気付いたら解散していることなどがあり悲しい気持ちになります).ここで,口コミによってファンであるユーザ(僕)が友人などに「このバンド聴いて!!」と推薦をすることでファンを増やせる可能性がありますが,相手の好みを踏まえた上でうまく魅力を理解してもらうことは簡単ではありません.
そこで我々はこれまでの研究で,対話的なやりとりを模して分岐構造を持たせたプレイリストを作成することで,効果的に音楽推薦を行う手法を提案してきました
このように作成された分岐型プレイリストと,通常通り分岐構造を持たないプレイリストを聴取してもらう実験を実施した結果,分岐型プレイリストの方が推薦されたユーザの「満足度,興味度合い,馴染みやすいさ」が高く評価されるということが明らかになりました.
しかし,分岐型プレイリストを作成する方法が確立されておらず,推薦を行うユーザが分岐型プレイリストを作り慣れていなかったということもあり,実際の推薦行為としてはハードルが高いものとなってしまいました.
そこで,今回の研究では,提案手法をWebシステムとして実装し,実際に運用を行うことでより詳細な分析を実施しました.
我々が実装したシステムというのが,こちらの「reco.mu」というシステムです
reco.muでは分岐型プレイリストの作成・再生を行うことができ,自分が推薦したい音楽のプレイリストを作成し他者と共有することができます.具体的な利用方法についてはこちらをご参照ください.
こちらのシステムを2020年7月19日から運用し始め,今回は2021年の1月13日までのデータを対象に分析を行い,プレイリスト作成に関するアンケートを実施ました.
運用・分析結果
再生されたプレイリストについて,ユーザがプレイリストの何曲目まで再生を行なったかの割合を算出した結果,分岐構造のあるプレイリストの方が再生率が高くなるという結果が得られました.このことから,分岐構造のあるプレイリストの方が離脱してしまったユーザが少なく,再生時により興味を持てていると考えられます.
また,アンケートで収集した記述内容について,「推薦相手を考慮した記述があるか」「自分のこだわりを強調した記述があるか」に着目をして分析を行なった結果,分岐構造のあるプレイリストの方が推薦相手を考慮した記述が多く,そのように作成されたプレイリストの方が再生率が高いということが明らかになりました.一方で,分岐構造を持たないプレイリストでは自分のこだわりを強調した記述が多く,そのように作成されたプレイリストの方が再生率が高いという結果になりました.
これらのことから,他者への推薦を目的としてプレイリストの作成を行うのであれば,
分岐型プレイリストを利用することでより推薦相手を意識できるようになり,プレイリストを聞いたユーザにとっても興味を持ちやすい推薦が可能になるという可能性が示唆されました.
詳細については,論文やスライドをご参照ください.
スライド
論文情報
感想
今回の研究は,前回の発表で今後の展望として残してしまったものに取り組んだ研究だったため,システムの実装から運用実験までより具体的に取り組めたように感じました.
引き続き研究を進めていくとともに,残り1年の学生生活を楽しめる年にしていきたいなと思っております.
最後になりますが,お忙しい中論文のチェックやサポートをしてくださった中村先生や研究室のメンバーに感謝を申し上げます.ありがとうございました!
ピンバック: ICEC2021で「reco.mu: A Music Recommendation System Depending on Listener’s Preference by Creating a Branching Playlist」というタイトルで発表してきました(野中滉介) | 中村聡史研究室