第200回HCI研究会で「スマートフォンでのファンデーションの塗りムラ可視化システムの実現とその検証」というタイトルで発表してきました(梶田美帆)

投稿者: | 2022年12月8日

はじめに

こんにちは,中村研所属のM2梶田美帆です. 11/8,9に開催された第200回HCI研究研究会にて発表を行ないましたので,その報告をさせていただきます. 今回発表した内容は,一昨年の3月にDEIM2021で発表した研究内容,去年の11月にHCI196で発表した研究内容,今年のHCI200で発表した研究内容の続きとなります.よろしければ,そちらも併せてご覧ください.

 

研究概要

顔は年齢や性別,感情などの個人の印象が捉えやすいため,自他ともに注目しやすい部位です.そこで,化粧は自身の印象を理想に近づけるための手段のひとつとして様々な人に用いられてきました.

中でもベースメイク,特にファンデーションには,肌色補正効果,毛穴や色ムラなど肌の欠点を隠すカバー効果などがあり,肌を即時的に整え,理想の質感を演出できるため,非常に重要です.

しかしながら,ファンデーションのこういった機能を損ねかねない問題があります.

それが塗りムラです.

ファンデーションの色は自身の肌の色と近いものを選ぶことが推奨されています.そのため,塗れている箇所と塗れていない箇所がそれぞれどこなのかわかりにくくなっています.しかし,きちんと塗れているかどうか不安だからと言って,何度も塗り重ねてしまうと,「厚塗り」の状態になり,そこから化粧が崩れやすくなってしまうことも考えられます.

そこで我々は「ファンデーションを塗りムラなく自分でうまく塗れるようにしたい!」と考えました.

しかし,既存のファンデーション量の定量化・分布計測システム等は,光学フィルタやマイクロスコープなど特殊な機器が必須であり,一般のユーザが化粧中に簡単に利用できるものではありません.

そこで本研究では,一般のユーザが手鏡のようにスマートフォンなどのデバイスを利用して塗りムラをチェックできるシステムの実現を目指しています. 我々はこれまで,システム開発の前段階として,一般のカメラで撮影した肌画像についてファンデーションの塗布状態を判別することに成功しました.しかしこちらは顔全体からの塗りムラ検出は検討していておらず,また,自身のファンデーションによる実験も行っていませんでした.

また,システムではムラというネガティブな印象のものを自身の顔にたくさん表示させる必要があることを考慮し,塗りムラを模した円を重畳した顔写真について印象評価実験を行い,華やかな印象を受ける色でムラの位置が相対的にわかりやすいように塗れていない位置を大まかに示すことが好ましい可視化法と考えられることを明らかにしました.

さらに,実験協力者自身のファンデーションを塗布した顔写真から塗りムラを検出・可視化し有用性の評価を行ったところ,「ユーザは塗りムラ可視化システムでわかりやすさ・塗りムラの修正しやすさを重視していること」および「『ムラの位置を大まかに囲んで示す』方法がユーザが塗りムラを自身で解消するために最も役立つ」ことがわかりました.

そこで今回は,以上の結果を踏まえ,リアルタイムでファンデーションの塗りムラを指摘するシステムのプロトタイプシステムを作成し,その評価実験を行いました.

その結果,システムがほとんど不快感を感じさせずにわかりやすく塗りムラを提示されているとの評価を得ました.

また,「自分の顔に直接塗りムラを示されるためムラの位置を実感しやすかった.次回以降塗る時も提示された箇所を意識しようと思えた」などのフィードバックも得られたことから,システムにより自身のムラのできやすい位置を学習し,システムの非使用時にも塗りムラへの意識が高まり塗りムラの解消につながる可能性が示唆されました.

一方で精度や結果提示へのタイムラグに課題がありました.

今後は実用化に向けて,

  • 精度やタイムラグの改善を目的とし,クライアント上処理効率化および可視化アルゴリズムの再検討

  • 長期実験によるシステムの評価収集

などについて取り組んでいく予定です. 以下,文献情報と発表で使用したスライドになります.本研究の詳細はこれらをご参照いただければ幸いです.

文献情報

梶田 美帆, 中村 聡史, 伊藤 貴之. スマートフォンでのファンデーションの塗りムラ可視化システムの実現とその検証, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol.2022-HCI-200, No.38, pp.1-8, 2022.

スライド

感想

3年ぶりの淡路島でした.前回のHCI199とても4年生から続けてきた研究の集大成を無事に発表することができてよかったです.たくさんの方に質疑にも参加いただき,とても光栄でした.

あまり淡路島で観光はできなかったのですが,会場の屋上?から皆既月食を見ることができました.東京で見るよりもおそらくとてもきれいに見えて,学会に参加してよかったなあと改めて思いました.

画像は学会会場の淡路島に向かう途中に寄り道して食べたパフェです.美味しかったです.

 

最後になりますが,お忙しいところ様々な面でサポートしてくださった中村先生および研究室の皆さんに感謝いたします.ありがとうございました.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください