はじめに
クリスマスやお正月を感じる間もなく日々を生きていましたが、気がつけば1月もあと少しですね…。ほっと一息つきたい、中村研究室B4の古市冴佳です、こんにちは。
今回、2020年1月15~16日に沖縄県の石垣島で開催された第186回ヒューマンコンピュータインタラクション研究発表会にて、「待ち合わせ困難なユーザの支援に向けた人の探索時の視線分析」というタイトルで研究発表を行ったので、その報告をさせていただきます。
あらまし
スマートフォンの普及により、出先で手軽に連絡を取り合うことができるようになったことで、従来の待ち合わせ方法とは異なり「曖昧な待ち合わせ」を行う人が増えています。曖昧な待ち合わせとは、「新宿駅の東口で!」のようになんとなくの場所はわかるものの、その空間が示している範囲が広くどこにいるのかが明確ではない待ち合わせのことです。このような待ち合わせを当たり前のように行っている人も多いのではないでしょうか。
待ち合わせ場所として、アクセスの良い場所やランドマークのあるわかりやすい場所を選ぶことが多いですが、そういった場所は同じように待ち合わせをしている人で混雑していることが多いです。混雑した場所で待ち合わせ相手の探索を行うことに対して、苦手意識を持っている人への支援を行いたい、というものがこの研究の動機となっています。
研究内容
本研究では、待ち合わせ相手を探索する際の行動に着目をして、実際に混雑した場所で行う待ち合わせを想定した実験により探索行動の特性(視線の動きなど)を明らかにすることを目的とし、下記のように取り組みました。
- 待ち合わせに関するアンケート調査
- 待ち合わせに関する予備実験
- 本実験
アンケート調査では62名の学生に回答してもらい、混雑した場所で待ち合わせを行っている割合が高いことや、待ち合わせ相手が見つからずに困った経験があると回答した人が63%であることなどが明らかになりました。ここから得られた知見を元に、実際の待ち合わせを想定して人の探索を行う実験を実施しました。このとき、実験協力者には視線計測装置を装着してもらい、探索を行っている時の視界や視線の注視位置などを記録しています。
予備実験では、実験に適切な待ち合わせ場所や時間帯について、また、探索しているときに見られる傾向について調査を行いました。探索時の傾向として、人の探索が得意なグループでは誰を見ているのかがはっきりとわかることが多いこと、また、人の探索が得意ではないグループでは頭を左右に動かす(キョロキョロする)動作が何度も見られました。
本実験では、予備実験で見られた探索行動の傾向が人の特性としていえるのかを明らかにすることを目的として、複数日にわたって待ち合わせを想定した実験を行いました。その結果、人の探索が得意ではないグループは頭を左右に動かす振り返り行動が多いことや、人の顔をしっかりと見ていないことが明らかになりました。また、実際に人の探索が得意ではないグループに実験後に質問を行ったところ、「距離が近い人は目が合わないようにしている」や「シャイなので人に顔を見られないようにしている」という意見がありました。また、人の探索が得意なグループでも、いくつかの要因が探索が困難にさせている可能性が示唆されました。
今後は、より実際の待ち合わせに近い環境(新宿駅や渋谷駅など)で実験を行い、視線ログデータの収集と分析を引き続き行っていく予定です。また、苦手意識をもつ人への支援方法として、振り返り行動を行わないような探し方や、人の顔を見ることなく待ち合わせを行える仕組みの実現などを検討していく予定です。
発表スライド
発表で使用したスライドです。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。
論文情報
論文はこちらにありますのでご興味のある方はどうぞ。
感想
発表は4回目でそろそろ慣れてきたかなと思っていましたが、日本語の研究発表は久しぶりだったので相変わらずとても緊張してしました。質疑などでいただいた意見を、ぜひ今後の研究や発表に活かしていきたいと思います。
高校の修学旅行ぶりの沖縄でした。ごはんがどれも美味しくて楽しい旅になりました。画像は、カフェで食べたサンデーです。紅芋やちんすこうアイスなど沖縄の名物ばかりで美味しかったです。行く前は雨予報だったので少し肌寒いかもと心配しましたが、無事に晴れて1月を感じさせないとても過ごしやすい気候でした!海もすごくきれいで海水がひんやり気持ち良くて、気分は完全に夏。東京は雪が降るかもしれないというニュースを、別の世界の話のように思ったりもしました。
最後になりますが、お忙しい中、原稿チェックや発表練習に付き合っていただいた中村先生や先輩方に、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
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