第113回GN研究会で「待ち合わせの困難性を左右する場所の伝達と把握に関する調査」というタイトルで発表してきました(古市冴佳)

   

こんにちは!中村研究室M1の古市冴佳です。

先日大学に行ったらもう桜が咲き始めていました。また新学期の時期ですね。早いもので大学院生活も残り半分です。学生時代にやりたいことがまだまだ山積み、時間が足りない!

さて、2021年3月15~16日にオンラインで開催された113回グループウェアとネットワークサービス研究発表会にて、「待ち合わせの困難性を左右する場所の伝達と把握に関する調査」というタイトルで研究発表を行ったので、その報告をさせていただきます。

 

あらまし

待ち合わせ場所として、アクセスの良い場所やランドマークのあるわかりやすい場所が選ばれることが多いですが、そういった場所は同じように待ち合わせをしている人で混雑してしまうことがよくあります。「混雑した場所で待ち合わせ相手の探索を行うことに対して、苦手意識を持っている人への支援を行いたい」という思いから、2019年度からこの研究を続けています。

ここで、待ち合わせ相手の探索には次の2段階があると考えています。

  1. 空間の範囲を絞り込むための探索
  2. 待ち合わせ相手を特定するための探索

2つ目の探索は、待ち合わせ相手の特徴(顔や体格、服装など)をもとに、待ち合わせ場所にいる人の中から待ち合わせ相手を見つけることを指しています。これまでの研究ではこの2つ目の探索に着目し、人を探索している際の視線ログデータを収集・分析を行いました。詳細は、186回HCI研究会での発表記事をご覧ください。

 

今回の研究では、1つ目の探索に着目をしています。これは、待ち合わせ場所として「〇〇駅」と伝えられていた場合に、改札の外なのか中なのか・何口側にいるのか・何の近くにいるのかなどのやりとりを行ったり、バスを間違って降りてしまった人と落ち合うために色々と周りに見えるものを指示するうように、待ち合わせ場所の具体的な位置について、待ち合わせ相手とやりとりをすることで待ち合わせ空間の範囲を絞り込むことを指します。

実際にこの探索でどう困るのかについて、具体的な例を簡単に用意してみました。下の画像では、先に着いている右側の人が具体的な場所を示しているつもりなのに対し、後から着いた左側の人にはその場所がどこなのか分からない、という状況を表しています。このようなやりとりを経験したことはありませんか?

このように現地で行う待ち合わせ場所のやりとりに着目し、伝わりやすい説明と伝わりにくい説明について明らかにしようとしています。

 

研究内容

本研究では人による場所のやりとりの伝達内容の違いについて明らかにすることを目的とし、下記のように取り組みました。

1.  待ち合わせに関する大規模アンケート調査
2.  現地で待ち合わせ相手と場所のやりとりを行うことを想定した実験
   ・ オンラインでの待ち合わせ予備実験
   ・ 本実験
3.  分析

 

アンケート調査は、現在の待ち合わせにおける実際の行動や課題を把握することを目的として2000名を対象に行いました。アンケート調査の結果を簡潔にまとめると以下のようになります。詳細については論文をご参照ください。

  1. 待ち合わせで困った経験がある人の半数近くが、1つ目の探索「空間の範囲を絞り込むための探索」における場所の伝達が難しいことを原因としてあげていた
  2. 半数以上の人が、実際に場所のやりとりを行いながら待ち合わせ相手を探している

このことから、人による場所のやりとりの伝達内容の違いについて明らかにすることで、待ち合わせ支援を行っていくことが重要であると考えています。

 

実験は、本当は対面で実施したかったのですが、新型コロナウィルスの影響でそうもいきませんので、AppleのLook Around機能を使用し待ち合わせ場所の探索を行ってもらい、待ち合わせ相手がいると思われる位置まで移動するというタスクを設計しました。場所のやりとりを行う方法は通話とし、実験協力者はペアを組んで行いました。この時、実験協力者を次の2つの役割に分けています。

  • 探索者:相手の説明を聞きながら相手がいる位置をLook Around上で探索する
  • 待機者:自分自身はその場に留まり、相手に自分のいる場所について説明する

実際の実験の様子をこちらに示します。本実験では、1つの場所について実験協力者を変え2回ずつ、計40回(20箇所)の実験を行いました。

 

実験データは、まず探索者と発話者の発話をアイディアユニットに分割し、発話内容を発話プロトコルに分類しました。ここで、トラブルのあった1回の実験データを除き、39回分の実験データを用いています。発話内容については、下記のように探索者を9カテゴリ、待機者を10カテゴリに分けています。

探索者:説明、報告、確認、質問、要求、応答、相槌、不完全、その他
待機者:説明、確認、質問、要求、応答、視点指示、行動指示、相槌、不完全、その他

また、39回分の実験について評価を行い、円滑なやりとり13回分と難航したやりとり13回分の実験データをもとに分析を行いました。その結果、「説明」「確認」という2つのカテゴリについて、円滑なやりとりの方が探索者は少なく、反対に待機者は多いことが明らかになりました。

円滑なやりとりと難航したやりとりにおける発話内容の違い(3分間あたりの平均アイディアユニット数)

 

さらに、具体的な発言内容について、待機者の最初のやりとりに含まれるキーワードの種類や数について求めた結果、円滑なやりとりはキーワードの内容が豊富であり、待機者の説明を中心にやりとりが進む傾向が見られました。一方で、難航したやりとりでは、同じものについて繰り返し説明を行う発話が目立ちました。このことから、実際のやりとりでも周囲を見渡しながら説明を行っているかどうかに、伝わりやすさの違いが見られることが示唆されます。

今後は以下のことを行っていく予定です。

  • 引き続きLook Aroundを用いた場所のやりとりを想定した実験を行い、円滑なやりとりと難航したやりとりの特徴を明らかにする
  • 本実験から得られた傾向が、現地での待ち合わせ場所のやりとりでも見られるかについて、実際の待ち合わせスポットなどを利用して待ち合わせ場所のやりとりを想定した実験を行う
  • 待ち合わせの支援手法について検討を行う

 

発表スライド

発表で使用したスライドです。詳しい研究内容はこちらをご覧ください。

 

論文情報

論文はこちらにありますのでご興味のある方はどうぞ。

古市 冴佳, 中村 聡史. 待ち合わせの困難性を左右する場所の伝達と把握に関する調査, 情報処理学会 研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN), Vol.2021-GN-113, No.6, pp.1-8, 2021.

感想

今回、私は初めてオンラインで開催される研究会で発表してきました。今までの発表と違い、発表中に周りの反応を確認することができないことで、発表時間の20分間が本当に長く感じました。また、久しぶりの発表だったこともあり、しっかりと説明できるか不安な気持ちで相変わらず緊張してしまいました。緊張してしまうと説明中によく噛んでしまうので、次こそはもっと練習通りの発表ができるように頑張りたいです。

この1年間は、外出自粛やオンライン授業が続き、今までの生活が本当に大きく変化してしまったなと改めて感じます。私自身、本来実施するつもりでいた実験が行えなくなってしまい、何について研究するか1から考え直したり、目まぐるしく変化した日常生活を送る中で、そもそも待ち合わせしなくなってしまうのだろうか、この研究の需要なくなるのではないか、など不安になったり、色々悩みながら過ごしました。1年間何とかやってこれたのは、色々な相談に乗ってくれた先輩方や、実験後に私の無駄話に付き合ってくれた後輩、そして一緒に頑張ってきた同期の存在があったからです。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

話が変わりますが、画像は研究会の日に家に帰って食べたイチゴです。お花付いてた!ってだけ。オンラインだと載せられる画像がないので寂しいですね。

最後になりますが、お忙しい中、原稿チェックや発表練習に付き合っていただいた中村先生、先輩にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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