中村研究室M2の徳久弘樹です。虫の音が心地よく、ついつい夜長を楽しんでしまいがちな季節ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。自分は時差ボケで夜長を楽しまざるを得ない状況になっております。
さて今回は、2019年11月11日~11月14日にペルーのアレキパで行われたifipの国際会議International Conference on Entertainment Computing 2019(ICEC-JCSG 2019)に参加し登壇発表を行ってきましたのでその報告記事となります。今回の発表は昨年に東京で行われた第178回HCI研究会で自分が発表した内容を英語化したものになります。1年半越しに無事国際デビューを果たすことができて嬉しく思います。
ちなみに会場となったアレキパのカトリカ・サン・パブロ大学の場所は以下の場所にあります。日本との時差は14時間、片道31時間の今まで経験したことの無い壮絶な遠征でした。詳しくは下の感想で述べています。
発表内容
エアコンの室外機、車の走行音、子供のはしゃぎ声など、我々は様々な騒音に囲まれながら日常生活を送っています。しかし、近年は子供の声に対する苦情により保育園の開園が延期になるなど、騒音は社会問題にまで発展しつつあります。
こうした騒音への対策として、耳栓をしたりヘッドフォンで音楽を聴いたりと周囲の音を完全に遮断するといった手も考えられますが、呼びかけや電車のアナウンスに気づかないなど重要な情報までも遮断してしまうことが考えられます。
そこで我々は、ネガティブな印象を覚えやすい騒音に対して、適切な音楽を混ぜて流すことにより騒音の印象をポジティブなものに変化させ目立たなくさせるNoise Canceling Musicという手法を提案しました。
例としては、エアコンの空調機の音のような単調な機械音(ネガティブな印象)に、ロボットアニメのワンシーンで使われるようなBGMを同時に流すことで、その機械音をロボットの駆動音のようなワクワクするような印象(ポジティブな印象)に変えることで、騒音としての不快度を低減させることを狙った手法です。
このように騒音の印象をネガティブからポジティブに変化させることで、騒音をただ除去するだけでなく騒音を楽しめるようなものにすることも目的としています。
本研究ではこのエアコンの室外機も含む9種類の日常的な騒音に対して、本手法の有効性を確かめる実験を行いました。その結果、蝉の鳴き声、子供のはしゃぎ声、強風、エアコンの室外機、工事の削岩機の音などに効果的であることがわかりました。一方で、子供のはしゃぎ声に対してパイレーツ・オブ・カリビアンなどの勇壮な音楽を流すと、子供のはしゃぎ声が強調されて悪印象となる(つまりより騒音が大きく感じる)といったこともわかりました。
今後は会場でもご指摘いただいた同時に複数の騒音が聞こえたときの対応の検討や、騒音に対して音楽を自動再生するアプリの実装などにも取り組んで行く予定です。
発表スライドおよび原稿は以下にまとめてありますのでご参照ください。
感想
会場となったペルーのアレキパまでは成田空港からニューヨークまで13時間、そこからリマまで8時間、最後に国内線に乗ってようやく辿り着き、トランジットを含めると片道31時間のなかなか過酷な旅路でした。着いた頃には時差ぼけどころの騒ぎではなかったです。ホテルがめちゃくちゃ快適だったのが救いでした。
アレキパは人口も多くペルーでは首都のリマに次ぐ第2の都市と言われており、街全体が世界遺産にも登録されています。南米のステレオタイプにありがちな治安の悪い感じはあまりなく(運転の荒い車は多いが)、夜でも比較的安全に出歩くことができました。さすが世界遺産だけあって昼も夜も写真の撮り応えは抜群です。
アレキパのメイン観光地のアルマス広場
街全体の標高が2300mと富士山で言うと5,6合目付近に付近に位置するので人によっては少し息苦しさを感じるかもしれないです。そんな場所からもさらに高くそびえ立つミスティ山は標高6000mで、アレキパの街からは基本どこからでも望むことができます。
また、現地の人も非常にフレンドリーな人が多く、会議にはカトリカ・サン・パブロ大学の学生も多く聴講しに来ていたのですが、自分たちの発表の後には気さくに話しかけてきてくれてくれました。ペルーというとどうしてもマチュピチュやナスカの地上絵などが有名で、アレキパにはあまり日本人観光客来ないらしく、日本のアニメやカルチャーが好きな彼らはもっと日本人に来てほしいと言っていました。ペルーに旅行行かれる方はぜひ候補として検討してみてください。
自分は今年の8月に友人と行ったマドリード旅行が人生初の海外だったのですが、まさかその3か月後に地球の裏側まで行くことになるとは思ってもいませんでした。人生何が起こるかわかりません。
とは言いつつも、国際会議での登壇発表は自分が院生のうちに成し遂げたかった目標の1つであり、査読結果が帰ってきたときは本当に嬉しかったです。またそれをなかなか行くことのできない南米の地で発表できるというのも大きな喜びでした。多くのサポートをしてくれた先生はじめ周囲の人には大変感謝しております。
長々と書いてしまいましたが、自分は在学中にもう1件国内で発表する予定でいます。引き続きご興味頂けますと幸いです。それではまた。