桃の節句も過ぎ桜の季節が近づいてきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。中村研究室B4の佐藤剣太です。
3月10日、11日にかけて東京都町田市の玉川学園にて行われた第101回グループウェアとネットワークサービス研究発表会にて口頭発表を行ってまいりましたので、その報告をさせていただきます。
皆さんの通学時間はどのくらいですか
今回発表した研究の内容は、電車で長距離の通勤・通学をしている人の暗記学習を支援することを目的としたものです。
皆さんは普段、通学にどのくらいの時間をかけていますか?また、そうした時間はどのようにして過ごしていますか? 自分の場合、隣県から片道2時間近く電車に揺られながら通学をしているため、往復で1日のおよそ1/6を通学やその準備に割いています(下図)。
また、この時間は、例えばスマートフォンなどを用いて学習を行う時間として使うことが可能ではありますが、電車が混雑をしていると手で端末を操作することが難しくなり、何も作業が進まないという問題があります。そのため、スマートフォンを操作せず、ただ音声提示をすることによって、学習可能な仕組みが欲しいと考えています。
場所に応じて異なる暗記項目を学習
これまでに提案されてきた効率的な記憶術の一つに、空間内のどこかの箇所と情報を結びつけて覚える場所法という方法が存在します。しかし、膨大な学習内容を記憶する場合、それを1つずつ自分のイメージで配置するスキルが必要とされ、その習得には膨大な時間を要することになります。
また、ただ音声を垂れ流しにするよりも、暗記項目と通学区間内の場所を何かしらの意味に基づいて自動的に対応づけ、現在地に基づいた項目を音声提示することにより効率的な暗記が可能になるのではと考えました。
具体的な流れとしては、駅の周辺にある施設に関連する言葉と、対象となる英単語に関連する言葉を複数収集し、それらの中に共通する言葉がある場合は関連性があるとみなし、対応づけていくというものです。
精度評価では、ユーザの理想的だと思う対応づけを提案手法で再現可能かどうか検証しました。結果としては、従来の手法よりも提案手法が優っているユーザとそうでないユーザがおり、有意な差は見られませんでした。
また、暗記学習実験では、場所に応じた項目提示で学習した被験者グループは、ランダムな項目提示によって学習した被験者グループよりスコアの伸び方に大きく差が出ると言う結果が得られました。ここで用いたデータは著者の主観によって対応づけられたデータのため、著者と被験者の通学路に対する認識の差が影響しているのだと考察しています。
学習前後でスコアが何倍に伸びたか?
詳しい内容につきましては発表原稿に書かれておりますので、以下のものをご覧いただくか、ev30599@meiji.ac.jpまでメールを送っていただければお渡しいたします。また,発表に使用したスライドは以下のものとなります。
佐藤剣太,中村聡史:長距離通勤・通学者向けの場所に応じた暗記項目提示による学習支援手法の提案とその検証,研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN),2017.
いただいた質問
Q. 食材や動物の種類を網羅的に覚えたい場合はどうするのか?
A. 応用例で紹介した、Twitterからの文章を参照するという方法を用いることによってジャンルごとの割り当てが可能になると期待しています。
Q. 学習実験における、著者の主観によるデータの割り当てというのは具体的にどのような基準で行ったのか?
A. 地図やWeb検索などを用いて割り当てています。
Q. 通学中の学習の際に、アプリを見ることに夢中になってしまって場所を意識できないのでは?
A. 本システムでは画面提示を行わず、音声提示のみを行っています。今後の課題の一つとして、暗記項目と駅が対応づけられている理由をあらかじめアナウンスする機能の追加を検討しております。
3つ目の質問については、「音声提示のみによって学習を行う」という点がいまいち伝わりきっていなかったため、研究の背景をもう少し整理して説明する必要があるなと思いました。
感想
今回は初めての都内での発表となりましたが、会場となった玉川学園の敷地は非常に広く、木々も多いキャンパスでのどかな雰囲気でした。
発表の様子
また、日々の発表練習のモチベーションを保つのがなかなか大変でしたが、同じ会場で発表する仲間、そして先生との練習の積み重ねにより、今回も落ち着いた発表を心がけることができたかと思います。皆様、本当にありがとうございました。